官民一体となって後ろに進み続ける後進国日本

高所得者層と低所得・貧困層への2極化

一応、まだ先進国として数えられている日本の現状を見れば、通貨の全面安、新興国並みの賃金、少子高齢化による人口の減少、そろそろ先進国から脱落しつつあると言っても良いような気がしている。

大手企業では最高水準の賃上げが行われ、長らく続くデフレから脱却等々言われているが、エネルギー価格の上昇、通貨安によるインフレの加速等により実質賃金はマイナス、内需も縮小している。

政府の政策も企業へは補助金をバラマキつつ、社会保障費の負担増や控除の削減など、中低所得者の負担が大きくなるようなものばかり。社会保障に関しては上限が設定されているため、一定以上の高所得者は負担が増ない。また、社保倒産といわれる社会保障費の会社負担分が支払えず、差し押さえが行われたことにに起因する企業の倒産も増えつつある。

大手企業の下請け企業への単価の据え置き、もしくは単価カットなどの報道もちらほら流れている。エネルギー価格、材料価格の高騰に伴う価格改定が行われているが、実際それらの負担をしているのは下請け企業であり、下請けには価格転嫁を認めず、販売価格には価格転嫁を行っているのなら、大手企業が過去最大の利益をたたきだしているのもうなづける。

中小企業において社会保障費の負担増、エネルギー価格、原材料費の価格転嫁ができないことに起因する利益率の低下、賃金アップ圧力、日本人の労働人口の減少、主要通貨にたいして円はほぼ全面安となり、外国人労働者にとっても魅力的な職場ではなくなりつつあり、労働者の確保がより一層難しくなってきている。

資産倍増を歌い、新NISAの無税枠の拡大により貯蓄を投資へと誘導する政策は、ある一面では功を奏し投資へと資金を回す国民も増えてきたが、しかし円資産への不安も大きく、オルカンやS&P500など海外株への投資が促進され、結果円売りが大きくなり円安に拍車をかけている。

さらに年金等への不安から中低所得者も、新NISA等での投資をおこなっているが、そもそも中低所得者にはそれほど余裕のある預貯金や収入がある訳では無く、これからますます税や社会保障の負担が大きくなることが予想され、物価もエネルギー価格もあがり生活が厳しくなると考えられる中、投資にお金を回そうとすればますますお金を使わなくなることが予想され、内需の縮小にも拍車をかけかねない。

これから起こることといえば、高所得者層は更に高所得に、中所得者層は低所得者層に、低所得者は貧困層に。高所得者層と低所得者(貧困層含む)への2分化が進み、中所得者層はほぼ消滅していくのではないかと思われる。

食品関係の大手小売メーカーが自社ブランドの製品を販売しているが、最近の新商品でも他社メーカーより3割近く安い新商品をいくつも販売している企業もある。未だに現状を理解していないとしか思えない行動である。さて、この低価格のしわ寄せを受けているのは何処であろうか。

グローバル化した大企業にとって見れば、条件の良いところで生産し、販売し、研究開発すれば良い。特段国内を優遇する必然性はない。国家というものが根本的にはクローズドな組織形態であるのとは既に対極的な組織形態と言っても良いのではないかと思われる。そのため、日本企業が躍進することに対して日本人が一喜一憂することは、実際のところ昭和の高度成長期の感覚のままだからではないだろうか。

そうであるなら、日本政府が国内の技術、経済力の維持・発展を維持するために大企業を国内に引き止めるためには、そういった企業を国内に引き止めるための政策を優先せざるを得ないのは必然とも言えるかもしれない。そしてそれは必ずしも日本の中低所得者にとって都合の良い政策とはならないのも必然と言えるかもしれない。

鉱物資源もエネルギー資源も持たない日本が技術的な優位性を失えば、残るのは観光、飲食といったサービス業、新興国のような下請け性産拠点ていどの価値しかなくなってしまうが、グローバル化した大企業にとってはそれはデメリットではなくむしろメリットなのかもしれない。日本が技術的な優位を失うということは、グローバル化した企業が技術的な優位性を失うということはイコールではないのだから。

少子化による労働人口の減少、中所得者層以下の低所得化は国内市場の縮小に直結し、それがさらなる少子化と低所得化を加速するという循環はこれからも止まらないだろう。社会保障費の負担増や控除の削減、経済界からの要望も強く今後ほぼ増税が確実な消費税と、政府の政策もむしろこれを助長するようなものになっている。

日本は着実に、2割程度の高所得者層とそれ以外の低所得・貧困層の2極化に向かって進み続けるように思われるが、グローバル化した大企業にとってはそれは特段デメリットとは言えず、そうした企業の存在が日本を今後もG7の一角として先進国としての地位を担保し続けることにつながるなら、今後もこの流れは変わらないのではないかと思える。


2024年5月26日



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