『魔王』(伊坂幸太郎)読書感想

タイトル:『魔王』

著者:伊坂幸太郎

出版社:講談社文庫


★感想

てっきり、シューベルトの『魔王』をテーマにした作品かと思っていた。もちろんその要素は出てくるが...。
社会的や政治的の要素を踏まえたテーマであり、その超能力によって、人の心を操り、社会や自分の人生を変えていくというテーマである。
いかにも、ファッシズムという社会はまるでジョージ・オーエルの『一九八四年』を感じさせるような社会だ。
これは、今の現在社会の政治においても共通するのではないか。
この本書に出てくる犬養首相はまるでムッソリーニのようであり、ビッグブラザーに違いない。
政治的な思想を持つ安藤(弟は潤也)は、自分の思っている言葉を人を操って、自分と思っていることと同じ言葉を発するテレパシーに近い腹話術という超能力を持っている
超能力!?
それが、当然のように現れたら、マーベルコミックのようなスーパヒーローが現れるのでは!?と期待。
第一章に出てきた犬養政策によって、アメリカに対して差別的なことをするのが社会的に問題視とされている。
安藤の友人である英会話教室の教師として経営しているアンドリューと仲がいいが、ドルーチェのバーテンダーのマスターがまさか犬養を支持しているとは思わなかった。
サッカー選手の殺害事件からアメリカから輸入してきた物が沢山傷つけられ、日本はアメリカに憎むようになった始末。
安藤は腹話術という超能力で、犬養首相と決闘することになった。
その後の第二章の『呼吸』では、主人公の立ち位置が変わり、詩織の視点へと変わった
なるほど、第一章は安藤(潤也の兄)で第二章は詩織(潤也の彼女)が主人公か。
潤也は兄貴の形見として、予知能力もしくは直感力という超能力を身につけれた
潤也は、あれから運が良くなってきた。
ほんの僅かな確率で8割か9割ぐらい当たってしまうのが凄いと思った。
政治的な内容によると、憲法改正に関することや集団的自衛権に関することや選挙に関することであるこれは、ある意味、アベノミックスなのではないかと思う。
出版されたのはいつだっけ?2005年?
これはもしかして、ある意味予知されていたかもね。


★オススメなところ

伊坂幸太郎のファンの方、社会・政治に興味ある方、超能力身につけたい方、シューベルトの曲が好きな方はオススメです。


★おわりに

伊坂幸太郎の作品って、割と考えさせられるような小説が多いなぁと思いました。
今回は政治的な内容に踏まえた超能力者が自分の人生や社会を作り出すといった話でした。

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