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澤西祐典『雨とカラス』を読む

先日toi  booksさんのトークイベントで購入した『雨とカラス』を読み終わりました。1冊の中に4篇の作品が収められていて、中でも表題作の「雨とカラス」と「氷の像」はど迫力があります。

「雨とカラス」は、無人島だと思われていたメラネシアの小島で、1人の男が救出されたところから始まります。その男の祖父は、旧日本軍の残兵、祖母は従軍看護婦。その男が発見されたニュースは、またたく間に世界中に広がって…。そこから話は男の幼少期に戻ります。

澤西さんが二十歳の時に初めて書かれた小説だそうですが、すごい描写力で、主人公の感情も手に取るように伝わってくるし、メラネシアの大自然も目の前にイメージが広がるような凄みのある筆致です。兄弟の確執が「こういう気持ちになることあるよなぁ。」と少しわかる感じがしました。ラストは、「え!」と思いました。

「氷の像」は、パラカイ族の人々が毎年冬に行う氷の祭典で、氷の彫刻を作るお話です。主人公のシャウルルルーの孤独と、身を削るような創作の光景、村人たちの様子が、とても美しく力強い日本語で書かれていて、こんなに美しい日本語を読んだことがあっただろうか?と思いました。10代の子に読んでほしいです。

この作品のプロットのコピーを、トークイベントでいただいたのですが、あのプロットからこの緻密な描写がどうやって生まれるのか、そのことをお聞きしたかった、と思いました。

残りの2篇は、短いお話ですが、変わっています。いろいろなタイプの作品が読めて、楽しかったです。

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