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映画『ああ、荒野~後編~』

待ちに待った後編。「あろうことか教師が女子高生を”女”として見ている」通報寸前な映画や「ダメ男に貢ぎ、元カレに揺れる女」という何の興味もそそられない映画の予告を見せられて眠さMAXだったが、開始2秒で目が覚めた。

あぁーー、もう本当に素晴らしい。もはや日本映画の良心。こんな映画を作ってくれて感謝しかない。後編は前編に比べ新次(菅田将暉)とバリカン(ヤン・イクチュン)二人の関係性にフォーカスされており、集中できる。

見た目も性格も対極だが、新次とバリカンが抱える悲しみや孤独・怒りは、二人を強固なまでに結びつけていた。しかし、その結びつきは危うさもはらんでおり、これは男同士にしかわからない感情なんだろうなと、傍観するしかない女子としては嫉妬を感じずにはいられなかった。その象徴が、新次の彼女である芳子だろう。

抱えきれない孤独や衝動は埋めることはできないのか? 

人と交わらなければ孤独が癒されることはない。しかし、人と交わることがこんなにも切ないなんて……と思わざるをえない怒涛のラストシーン。陳腐なセリフだが、二人は出会ってボクシングを始めた時からこうなる運命だったんだろう。

ラストにBRAHMANが歌う『今夜』が流れてくる。新次やバリカンだけでない、すべての人の孤独に寄り添ってくれてるような深い愛情が体の中に染み込んでくるような歌だ。すごい!!

人でも音楽でも映画でも本でも何でも、自分を変化させてくれた出会いは、たとえそれがどんな終わりを迎えようと、出会わなければ良かったなんてことはない。**
『物語に出会ってしまったら、元の自分には戻ることができない』というような意味のことを宗教学者の釈徹宗先生がNHK『100分 de 名著』の『維摩経を読む』で仰っていた。

さらにTwitterを見ていて、とある言葉に出会った。

希望とは、行為の中に自分を発見し続けること。そして希望とは、忘れてしまった大切なことを、いつか思い出せると信じること。(名越康文氏のTwitterより)

「自立とは、依存先を増やすこと」というのは、熊谷先生の言葉ですが、もうひとつの「希望とは、絶望を分かち合うこと」という言葉が、より好きなのです。「絶望を分かち合う覚悟がある」と示せるのって、すごく強い愛情だなと。(Dr.ゆうすけ氏のTwitterより)https://www.tokyo-jinken.or.jp/publication/tj_56_interview.html

もう本当にコレだなぁと思った。
「希望とは、絶望を分かち合うこと」。新次とバリカンはコレだったんだ!!しかし、上記の先生方、この言葉を紡ぐためにはどんな想いをしてきたんだろう。どんなに思考を繰返してきたんだろうか?と思うと頭が下るばかりである。

映画は前後編あわせて約5時間40分。前後編を分けなくても1本にまとまったとは思うが内容が薄くなるのは否めない。しかし、前後編を観に行くのは結構大変なので、興行成績的には1本の方がよかったんじゃないだろうか。制作サイドはそのリスクを取ってまでも、この熱量を描きたかったんだろう。そうやってくれた決断に感謝しかない。まぁU-Nextでも公開してるから心配することはないのかな?

#映画 #コラム   #映画評 #040 #ああ荒野 #菅田将暉 #ヤンイクチュン

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