【この本を読んで考えた】とんこつQ&A
4編からなる短編集。
『とんこつQ&A』
「大将」と呼ばれている店主と大将の息子が切り盛りしている中華料理店で働き出した主人公の「わたし」
言えなかった「いらっしゃいませ」が言えるようになり仕事にも慣れてきた頃、新たに女性が雇われる。
不器用で直球に次ぐ直球。目的に向かって努力する健気な姿勢の今村夏子ワールドにあって、今回はどう収まるか。
予測して答え合わせする読み方も面白いかも。
『嘘の道』
姉の同級生にはみんなから「嘘つき」と言われる男の子がおり、それは主人公「僕」の家の中でも度々話題に上がるほどである。
『良夫婦』
「ねえ、おいも好き?」
いつもの通り、友加里はタムの返事を待たずに、背負っているリュックサックのチャックを開けて、中から甘いものを取り出した。
『冷たい大根の煮物』
勤務開始から二ヵ月目に、おばさんから話しかけられた。
「おいしそうなの食べてるね」
これが主人公「わたし」とおばさんの出会いだった。
『嘘の道』『良夫婦』『冷たい大根の煮物』の主人公は、これまでの今村夏子氏の作品に出てくる前しか見えていない人達に比べると、自分が踏み出した道に対しての自覚もあり、それでも引き返せないところに葛藤もある。
今までの作品はあくまでも他人事として、画面の中を覗いている感じで読んでいたけれど、これらは目線が近いだけにいつ画面の向こうに引き摺り込まれることになるかわからないような恐ろしさがある。
今後の今村夏子氏の作品がどんな感じになるのかますます楽しみだ、
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