モラトリアムの蜘蛛⑩
たしかに、ぼくの足跡はふらふらと頼りなく、ぼやけている。
できるだけしっかりとした足取りで、腹に力を入れて、太陽に向けて背筋を伸ばす。
水神のお告げを受けて、ぼくはふたたび歩き出すことに決めた。
大地にパワーをもらい、次の1歩を踏み出す。
足から尻、背中、頭。
1000年生きる巨木になった気分で、全身に気を張る。
新鮮な感性が、ぼくの心を満たす。空気が美味しく感じた。
古から続く街道は、武士や禅僧のものではない。歴史には残っていない、生活を営むすべての人々が築いた、おでんの