デルレイ

誰かに何かをプレゼントする際は
相手に喜んで欲しいのはもちろん、
自分が自信を持って「これは良い物だ!」と思える物を渡したい。

ここ何年か誕生日プレゼントを渡し合っている友人(女性)がいる。
何を渡したら喜んでくれるか分かんねえや、なんて話を別の友人にしたら
「女の子はこんな化粧品はもらったらすごく嬉しい!」と色んな化粧品を勧めてアドバイスしてくれた。

でも俺はその化粧品達に対して1ミリも「コレをあげたい!」とは思えなかった。
当然のように化粧品なんて使った事ないから良し悪しも分からない、
故に自信を持って「これ!」とは思えなかったからだ。

ちなみに結局誕生日プレゼントは
おでこ取れちゃった君のトートバッグと二択で悩んだ結果
カネコアヤノの飴ちゃんをあげた。
アメ入れるポーチが可愛かったから。







ありがたいことにバレンタインの日
Cちゃんからチョコレートをもらった。
見た事もない、いかにも「高級です!」って感じの箱に入った
いかにも「高級です!」って感じの美味しいヤツ。

俺もお返しにチョコレートとかを渡そうと思っていた。
ただ残念なことに、俺は高級なお菓子なんてあんまり食べた事がない。

俺が美味しい!好き!ってなってるチョコレートは
ブラックサンダーとか、アルフォートの水色のヤツとかだ。
本当に美味しいし大好きだし、Cちゃんと遊ぶ時一緒に食べる為に持っていったら
絶対に喜んでくれるとは思う。
だけどホワイトデーのお返しであげるには、俺の好きなチョコレートは
(良い表現ではないけど)あまりにもチンケだ。


(関係性が分かった方が共感してもらいやすくなると思うから今更言うけど
Cちゃんってのは「よく遊んでくれる女の子」ってだけじゃなくて
彼女だ。)


27にもなってホワイトデーのお返しを
ソレが好きだからと言って
ブラックサンダーやらアルフォートにするのはヤバいんだろうなって
馬鹿な俺でも流石に分かる。

渡したら微妙なリアクションをされて、
「ただのアルフォートじゃなくてリッチミルク味だよ!」とか必死に弁解してる
ダサい自分の映像が脳内に浮かぶ。
これだけはなんとか避けたい。


どうやってその最悪の未来を回避するか悩んだ結果、
下北とかでカップケーキとかそういうスイーツを買うのが良いと思った。
なんとなくこだわりとかセンスとかありそうな気がするから。


それ故にこの日の午後、
友人と下北でホワイトデーのお返しを探す予定になっていた。



しかし神社を出て駅に向かう途中で
Cちゃんが昔「高級なチョコレートを食べてみたい」みたいな話をしていた事を思い出した。

誤解がないように言うが、
Cちゃんがその発言をしたのはバレンタインとかよりもずっと前の話ね。


奇しくも今自分は虎ノ門とか言う
恐らく何を買っても「高!!」ってリアクションをしそうな街にいる。

良い機会だし、お返しは高級なチョコレートにしようと思った。

高級なチョコレートを全く知らないので
とりあえずGoogleで調べてみた。


チョコレートにあまり関心がある訳ではないので、ネットで色んなオススメを見ても
どれが良いのか全く分からなかった。

わずかながらに「ベルギーが本場」って知識だけあったので
「本場ベルギーの〜」みたいな売り文句のヤツを中心に調べてみると、
デルレイというお店を見つけた。
高いだけじゃなくてちゃんと美味しそうだし、ちょうど駅も虎ノ門から少し行っただけの銀座駅にお店があるようだったので
そこのお店でチョコレートを買う事にした。



お店はめちゃくちゃ綺麗だった。
1粒600円とかする色んな種類のチョコレートがガラスケースに入っている。

1粒600円のチョコレートの意味が分からない。

先週知り合いの勧めで買ったキヨスクのチョコレート。
中にゼリーみたいなのが入っててめちゃくちゃ美味しかった。
それが300円くらいしたのに、入ってる量が少なくて
「確かにめっちゃ美味しいけど、300円もしたのにこんなに少ないの!?」と驚いた。

そんな金銭感覚の人間なので
1粒600円のチョコレートは、驚くとかじゃなくて
ハイパーインフレとかが起こっていない限り全く理解ができない。

この一粒に払う600円はどこに行くのだろうか。
小売業はしんどいって話を聞くけど
今俺に接客してくれてるお姉さん達は
この価格のチョコレートを販売する事に見合った給料をちゃんと貰えてるのだろうか。

カカオを作ってる発展途上国の子供達はチョコレートを買う金も無いって話を昔聞いたけど
ちゃんとカカオを作ってる子供達にも沢山お金は回っているのだろうか。

多分こんな銀座のいい場所にお店を出しているんだから
場所代とかもかかるんだろうし
そう思うとフェアトレードとかでは無いんだろうな。

もし、このチョコレート会社の偉い人達が私服を肥やすだけだったら納得がいかない。


最近俺自身も仕事で中々しんどい事をやらされてるのに
手取りで17万も行かない事がかなり頭に引っかかっている。
きっとうちの会社の偉い人達が美味い汁を吸う為に俺らが犠牲になってるんだろうなという意識がすごく付き纏っている。
だからこんな600円のチョコレートを見るとそんな事をぐるぐると考えてしまった。

例えば転職したって一緒なんだろうな。
どこに行っても、こういう理不尽は付き纏ってくるし
なんならアフリカとかの子供達と比べたら
まだ全然マシで、こんな事で嘆いてるのなんて贅沢なんだろう。
世界のどこにも逃げ場は無いな。


せっかくCちゃんにチョコレートを買うんだから
そんな気持ちになりたくなかった。少し反省。俺のバカ。

でも色んな種類のチョコレートがあり、
どれを買えば良いか悩んでいるうちに
そんなモヤモヤの事を上手に忘れられた。

本当に色んな種類のチョコレートがあった。
定番(らしい)ダイアモンド型のチョコレートだけでも甘いヤツ、ビターなヤツ、ホワイトチョコとか色んな種類がある。

それだけじゃなくて、名前も覚えてないけど
なんかトリュフ?っぽいヤツとか、
「これの安いver.みたいなヤツも食べた事ねえよ」みたいなチョコレートが沢山。

しかもマロングラッセ等チョコレート以外の物まで売っていた。

Cちゃんは栗が大好きだからマロングラッセの方が喜んでくれるかな?
とか悩んだ。

しかし結局可愛らしいハート型の箱に入った8個入りのチョコレートを購入した。

やっぱり有名なチョコレート屋さんなんだから、チョコレートを買うべきだもんね多分。

箱のチョコレートにした決め手は
箱のヤツはバレンタインやホワイトデー限定だという事だ。
もしチョコレートが気に入ってくれたらまた買えば良いけど
この可愛い箱のやつはもう買えないなら
今回はタイミング的にもこれにしよう、と。

あと、箱自体も可愛いのも決めての一つだった。
箱自体も毎年デザインが違うらしいので
Cちゃんが箱を保存してくれたら、
来年の箱、再来年の箱…って
毎年別のデザインの可愛い箱が増えていくの楽しそうだなって。


Cちゃんは本当にめちゃくちゃに可愛い。
俺なんかじゃ本来到底釣り合わないし
未だにこんなに可愛い女の子と付き合えてるってのが信じられない。

信じられないくせに、
来年以降もホワイトデーにチョコを渡せる事をぼんやりと思い浮かべてるなんて
俺は最近凄く浮かれてるな、とお店を出てから思った。















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