ウクライナへの武器支援を止めるべきという意見について

ウクライナへの武器支援を止めるべきという意見も時々聞かれる。
その理由が、

 ・少しでも早く戦争を辞めさせるべき
 ・武器を支援しているから戦争が激化している

などがよく聞く理由だろうか。どちらも私にとっては理解できない理由である。まだ、ロシアの主張を真に受けてウクライナが悪い。だから支援すべきでないという意見のほうがまだ理解できる。(賛同や支持はしないが)

なぜ、ウクライナへ武器を供与しないことが停戦や戦争の激化の回避につながるのか、理解できないなりにもその理由を私なりに少し考えてみた。普通に考えれば、至極バカバカしい内容と思われるが、そのあたりはご容赦ください。

では、なぜそのような理屈になるのか。上記のような主張をしている人は、ロシア・ウクライナ戦争を「ウクライナとロシアが互いに軍事力を行使し戦争を行っている」状態であるとだけ認識しているのではなかろうか。これは部分的には正しいが全てではない。

現状行われているロシア・ウクライナ戦争をもう少し正確に表すなら「ロシアによるウクライナへの侵略戦争」となるはずである。攻め手(侵略側)はロシアであり、ウクライナは受けて(防衛側)である。局所的に反攻作戦として攻めに転じることはあるが、これはあくまで領土奪還作戦の一環であり、ウクライナ軍は国土と国民を守るために戦っている事に変わりはない。

前者はAND回路的に戦争を捉えている。後者はOR回路的である。そして、戦争はAND回路で成り立っているわけではない。OR回路である。

AND回路、OR回路とは論理回路のことであり
 ・2つの入力から1つの解を出力する。
 ・入力は真(true)もしくは偽(false)の値を取る。
 ・入力の組み合わせにより真(true)もしくは偽(false)を出力する。

それぞれの回路の入出力の結果は以下の通り
AND回路             OR回路
 入力1 入力2 --> 出力     入力1 入力2 --> 出力
 真   真   --> 真      真   真   --> 真
 真   偽   --> 偽      真   偽   --> 真
 偽   真   --> 偽      偽   真   --> 真
 偽   偽   --> 偽      偽   偽   --> 偽

簡単に説明するとAND回路は入力の両方が真の場合のみ、出力は真となる。OR回路では入力が片方でも真の場合、出力は真となる。

ここで真を戦争可能もしくは戦争継続可能、偽を戦争不可、戦争継続不可と定義してみる。例として入力1をウクライナ、入力2をロシアの状態とすると以下のようになる。

AND回路的判断では
 ウクライナ(真)  ロシア(真) --> 真 (戦争継続可)
 ウクライナ(偽)  ロシア(真) --> 偽 (戦争継続不可)
 ウクライナ(真)  ロシア(偽) --> 偽 (戦争継続不可)
 ウクライナ(偽)  ロシア(偽) --> 偽 (戦争継続不可)

つまり、戦争を2つの国家が軍事力を行使して戦っている状態とだけ認識し、どちらか一方が戦争継続不可能な状態になった時点で戦争と言う状態が継続できなくなると認識しているのではなかろうか。現実にはそのような事はなく、OR回路的に戦争の状態は推移するはずである。

OR回路的判断では
 ウクライナ(真)  ロシア(真) --> 真 (戦争継続可)
 ウクライナ(偽)  ロシア(真) --> 真 (戦争継続可)
 ウクライナ(真)  ロシア(偽) --> 真 (戦争継続可)
 ウクライナ(偽)  ロシア(偽) --> 偽 (戦争継続不可)

双方が戦争継続の能力もしくは意思を喪失しない限り、戦争が終わることはない。では停戦もしくは終戦に結びつく状況としては、どのようなものが考えられるか。

能力的としては
 人(兵士)、物(武器弾薬)、金の不足

意思としては
 ・戦争を継続するほうが被る不利益が大きいい
 ・戦争目的を達成したため、継続する必要がない

能力については、兵士、武器弾薬、またはそれらを調達する資金の枯渇により戦争が困難になる場合である。このような場合、枯渇した側が甚大な被害を被り、最終的には敗戦へとつながる。結果、終戦となる。この場合、敗戦側はその過程で甚大な被害を被るケースが殆どで、第2次世界対戦以降の総力戦においては、国家としての主権も喪失するケースが殆である。

ウクライナへの支援を止めるということは、まさに侵略を受けているウクライナ側が、「人(兵士)、物(武器弾薬)、金」不足い陥るということである。当たり前のことだけど。弱体化するのはウクライナ側であってロシア側ではない。

そしてこの戦争はロシアによるウクライナへの侵略戦争である。物(武器弾薬)、金が不足すればウクライナ軍が弱体化し、ウクライナ側の兵士、一般市民への被害が大きくなる。

また、意思という点において侵略側であるロシアの指導者であるプーチンは一貫してウクライナの非ナチ化、非武装による中立化を戦争目的として掲げている。つまるところ、現在のウクライナ政権を倒しウクライナを傀儡国家とすることであって、ウクライナの領土を部分的に奪うことではない。

ウクライナ政府が早々に降伏すれば多少は被害が抑えられうかもしれないが、その結果、ウクライナは主権を喪失する。現状のウクライナは領土奪還を諦めておらず、そのように早々に降伏することは考えられないため、結果的にウクライナ側に甚大な被害が出ることになるだろう。

つまるところ、ウクライナへの支援を停止しても停戦、終戦につながることはないと思われるだけでなく、より凄惨な状況を生み出す可能性のほうが高いと考えられる。

また、現在よく聞かれる占領されている地域を放棄することで停戦をという意見も、ロシア側の戦争目的が領土でない以上、実現可能な提案であるとは言えない。ウクライナ側が受け入れてもロシア側が戦争目的を放棄しない限り成り立たないからである。

そしてロシア側に戦争目的を放棄させるには、「戦争を継続するほうが被る不利益が大きいい」と判断させるような状況を生み出すしかない。戦争目的に変更がない場合、仮に停戦が成立したとしてもそれは、ロシア側にとっては次の戦争準備のための休止期間でしかない。なぜなら戦争目的を達成しておらず、かつ戦争目的に変更がないからである。


2024年2月11日


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