頭のいい人ほど、無邪気だ
ノックの音が聞こえ、先輩が扉を開けると、向かいの研究室の先輩が顔をのぞかせた。またきっと、そろってタバコを吸いにいくのだろう。
この先輩がやってくると、いつも二言三言、たわいもないおしゃべりをする。が、今日の先輩はひと味、違っていた。
「あの、質問があるんですけど」
真面目な顔で問うてくる。
「かむかむレモンとポムポムプリンってどう違うんですか?」
研究室内にいた全員が、吹き出す。「とうとうあさぎさんにまでボケるようになってしまったのか」などと、他の先輩が笑っている。私は「風邪気味なのにやめてくださいよ〜」と、上手い返しもできずに、ただ笑っていた。
当の先輩は、「いやいやどうもすんません」と頭をかいてにやにやと笑っている。
このK大卒め。噂に変人奇人揃いだと聞いていたけれど、あながち間違いじゃないんだろうな、などと、偏見じみた感想を抱く。
「くそう、やられた〜〜」などと言って私は作業に戻り、先輩たちは案の定、タバコをふかしにいった。
静けさを取り戻した研究室。
真面目な顔でパソコンに向き合っているはずなのに、見事にツボってしまったようだ。なんだか悔しいけれど、思い出すたび、じわじわ笑えてくる。あんなにしょうもないネタなのに、笑いをこらえるのが大変で、にやにやしてしまう。
この研究科の博士課程生の中で、(たぶん)紅一点の私。
「男ばっかりで大変じゃない?」と言われることも多いけれど、そんなことはなく(大変なのはそこじゃなく自分の研究の方だ)。
愉快で優しい仲間たちと、わいわいがやがや、楽しく過ごさせてもらっている。
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