どっこい地元のヒーロー映画だったベンダースの「PERFECT DAYS」

https://www.perfectdays-movie.jp/

役所広司のカンヌ男優賞獲得で話題の「PERFECT DAYS」。
18歳で東京に出てきて、ミニシアターで「ベルリン天使の詩」とか観て、ベンダースとジャームッシュを観とけば、おしゃれでモテるわと無邪気に感化されたクチなので、観ないわけにはいけない。ということで観たのですが、これ、メチャクチャ地元の映画でした。
浅草界隈に住んでるので、スカイツリーに常時睨まれ、隅田川と雑多な町並みに囲まれた生活はまさに日常。日常が故に、「え?その画角でスカイツリー入るところから、浅草まで飲みに行く、毎週末?」みたいな、ちょっと地元民ゆえの雑音が入ってしまったんだけど、スパイダーマン観ながらクイーンズの住人もいつもこういう雑音を感じてるのかなー、と思うとちょっと得した気分になりました。


スパイダーマンを出したからでもないんだけど、この映画、40代、50代前半で、若い頃サブカルにカブれた世代には、とてもヒーロー映画なんではないかと思いました。
とてもセンスのいい曲をカセットテープで聞く。パティ・スミスにジム・モリソン、ルー・リードって、いまの4,50代が若い頃に背伸びして聴いた、かっこいい王道だ。
寡黙。浮世離れしてる。ウイリアム・フォークナー、幸田文、パトリシア・ハイスミスなんか読んでる。かっこよすぎる。かなのぶ幸子がかかったときとか鳥肌モン。あと、本人にその気がないのに、女性にとてももてる。
90年代、ミニシアターとかに足繁く通った連中には、この姿は、圧倒的なあこがれの対象だし、役所広司が、初老を迎えた90年代サブカルおじさんのヒーローにしか見えない。
終盤に貴種流転的なギミックも出てくるし。

さらに戦ってるのです、役所広司は。正体不明な何かと、永遠の戦いを繰り広げてる。ルーティンな日常の背景に、そのことが浮き上がる構成になってました。同じような毎日を守るために戦う。「変わらないなんて、そんなのあるわけないじゃないですか。」というセリフを吐きながら戦っている我らがサブカルヒーロー。
ベンダースの手癖で作ったような映画ですが、それでも、90年代に憧れ倒した人物像が、街の端っこで隠れヒーローとして暮らしてる、サブカルおじさんには、心に染みる映画でした。


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