政治資金規正法の改正案について

自民党案をベースに公明党、維新案を一部盛り込む形で自民党から改正案が国会に提出され、自民、公明、維新の賛成多数で衆議院を通過した。

野党やメディアのコメンテーターからもザル法、抜け穴だらけ等の批判をうけ、改正された条文の一部では、政治資金について会計責任者への通知不要な項目を盛り込むなど、不記載の違法性を問われたことに対し、改正で合法にしようとしているのではと指摘する声もある。

政策活動費についても、維新案の10年後に領収書を公開ということだが、野党議員やメディアのコメンテーターの言う通り、政治資金規正法、脱税どちらも5年で時効を迎えるため、10年後に違法でああることが仮に発覚したとしても時効を迎えているため、罪に問われることはないなどといった指摘がなされている。

目に見える形で変わったところと言えば、政治資金パーティー券の購入者の公開義務が20万から5万円になった程度。枝葉末節と指摘されても仕方がない内容程度である。

政策活動費の詳細を一般公開してくないのなら、せめてそれなりの調査権限等を持った公正な第三者機関を設立し、チェックする仕組を設ければ良いのではないかと思う。それならば、あえて政治資金パーティー券の購入者の公開義務の上限を下げる必要性もないのではと個人的には思う。求められているのは政策活動費の透明性を高めることなのだから。

ザル法、抜け穴だらけと評される自民党の改正案だが、当の自民党はその内容でもまだ不満だらけのようだ。公明党案、維新案の一部を総理の判断で一部受け入れた事にも納得していないらしい。自民党の議員は改正する気がまったくないのだなと思われても仕方がないのではないだろうか。

自民党の若手議員は、嵐が過ぎ去るのを待っているように、ただ静かにやり過そうとしているようにしか見えず、岸田首相をはじめ自民党の執行部など、自民党の重鎮議員は党内の政争に忙しいようで、今回の自民党の不祥事に全く向き合う様子はなく、政治資金規正法案の修正についても以下に現状維持するかということばかりに腐心しているようにしか見えず、最大の関心事は既に次の総裁選に移ってしまっているようだ。

これだけ連日のようにメディアで批判されても、地方選挙であいついで負けても、それでもまだ自民党の古参議員は今回の件を重く受け止めている様子はなく、自民党内の政争に明け暮れているようで、地方議員からも岸田総理への批判の声が上がり始めているが、これもあくまで次の総裁選や選挙を見越したものではないかと言われている。

既に自民党の議員の関心事は次の総裁選とその先にある衆議院選に移ってしまっているのだろう。狭い永田町や霞が関の中だけで生きている方々には、庶民からどのような目で見られているのか、見えなくなっているのではなかろうか。岸田総理を始め自民党の幹部は次の政局を征するための動きを始めているようだが、そもそも自民党の支持そのものが地に落ちていることを肌で感じていないのだろう。

ただこれは野党にも同じことが言えるかもしれない。自民党が決して飲めないような案を提示し、譲る様子はなく自民党批判のカードとしているような節もある。国民に求められているのは企業献金を廃止することではなく、政治資金の収支の透明化と、不正を行った議員が正しく処罰されるための仕組みなのではないかと個人的には思っている。

民主主義において避けては通れない問題だが、選挙に勝てなければ政策を実現できない。結果、選挙のための政策、政局が優先され国民が置き去りにされる。まさに議員による議員のための政治が行われているのが、現在の状況なのではないだろうか。

このところ政治に対して批判的なことばかり書いているが、それぐらい日本の政治には暗澹たるものしか感じられない。個人的にそう感じている。

ロシアのウクライナへの侵略、ガザでの紛争、シリア、ミャンマー、スーダン等での内戦など各地で戦争、紛争が絶えず、G7の先進国と中露を中心とした勢力の対立は欧州、中央アジア、日本周辺の東アジアの情勢をより不安定なものにし、中東でのイラン、イスラエル・アメリカの対立は中東、北アフリカ地域をより不安定にし、米中の経済対立は世界の経済を不安定にし、様々な対立軸を世界に生み出している。

冷戦期のような東西のイデオロギーによる対立ではなく、まさに多極化による複雑な対立軸を世界に作り出しており、日本も無関係ではいられない。そのようななかで不安定な政権が続き、国内において政局争いに終止するようでは、遠くない未来に日本から信用も経済的優位性も失われるのではないだろうか。

日本という小さな箱庭の中で豊かに暮らしていける時代は、そろそろ終わりを迎えようとしている。箱庭の中でのみ通用する常識、価値観のみに固執していては、日本人は世界の変化から取り残されることになるだろう。日本という小さな箱庭の中で右往左往している日本の政治家を、世界の人達はどのように見ているのだろう。

不祥事を起こしたのはたしかに自民党だが、政治と金の問題は古来から政治とは切り離すことができない大きな問題であり、政治資金規正法の改正すらまともに進まないことは、日本の政治の自浄作用が失われているということだけではなく、今の日本の政治家に日本という国家の舵取りをできるだけの資質をもった政治家がいないことの表れではないかと思える。


2024年6月17日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?