キーワード1:自己肯定感

先日、私が『すろーかる』の編集長をやっていく上でのキーワードを2つ挙げました。

そのうちの1つ、「自己肯定感」について書きたいと思います。

そのためにはまず、私の記憶をたどるところからお付き合いください。

私は、中学生~高校生の頃、自分が住む静岡県があまり好きではありませんでした。
〝つまらないところ〟だと感じていて、〝こんなところでのんべんだらりと一生を終えるのは嫌だ〟と思っていました。そして、大学は絶対東京に行ってやる!と思い、幸いにもそれは実現しました。

なのに現在、再び静岡の地に戻り、地元の情報を発信するという根を下ろしまくっていると言って過言ではない仕事をしているのはなぜか。
そのきっかけは、まさに『すろーかる』(当時は『すろーらいふ』)というフリーマガジンとの出会いでした。都合よすぎと思われるかもしれませんが、嘘偽りも、盛ってもいない事実です。

紆余曲折あり、新卒で入った会社を退職し、勤務地だった広島を離れ、約8年ぶりに静岡に帰ってきた私。転職活動を始めた当初は、静岡に居つくつもりはあまりなく、また東京へ行って働こうかと考えていました。
そんな中、両親と共に訪れた県立美術館にその出逢いはありました。展覧会を見終えた後、ほかの様々な印刷・販促物の中に見つけたのが『すろーかる』だったんです。
とても目を惹き、手に取って中を見てみてもオシャレだし、面白かった(現在の立場で言うと手前みそになってしまうのはご容赦ください)。

何より衝撃だったのは、そこで紹介されているのが、私があれほどつまらないと感じていた静岡のお店や情報だったこと。
「え、静岡にこんなおもしろい/素敵な/カッコいい場所があるの?」「あれ、静岡にもちゃんと魅力があるんじゃないの・・・?」と、これまで(勝手に)抱いていた価値観を覆されました。

そしたらタイミング良くスタッフを募集しており、勢いで応募し、今に至ります(笑)

ちょっと思い出話が長くなってしまいましたが、
自分が編集長をやると大方決まった時、人からのアドバイスもあり、この雑誌(ひいては職場や社員の在り方)をどんなものにしていきたいのか考えていて『すろーかる』に入ったきっかけを思い返してふと浮かんだのが、「自己肯定感」だったんです。

かつての私には、静岡を肯定する気持ちがなかったのだと思います。それゆえに、そこにいる自分さえも肯定できなかった。
そしてそれは、ほかの県、特に東京と〝比較〟したうえでのジャッジだった気がします。
きちんと静岡のことを見つめ、理解していない、しようとすらしていないのに、ただただ東京に比べて、劣っているとか遅れてるとかダサいとか面白みがない・・・という否定、ダメ出しをしてしまっていました。
だからこそ、『すろーかる』が、静岡の中で純粋に静岡の魅力を発信していたことに驚いたし、今思えば嬉しかったんだと思います。
自分の故郷である静岡が良い場所なんだと感じられた、肯定できたから。

少し前にインタビューのお仕事で、静岡出身の東京在住あるいは東京や海外で仕事をしていた経験をお持ちの方に話を聞く機会がありました。
現在はすごく静岡のことが大好きだったり、静岡にUターンしていたりする方々でしたが、若い頃は、やはり私と同じように東京に憧れていたと言っていました。
似たような感覚の人ってけっこういるんじゃないかなという気がします。
もちろん県外へ出ることは悪いことではなく、むしろ異なる環境を経験できるので一度は出た方が良いとさえ、私は思います。

ただ、静岡の魅力を知らないままはもったいないし、様々なことを経験したうえで戻ってきたいと思ってもらえるといいなと思います。
そしてもしかしたら、今現在、静岡に住んでいるにも関わらずあまり静岡が好きでないとか、楽しさを感じられない、静岡なんてダメだと思っている人がいたら、それはすごく悲しく残念です。

そういう状況を打開することが、まさに『すろーかる』がこれからもやっていくべきことなのだと思います。
私がそうであったように、『すろーかる』で静岡の見方が変わって、静岡での過ごし方が楽しくなって、静岡っていいなって思える。静岡にいてよかったと思える。
そういう静岡に対する肯定感が上がってほしいなと思います。
そしてそれは突き詰めると、〝ここにいる自分〟に対する肯定感にもなると考えます。
自己肯定感が上がると喜びや幸福感も増して、そういう人が住む県はますます良い雰囲気、魅力的になっていくでしょう。
東京には劣るけど、大阪ほど面白くはないけれど、京都よりオシャレじゃないけれど・・・。
そんな前置きはせず、シンプルに「静岡っていいね」と、魅力はすでに十分にあるから、肯定するだけ、そんなふうに思います。

そのためには静岡の魅力に気づくことが必須。
それを見つけ、いいなと思えるように伝えることこそ、私たちの役割です。
編集という手法でそれを成していきたい。
「編集の力で、静岡の自己肯定感を上げる」
やるべきはつまり、そういうことなんじゃないかなと思っているのです。



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