防衛装備移転三原則見直しについて

現在、防衛装備移転三原則について、自民・公明の与党内で見直しに向けた論点を取りまとめ案を政府に提示したようです。

報道番組でも番組が組まれいました。ゲストは以下の通り。

小野寺五典(自由民主党安全保障調査会長 元防衛大臣 衆議院議員)
小川淳也(立憲民主党前政務調査会長 衆議院議員)
鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)

※番組のURLは一番最後に記載。

防衛装備移転に関する各政党の意見について

報道されている内容を聞く限り、自民党は基本的には緩める方向で、公明党も幾つかの点において緩和する方向で考えているようですが、なるべく限定的となる方向で考えているようです。

具体的には自民党は武器輸出の差異の5類型は廃止すべきという案に対して、公明党は必要なら類型を追加する形でという感じで。防衛三文書改訂の際と似たような感じですね。

正直に言えば、そろそろ自民党には公明党と連立を組むのは止めていただきたいと思っています。

立憲の議員の方は、明言はしていませんでしたが言葉の端々に武器移転には反対であることを匂わせるような発言を繰り返していました。日本の平和主義というブランドをもっと活用すべきとか、中国と対話をするべきとか。まあ、一概に否定はしませんが、では具体的に何をどうしていくべきという話は少なくとも私には聞き取れなかった。

しまいには小野寺元防衛大臣から、やはり民主党が政権を失ってよかったとまで言われていましたね。現状のままで中国と対話をすることで台湾問題や尖閣問題が解決できるのかと。

立憲について

NATOとの関係も深めていく必要があるという件についても立憲の議員の先生は、旧ユーゴスラビアなどの件を持ち出して、NATOが軍事行動をおこしたら日本も参戦するつもりなのかと言うような発言を行い、小野寺元防衛大臣だけでなく、鈴木先生からも反論をもらっていました。

でも私が一番ツッコミを入れたかった発言は別にあります。番組を見ながら思わず声に出して否定の言葉を吐いてしまったぐらい。それは

日本の平和主義というブランドについて語りながら「スイス」のような形もあるのではないかと。思わず声に出して、「スイスは平和主義じゃない」と言ってしまいました。

平和主義ではないと言うと語弊がりますが、別にスイスが好戦的な国家であるという意味ではありません。ただ、立憲の先生が言うような「日本人的な平和主義」ではないという意味です。

日本の平和主義というのはある意味歪ですからね。とにかく軍事は全否定という。

なお、スイスは永世中立国です。加えて言うなら武装中立国です。徴兵制の残っている国で基本的に男子は全員19歳下から30歳まで(少し前までは40歳までだったかな)現役の軍人です。軍用アサルトライフルも国家から支給されています。

各家庭度で管理して、招集がかかればそれを持って集合することになります。もちろん毎年定期的な訓練への参加も義務付けられています。つまり、同盟を持たず、自国は自分たちで守るということが国是となっている国です。

更に言うならば、武器輸出国です。しっかり殺傷兵器を輸出しています。SIG社などは軍用のアサルトライフルなども生産する有名な銃器メーカーです。なお、スイスが存在する地域は中世の歴史的を振り返れば傭兵業をが盛んな地域でした。特にスイス人傭兵といえば契約を守るということで信頼も高かったとか。傭兵、つまり中立勢力ということです。

なぜだかよく分かりませんが、一部の日本人の中では中立国イコール平和主義国家というのが定説になっているようです。最近NATOに加盟したもしくは加盟申請中のフィンランド、スウェーデンも元中立国です。もちろん、中立である以上、自国は自身で守る必要があるため有力な軍隊も有しています。

ちなみに両国とも武器輸出国です。スウェーデンにはサーブという有名な航空機メーカーが軍用機も輸出しています。フィンランドではパトリア社。最近自衛隊も採用した装輪装甲車AMV XPを制作している会社です。それ以外にも多数の装甲車、歩兵戦闘車を制作し輸出しています。他にもアメリカやドイツなどとの共同開発で対艦ミサイルや巡航ミサイルなども開発していますね。

中立国について

ついでに言うならば、中立国にも義務は存在します。紛争当事国に武器を供与してはいけないのはもとより、食料品などの戦略物資ももNGです。さらに、あまり知られてないかもしれませんが、紛争当事国の輸送船や軍隊が自国の領内を通過しようとした場合、武力を持ってしてもこれを阻止しなければなりません。

第2次世界大戦中、スイスは領内に侵入してきたドイツ軍とも連合国軍とも交戦しています。ユダヤ人の亡命も拒否し、あくまでどちらの側にも立たないし、自国は自分たちで防衛するという国是の元、それを実行しています。

では日本が中立国であったなら、今回ウクライナ戦争勃発後にロシアの輸送船が日本の領海を通過したことがありましたよね。つまり、日本はその際に武力を行使してでもロシアの輸送船の領海の通過を阻止しなければならなかったということになります。

立憲は小西議員の発言を色々聞いているうちに、もう二度と立憲には投票しないなと思ったが、この番組を見て更にそう思った。まあ、これはあくまで私個人の考えですが。

防衛三文書改訂について

なお、防衛三文書とは国の安全保障政策に関する「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」です。

防衛3文書改訂の際も公明党は「必要最低限」という文言を入れることにこだわり続け、自民党の方が折れて最終的にはその文言が挿入されることとなったらしい。

よく言われる話だが、その最低限は一体誰が定め、実際有事の際に見極めるのか。結局のところ有事の際の政府の決断を鈍らせる以上の意味合いは見出せない。有事ということは国民の生命が危険に晒される可能性があると言うことである。

偏見かもしれませんが、長らく続いた平和の影響でその辺りの感覚が麻痺しているのかもしれないと思ってしまう。有事に際し政府が何か決断した後に、政府の決断が必要最低限であっとか、なかったとか、延々と議論していそうである。他に優先して行うべきことがあったとしても。

良い意味で政府の行き過ぎを抑制する効果が期待できるなら良いのですが、結局のところ必要最低限といったところで事前にその基準を設けることなど不可能な上に、これ迄の日本の政治を振り返って考えてみれば、政府がどのような決断を行おうと必要最低限を超えていると言う批判は出て、超えている、超えていないの議論になるだろう。

有事が終わり落ち着いてからならまだ良いが、きっとそのようにはならないだろう。

そうなれば、政府側はその批判が必ず起こる前提で、まず行動する前に反論のための理論武装をしないといけない。有事と判断されるような状況では、国民の生命が危険に晒されているもしくは、そのような状況になる可能性が高いと言う事だと考えられます。

そのような大事な時の判断に、必要最低限に反しているとう批判に対する反論のための理論武装を検討することに重点が置かれかねないと言うことです。

残念ながら、これまでの日本の政治のやり方を見ていると、そのようになる情景しか思い浮かばない。

話はそれましたが、防衛装備移転三原則見直しについても、同じようなことが繰り返されているように思えます。類型を維持することにどれほどの意味があるのか。それよりもどのような相手に、どのようなことを目的として移転を許可するのかのほうが余程重要であると思えます。

防衛装備移転について

私は防衛装の移転については反対ではありません。集団での抑止力を高めることが安全につながるという考えを支持しています。もちろん、それで完全に抑止できるなどとは思っていませんが。

戦争はなぜ起こるのか。単純に考えればそれを行う人間がいるからです。犯罪はなぜ起こるのか、それもまたそれを行う人間がいるからです。結局のところ、どちらも人間がおこな事であることにかわりはありません。

私達にできることはできるだけそれを抑止することです。犯罪なら司法制度を整え、必要ならそれを強制することができる制度、組織(警察、公安など)を社会に持つことです。もちろん、道徳教育も重要です。

日本の治安の良さはむしろ後者、道徳教育の影響が大きいと考えています。これは学校で学んでいることよりも、子供たちが日々、自分の目で見て学んでいることの影響が大きいのだと思われます。特に小さな子供は驚くほど多くのことを、周囲を意識無意識に観察することで学んでいます。

ただし、平和ということに関しては日本一国でどうにかできるものではありません。日本が何もしなければ戦争は起きないというものでもありません。

日本のの周辺では、中国を筆頭に北朝鮮、ロシアと脅威となりうる国家が存在します。それぞれについて詳しく説明をする必要がないほど頻繁に報道にも登場しています。

ついでに言うと、強い反日感情を持つ韓国人にとって日本は「仮想敵国」です。特に前韓国大統領のときは露骨でしたね。いまだ朝鮮戦争も集結していない状態(※)で、日本を仮想敵国としていかがするつもりなのでしょうか。

※韓国は北朝鮮との停戦協定に署名していませんので、国際法上は北朝鮮と韓国は未だ交戦中という扱いになります。

ちなみに戦後の日本の高度成長を支えたのは戦争です。すぐお隣などで起きていた。決して日本人の努力だけでなし得たものではありません。

少々話がそれましたが防衛装備移転については、それが日本及びその周辺地域の安定に貢献できる事例に関しては、認めても良いと考えています。もちろん、戦争もそれを行う人がいる限り、何時かは起きます。

その際に日本の兵器が人を殺傷する可能性があるという点をもって、装備移転に反対する人も多いでしょう。しかし、ここで一点考えてみてください。

既に日本が輸出している様々なものが軍事利用されています。殺傷兵器にも利用されています。中国共産党軍のレーダー装備などにも日本製品が多数利用されており、ロシアが使用しているドローンなどにも使用されているのが確認されています。

軍拡競争? 既に始まっています。残念ながら未だに人類は艦砲外交から脱却できてはおらず、力の不均衡はむしろ地域の安定を損ないかねません。

と、少なくとも私は考えます。

もちろん物事には良い面があれば悪い面もあり、様々な影響があるでしょう。特に日本の武器移転が緩和されることで不利益を被る国は、様々な形で日本を非難するでしょう。

戦争の抑止、地域の安定と言った事柄は、対話が必須であるとともに、残念ながら対話だけで十分ではありません。相手にわかりやすいリスクを提示する事で、戦争という選択肢を選びにくくする事が抑止につながります。

もう一つは利益を共有することです。地域の安定は日本の周辺国にとっても共通の利益です。経済だけが利益ではありません。しかし、時には人間は利益よりも別のものを優先します。それがウクライナで起きている事であり、台湾問題であり、北朝鮮の問題です。

目まぐるしく変わる世界情勢について

21世紀に入ってからは、目まぐるしく世界の情勢は変化し続けています。人間は目に見えるわかりやすい敵、脅威が目の前にあれば強く団結します。西側から見れば、ソ連という大きな脅威が消え去ったとき、その時から現在よく言われている多極世界、つまり分裂に向かって動き始めていたのでしょう。

ウクライナへのロシアの侵攻については、日本でも毎日のように報道されています。むしろ珍しく海外の先進国よりも熱心に報道されています。これはこれまでの日本の報道からはかなり珍しいことです。

日本の報道では海外の情勢はあまり報じられて来ませんでした。日本人が戦後世界は至って平和だったというような感覚は、その影響も小さくないのではないでしょうか。

ちなみに国際情勢やアメリカ、中国以外の国々に関する書籍の出版数も数倍に跳ね上がっています。これは私のような人間にはありがたいことです。それまでは偶に見つけることができるという程度だったので。

それぐらい、テレビだけでなく日本の出版や報道は、海外のことについて取り扱い技極めて少なかったということです。国際情勢などはそれまでは大学の授業で使用するような学術書か、たまに新書が出る程度でした。

ウクライナの出来事を契機に多くの人が国外のことに関心を持ち始めたのか、それとも低迷する日本の経済に、そろそろ若者が見切りをつけ始めたのか。

最後に今の日本について

まあ、今の日本の政府も企業もやっていることは、緩やかな自殺。それが私の率直な感想ですね。先進国の中では異常に低い物価と更に低い賃金。このままいけば、いずれアジアの新興国にも抜かれ、日本はアジアの下請け国家に。

賃金が安いということで、アジア各国に日本は生産拠点を移してきた。いずれはその流れが逆転し、各国が日本に生産拠点を移す時代も、今世紀の終わりまでには来るのではないでしょうか。

多少、高度な精密機器の加工ができようが、ニッチな分野で世界のTOP技術を持っていようが、そのようなものは今後武器にはなり得ないでしょう。むしろ、安くて精密な製品を量産してくれるなら、これほど優良な下請け企業はないのではないしょうか。

そして日本人の若者は海外に出稼ぎもしくは外資系の企業に。日本に残るのは老人と、オートメーション化が進んだ工場群。行き場のない日本に取り残された者だけ。何時かは引き返せないターニングポイントがやってくる。

そのような未来が来ないことを切に願いつつ。

2023年7月8日


<リンク>

【三原則見直し協議へ】小野寺五典x小川淳也x鈴木一人 与野党に問う防衛装備移転三原則“緩和”と政府の姿勢<前編>

【三原則見直し協議へ】小野寺五典x小川淳也x鈴木一人 与野党に問う防衛装備移転三原則“緩和”と政府の姿勢<後編>


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