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映画『ノクターナル アニマルズ』

あのトム・フォードさまの映画監督第2作品目。『ノクターナル アニマルズ』、翻訳すると『夜の獣たち』という何とも意味深なタイトル。その意味深なタイトルどおり、すべてのことが意味深で何が本当のなのかわからなくなってくる。知らない間に映画の世界にどっぷりとハマっていた。

スーザンはアートギャラリーのオーナーとして成功し、夫ハットン(アーミー・ハマー)とともに恵まれた暮らしをしているが、夫とはすれ違いの生活を続けている。そんな時、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から一冊の小説のゲラが送られてくる。

スーザンは裕福な家庭の生まれで(おそらく貴族階級。このあたりヨーロッパは差別がきつそう)、元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)とは幼なじみの間柄であり、スーザンはロマンチックでハンサムな彼に子供の頃から淡い恋心を抱いていた。そんな彼と大人になってから再開し、恋に落ちて結婚するが、母親からは強く結婚を反対されていたという背景がある。貴族階級の母から「あなたはイヤかもしれないけど、私によく似ている。同じ階級の人でないとうまくいきっこない。それは後々きっと気が付くはず…」というような呪いのような言葉で娘を縛っていた。

しかし、その言葉どおりなのか、小説家を目指し、夢を追いかけるエドワードと、現実を直視するスーザンは価値観の違いから破局する。スーザンはその後、すぐに別の男性と結婚し、アートギャラリーのオーナーとして成功。しかし、現在、夫との生活はうまくいっていなかった。そんな時、20年ぶりに元夫のエドワードから送られてきたのが一冊の小説のゲラだった。その小説はスーザンに捧げられており、タイトルは『ノクターナルアニマルズ』。スーザンは極度の不眠症で、エドワードから『ノクターナルアニマル』と呼ばれていた。

小説の内容は、父・母・娘の3人家族が旅行に出かけようと深夜に出発。ハイウェイを運転中に、ならず者たちとトラブルになり、妻と娘が拉致されてしまう。父親のトニー(ジェイク・ギレンホール二役)自身も荒涼な大地に置き去りにされてしまうが、なんとか警察にたどり着き、ボビー・アンディーズ警部補(マイケル・シャノン)と共に行方を妻と娘を探し始めるというもの。

このストーリーの複雑で面白いところが、元夫のエドワードと、小説に登場する父親トニーを同じ人(ジェイク・ギレンホール)が演じており、小説の内容とスーザンとエドワードが結婚していた頃の記憶が交錯してくるところにある。とくに、ハイウェイでトラブルになったならず者たちが『妻と娘』にはたらいた無慈悲な描写と、過去のスーザンからエドワードへの仕打ちが重なって描かれているところにある。ただ、これも色んな解釈ができる。

ここから先はどこまで書いていいのか、うまく説明する自信もない。ただ、ラストは「えっ?終わり?」感は否めない。狐につままれるというか騙された感もある。どう解釈するかは人それぞれなんだろうな。それが映画の醍醐味でもある。答えは一つでなくてもいいんだもんね。というわけで、ここからはネタバレしない程度に思ったことを書きます。

スーザンは、エドワードのことを自分にないものを持っている人として尊敬し、愛していた。自分の心を理解してくれる『ソウルメイト』のような存在だったのではないだろうか? ソウルメイトには、異性や同性問わず人生でなかなか出会えるものではない。ましてや、そんな人が自分を好きになってくれることなど奇跡に近い。そんな存在をスーザンは信じ切ることができずに、自ら裏切り、手酷い形でエドワードの元を去ったのである。そのことをずっと後悔していたのであろう。さらに言うと、スーザンはエドワードを見下しもしていた。だから手酷く裏切った。そんなエドワードがなれっこないと思っていた小説家のデビュー目前で、さらにその小説も面白いということで、スーザンの胸により後悔の念が湧き上がってきたのではなかろうか。

終始、スーザンには『逃した魚は大きい』『ないものねだり』という2つのキーワードを感じる。元夫エドワードは理想のソウルメイトだけど、地位も名誉もお金もない。新たな恋人で現夫は地位も名誉もお金もある。ただし、ソウルメイトでもなく、現在は他の女に夢中。というか自分にしか興味のない人のように描かれていた。『女はアクセサリー』タイプの人。

スーザンの行動はいつもどっちつかずで覚悟がなく、フラフラと結局ラクな方へと進んでいくなぁという印象。自分が望むものすべてが手に入るわけではない。何かを得たければ、何かを捨てる必要がある。それには相当な覚悟がいる。今の夫に女がいても何も言えない。というか、言わない。自分の仕事ですら「興味がないの……」と言い出す始末。どこまでいってもお金持ちのお嬢様の倦怠感や焦燥感に付き合わされている感じがする。

書いていてイラッとしてきたぞ。私はこの種の人間がキライなんだなぁと改めて思う。女の人だから余計にキライ。スーザンが男の人だとしたら「まぁ、男だししょうがないか」と思えるけど、同性だと余計に粗が見えてしまう。またこういう人がモテて地位も手にしているからイラッとするんだろうね。大阪のおばちゃん的に言わせてもらえれば「あんた、美人やけど辛気臭そうてたまらんわ。ハッキリしーや!」という感じでしょうか。『辛気臭い』という言葉がぴったり。あぁー、スッキリした。

主人公のエイミー・アダムスは、最近では『メッセージ』の主演、『ジャスティスリーグ』ではスーパーマンの恋人役を演じていた人ですね。これを観るまで特にキレイだとか感じたことがなかった。ただ、ゴメンなさい!美しいです。(辛気臭いのは辛気臭いけどね)こ…これはトム・フォードマジックなの?そして、何よりそのおっぱいどうなってんの?

こんなの見てしまったら、ずっと気になってたトム・フォードビューティーのアイカラークロードが欲しくなっちゃうよ。でも、ホントに高価なのよー。手が出ないー。しかーし、それを使えばこんな風になれるんでしょうね!? トム・フォードさまよ!! 

まぁーー、映画に出てくるファッションやメイクはもちろん、豪邸や調度品、アート、ギャラリーなどすべてがステキなこと。眼福。眼福。

眼福といえば、物語の中で妻と娘を拉致する3人が出てくるのですが(拉致のやり方が本当に最悪だったわ)、全員タイプ。このあたりの人選もさすがのトム・フォードさま。わかってらっしゃる。

こっちの人の方がタイプ♥ この手の顔に弱いわ。


#映画 #コラム #映画評 #ノクターナルアニマルズ #043

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