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【2020年12月号アーカイヴ】『Tokyo発シガ行き➡︎』 "2020年を弔う"by 月イチがんこエッセイ

まず、本号より装幀が変わりましてサイズも変わりました!
サイズがB4になったのと、ちゃんと印刷にかけていることもあって、本号以降のアナログアーカイヴは、こちらにご案内することにしますね。100yen & 82円の切手代がかかりますけど、ご理解くださいませな。
栞珈琲と一緒に買うと送料がかからない仕組みになっています。笑。

2021年1月28日現在考えているのは、最新号が「がんこ堂」さんに並んだらまず、FBの小説家ページでその手前の号をアーカイヴ配信し(この場合、2021年1月号「女神の衣ずれ」になります)、そのタイミングでそのさらに1つ前の号をnoteにアーカイヴするような感じにしていこうかな、と思っています。つまり配布からnoteのアーカイヴまでは2ヶ月タイムラグが出ることになるのだけれど、元々この「がんこエッセイ」はそれ欲しさに本屋さんに足を運んでもらえたら、という「本屋さんへ行きたくなるプロジェクト」なので、これくらいのラグがあった方が良いのではと思っています。

同時に丸4年続けた月曜エッセイ「月モカ」の愛読者がたくさん「いいね!」してくれているFB小説家ページはわたしにとって大事な場所なので、まずはそこでアーカイヴ配信、そして追って”note"にしますね。

(⤴︎月モカのアーカイヴは大量すぎて現在諦めモードです、すんません)

FBアーカイヴは文章のみになるので"note"のアーカイヴの方が視覚的な面白さはあるかと思います。

✴︎    ✴︎    以下、デジタルアーカイヴ↓↓ ✴︎   ✴︎

ー2020年を弔うー

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長島くんの話をしましょう。
って、言ってもみんな長島くんのこと知らないですよね。
当然なのです、わたしもつい先日知り合ったばかりなのですから。
でもね、その「つい先日」知り合った長島くんが、今月からこの“がんこエッセイ”のデザインを新たに担当してくださることになり「Tokyo発シガ行⤴」はシーズン4に突入することになったわけなのです、装幀上のシーズン4。最初が妹の挿絵と、ただただ文章をa4の紙にプリントしただけの本当に瓦版みたいな“がんこエッセイ黎明期”その次が2019年3月の「Gifted」の界隈で、かろうじで冊子のテイをなし始めたシーズン2。そこから、常連のワタセミが「わたしやろうか」と言ってくれて、縦書きの、ちゃんとした冊子としてのフォーマットでお届けできることとなった去年の十一月から今年の十月まで。そして、先月号を読んでくださった方はなんとなくお察しかと思いますがワタセミと決別、なんとか自分で冊子にした、臨時といえる先月号があって、その先に、まったく予想もしていなかった「シーズン4」が、突如現れたわけなのです。

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8月号あたりから、エッセイにおける「疾走感」をモチーフにしていて、ひとり語りというか多少小説的、つまり中島桃果子的な筆致で展開してきたここ数回でありますが、今回はまた、戦時中の書簡よろしく、滋賀県守山市のみんな、あるいは根津の我がお店「イーディ」のお客さんに語るような感じ、お手紙のような感じで書いていきたいと思っています。

たとえばそう、色んな事件が起きすぎて書きそびれていたけれど、東京の根津というところにあるわたしのお店で十月に開催した「おかえりお家ごはん」というイベントでは、関西の「かやくごはん」が大変人気だったこと。多分やけど西の人間からしたらいろんな料理に白だしを使うのって割と普通ですよね。でもその白だしを使って炊いた「かやくごはん」が、東の人たちには「珍しくておいしい味付け」と評されて、たくさんの人に「これどうやって作るの?」って訊いてもらってうれしかった話とか。とるにたらないことだけど滋賀のみんなに報告したい話はいっぱいあります。で、長島くんのお話。最近またコロナがすごいことになってきてうちも時短してるけど故郷のみなさんはお元気ですか。

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長島くんがお友達の写真家さんとふらっっとイーディに来てくれたのは先月の頭の方の、とある水曜日の深夜でした。
いろんな問題が毎月襲ってきていたわたしは、その頃、深夜に突然来訪する新規のお客さんが怖かったりして、本当は2時閉店なのに「もう閉めますけど」みたいに、ちょっときっと感じが悪かったと思うのです、でもそれを乗り越えて入ってきてくれ、なおかつ「素敵なお店」と言ってくださったのが、長島さんと写真家のHOLYさんだったのです。
昔からわたし、妙な胸のざわめき直感がわりと当たるタイプで、このふたりにイーディの二階を見せたい、そして、今は閉ざされてしまった二階で最後に行われた展示——このエッセイでも4月号の“妹と喝采の日々”で語った妹の展示——「きみが春をきらいでも」のフライヤーをね、なんとなくこのふたりに渡したいなあって思っていたの。そしたらなんとよ、直感は的中、その写真家さんは「きみが春をきらいでも」の写真家さんと既に知り合いだったんです! それで、
「え、こんなことってあるん!?」
みたいな感じで色々話してみたら、世代ふくめ色んなところでこのお二人とは繋がりがあって、そこから、先月号の「がんこエッセイ」を手に取った長島さんが「これは誰がデザインを?」ってなって、わたしが
「いやこれはですね、ずっとやってくれていたデザイナーと先月決別しまして……」とか話していたら長島さんが
「僕、小冊子ってほんとうにやってみたいって思っているんですよ」って言ってくださって、いやそれ、めっちゃありがたいけど、まあ飲み屋の話やから、飲み屋の話はいつも水もの、そう言ってもらえただけでも幸せな話やと思っていたら、その後本当に「小冊子の件ですけど」って連絡を頂き、しかも「有志でやってるものなんでまとまったギャラとか払えないんです」ってことにも「そんなのビールとかでいいですよ」って言ってくださって、なのに、なのになのによ、今回のこのデザインふくめて、数種類の表紙デザインを長島さんは提案してくださり、わたしには「選ぶ」という贅沢が、棚からぼた餅のように、降り注いできたのであります。

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先月さらっと触れた、ワタセミの出禁だけれども、これは滋賀県の人というよりイーディのお客さんたちのが実感があると思うのだけど、当然、大きな痛みを伴うことで、決断する方だってつらく、やるせなかった。だって「どうでもいいやばい客人」ではなくワタセミは仲間であって、お抱えだった素晴らしいデザイナーでもあって、そしてお客さんとしてイーディを愛すがゆえに、カウンターの中に入ってわたしの入院を支えてくれたり、このエッセイの組版をかってでてくれたりしていた人なのです。
その、そもそも「善意」でしかないなかで始まったことが、いろんな歯車の中で決別を迎えるというのはとてもつらいことであって、わたしはそれなりに打ちひしがれながらこの決別を決断したのね。そしてそのときに、そんな気持ちで決別するからには、己のちょっとした都合とかを差し込むのは「なんか全然ちゃうやん?」て思ったってことなんです。
つまり、お店としては彼女と決別しなくちゃねってことはもうよくよく解っているのに、でもそしたら誰がこのエッセイをデザインしてくれるの? って、目先の自分が困ることをかんがみて大事な決断が下せない、それって絶対ダメだよね。だからね、変な話、フリー素材の滋賀モチーフを使いながら“モカビエ”こと“湖に現れたアマビエ”を表紙に据えた先月の組版は、わたしにとっては大きな決意表明であったわけ。
だってわたしは書くのはプロだけどデザインのプロではないから。縦書きで二段組みとかどうやってやったら、しかも上下反転してるのとかさぁ……不安……って感じ。米を炊いたことがなければどのタイミングでとぎ汁を捨てたらよいのかもわかららないじゃない、そんな具合で、なんとかかんとか縦書きで右開きの小冊子を組版できたときは、すこし自分を肯定できた感じがしたのです。だってこれまでのその気楽さ、丸投げ安心感も、ワタセミがわたしに与えてくれていた恩恵なのだもの、しかも善意だけの動機で。

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だからね、その冊子が店に置かれて数日も経たない間に長島くんが現れて「僕やりましょうか」と言ってくれたのはね、
ただ「イエーイ、新しいデザイナー見つかったぜ!」ってことじゃなくて「苦渋の決断でしたな、でもよくやりましたね」って、なんだか天がね、
その決別をねぎらってくれたのかなって思えた出会いだったわけなのです。そんな十一月からの師走、十二月。2020を弔う。
弔うってなんか強い言葉だし、死と隣り合わせな言葉だけど、わたし2020年って「ある死」に直面した1年な気が今、していて。だとしたら、もうこれ以上なにも起きて欲しくない、無事に年を納めたい。そんな気持ちがわたしには「弔い」に思えるのです。   
ありがとう、そしてさよなら。さよならを言ってこの過酷だった1年に決別しましょう。そしてハロー、2021。わたしたちはすぐに喪を明けたいのです。そんな気持ちで。

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〈裏表紙の言葉〉
 初期のがんこエッセイたち。なんだか懐かしいね。そうそう、今回から、印刷にかけています、まさにれっきとした小冊子となりました。モカコ新作についてはまた次号で語ります!

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🌞次号のお知らせ
2021年1月号/「女神の衣ずれ」は絶賛配布中。2月の頭にまず小説家FBでアーカイヴがupされます。
2021年2月号(次号)/「モカコも幕開け(Makuake)ル !?」は2月頭に、滋賀県の本屋さん「本のがんこ堂」全店舗と、根津のイーディにて配布開始予定です。お楽しみに!

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