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モラトリアムの蜘蛛8️⃣

幕間 美しい島

遠くに稲光が見えた。嵐はまだ収まらない。

蜘蛛は必死に身体を運んだが、ついに体力が尽きて橋の中腹でうずくまってしまった。
欄干に身体を固定しようにも、この嵐では糸も吐けない。
風が蜘蛛を宙高く持ち上げ、とたんに地面に打ち付ける。
海が、蜘蛛を嘲笑うように轟々とうねりをあげた。

痛みで意識が遠のいた時、地獄に垂らされた糸のように細くきらめく、頼りない光が、灰色の空に瞬いた。

灯台だ。あの光を目指そう。
蜘蛛はもう一度体勢を立て直し、魂を先に身体を動かす。
気がつくと蜘蛛は橋を渡り切り、目の前には明るい大地が漫然と広がっていた。

嵐も海も、過去として蜘蛛のすぐ後ろに存在し続けた。
蜘蛛の8つの瞳が、美しい新天地をしっかりととらえた。


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