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弁理士登録後の会費問題

おはようございます。匿名という設定のMoccoです。
私は、特許事務所(途中で弁理士登録)→企業勤務→事務所という放浪をしている中、弁理士登録を抹消した期間があり「弁理士登録を続けることの意味」やメリット・デメリットについて、よくよく考えたときがあります。
そういった経緯から、弁理士試験合格後に、弁理士登録するかどうか迷う皆様に向けた記事を書いてみたいと思います。

ここで、知財以外の方に補足ご説明を。弁理士試験に合格したという時点では「私は弁理士です。」と名乗ることができません。日本であれば、日本弁理士会の会員として登録をして、月々の会費を納入して登録を維持して初めて「私は弁理士です。」と言えます。この月々の会費が1.5万円です。(その他に最初の登録までに必要となる研修や登録費用もあります。)
特に企業に勤務する弁理士は、支払いが組織負担か個人負担かといった論点により、弁理士でありつづけるかどうかの選択が生じます。

(注意)私が弁理士登録を抹消した理由は、超個人的な事情によるものであり、当時の所属組織の意向ではなく、事前に許可を得て抹消しました。

弁理士登録の意義を確認しよう

当たり前のようだけれど、弁理士登録するか否かを検討するに際して、「弁理士登録をしなければできないこと」、つまり何のために弁理士登録するかの根幹は必ず押さえておく必要があります。

弁理士は、産業財産権に関わるすべての手続を代理することができる国家資格保有者です。

↑ 日本弁理士会ホームページ(弁理士とは→弁理士法で定められた弁理士の業務について より)

特にポイントになるは「代理することができる」の部分です。特許庁等に対する手続きの代理人として各種出願手続きや権利化のための手続き等を行ったり、そのために必要な相談や鑑定といった業務(弁理士以外の者は業として行ってはいけない)を行える人になる、というイメージです。

特許事務所の場合、普段行う仕事自体が代理業なので、弁理士登録する意義は大きいです。一方、企業等勤務の場合、代理業務自体は外部に依頼することが多いので、じゃあ代理業以外の何をして弁理士として組織に貢献していくか?という話になります。

組織にとってのメリットを考えよう

さて、ここからは現実的なお話を。
せっかく弁理士試験に合格したら、一度は弁理士登録してみたい!と思うのが大変な試験を乗り越えた方に湧いてくる当然のような感覚だと思います。

一方、個人で負担する場合に月々1.5万円って、それなりにまとまったお金で覚悟がいります。できれば組織に負担してもらえたらいいな、って思いますよね。
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪

でもここで必要なのは「組織にとってのメリット」です。上記の通り、特許事務所における弁理士は、直接的に登録のメリットが組織にとって明確です。一方、企業等における弁理士は、登録のメリットが組織側からは見えにくいのよね。(でもある。ちゃんとあると私は思うよ!!)

であるが故に、今日一番お伝えしたいところは、「個人で負担するには1.5万円は高いので組織に払って欲しいのです」という本音ではなくて、「弁理士登録した暁には、私はこういうメリットで組織に貢献します!キリッ!」というスタンスで組織と交渉したほうがいいよね、という一意見です。

じゃあ一体、メリットどこにある?

最後に、私が弁理士登録により得ることが可能と考えるメリットについて私見を述べます。あくまで私だけの意見なので、ここはなるべく沢山の方のアドバイスをご参照されて、ご自身の組織にあったメリットを見つけていくと良いと思います。

責任ある判断を行う者になる

「こんな怪しい特許見つけたんですが、当社の製品大丈夫ですか?」というような話が知財担当に舞い込むこともあるでしょう。そーいうときに、特許権の有効性を確認して、クレームの範囲を読んで、自社製品の構成と対比する、というプロセスを責任もって専門家としてできます!

というのは最も主要なメリットではないでしょうか。
一方で、判断や相談自体は、社内の人間(本人)としても行えるので、弁理士登録していることが絶対に必要かと言われると、残念ながらそうとも言い切れないです。かといって、登録により以下のようなメリットがあるからこそ、上記の責任ある判断ができるんです!キリッ!と言い切ることもできると思います。

最新の知財の一次情報を提供できる

弁理士になると日本弁理士会から、最新の法改正や特許庁提供の情報等、知財関連の情報がメールで届きます。また、弁理士会提供の研修は、外部の知財研修では、けっこうなお値段するような研修も無料で受講できます。このため、意識をして組織に必要な情報を入手したり学んでいけば、有益な情報の提供者になれる可能性があります。

組織のニーズとご本人のやる気がかみ合わないと難しいところも色々ありますが・・・。

組織にとって大切な人材である

私自身は、有難いことに弁理士会会費を負担してくださる組織ばかりに務めていました。それら組織の視点から考えると、「弁理士試験に合格することのできるような人材は大切にする」という意図もあったように思います。

そして、上記したような直接的なメリットよりも、人材として成長するために得られるメリットと考えると、弁理士登録することによりできること、体験はいくらでも存分にあると思います。

例えば・・・

・弁理士であることにより見られ方が変わる

これ絶対に大きい。
組織内であれば「弁理士だよね?」といって、様々なことを聞いてもらえたり、信頼してもらえたりすることも多かったりします。・・・正直いって、インドのアクセプタンス期間だったり、著作権の微妙な事例だったり、日本の弁理士試験の勉強だけでは到底太刀打ちできないことも度々聞かれるんですけれどね・・・。でもその度に、最大限、そのご期待にお応えすべく、必死に調べたり、色んな人に聞いてみたり・・・と、全力で立ち向かうこと!これは、間違いなく成長する経験になると思います。

外部からの目線であれば、弁理士という肩書により人から見られる目線が変わることも多いです。けっこうあります。
特に外国対応では、弁理士であると話が円滑に進みやすいシーンも沢山あるように思います。

・弁理士であることの誇りみたいなものに支えられる

上記にも近いですが、弁理士であるからこそ、立場上、おかしなことは言えない、言わないというような責任感みたいなものがあると思います。倫理上の義務でもあるのですが、それを支えているのは、弁理士であることの誇りみたいなものじゃないかなーとも思います。

じゃ、あなた弁理士じゃないときはいい加減なことを言っていたの?と言われたら、そうでもないのですが、やっぱり弁理士であると、責任持った発言をしようという方向になるように思います。(これは人によるのかもしれないけれど・・・)

・すごい人に会えるチャンスが続々とある

弁理士になると、びっくりするくらい凄い人たちと同じ場にいられるチャンスがやってきやすいです。普段当たり前のように一緒にゼミで勉強している方々の中にも、めちゃくちゃ凄い人が沢山おられますし・・・。

多分、弁理士ではなくても懸命に探せばこういうチャンスは探せるのだと思います。一方、弁理士になって、そんな探し方すら知らなかった私でも、これまでに沢山のすごい先生方とお会いする機会に恵まれたのは、やっぱり弁理士であったことによる効果は大きいと感じます。

そしてすごい方々にお会いすることは、自分の将来を考えたり、前向きに成長していくことの糧になります!



・・・というように、私が考える弁理士であることのメリットとしては、人材として成長できることに大きなポイントがあるように思っています。
なかなかこれを、組織にとってのメリットに当てはめて主張していくのは難しいところもあるのですが・・・。でも世間的には人材を大切にする方針も続々と打ち出されているので、世の方針には合っていく方向性ではないでしょうか。

最後になりますが、弁理士試験に合格された皆様、おめでとうございます!! 弁理士登録するかしないかには様々なご事情が絡むと思いますが、登録有無に関わらず皆様の今後益々のご活躍を祈念いたします!


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