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読書記録✐『あの子の殺人計画』


概要

「あたしって虐待されてるの?」アリバイトリックに新境地!あなたは絶対に見破れない。

椎名きさらは小学五年生。

母子家庭で窮乏している上に親から〈水責めの刑〉で厳しく躾けられていた。 ある時、保健室の遊馬先生や転校生の翔太らに指摘され、自分が虐待されているのではないかと気づき始める……。

一方、JR川崎駅近くの路上で、大手風俗店のオーナー・遠山が刺し殺された。

県警本部捜査一課の真壁は所轄の捜査員・宝生と組んで聞き込みに当たり、 かつて遠山の店で働いていた椎名綺羅に疑念を抱く。

だが事件当夜、彼女は娘のきさらと一緒に自宅にいたというアリバイがあった。

真壁は生活安全課に所属しながら数々の事件を解決に導いた 女性捜査員・仲田蛍の力を借りて、椎名母娘の実像に迫る。

前作『希望が死んだ夜に』の「こどもの貧困」に続き、「こどもの虐待」をテーマに 〈仲田・真壁コンビ〉の活躍を描く社会派と本格が融合した傑作ミステリー。

芦沢央 推薦! 「構造的であるからこそ、そこにおさまらないものが浮かび上がる 衝撃の先にあるものを描こうとしている小説だと思った」


著者について

中学生のとき夏休みの自由研究で「空上殺人事件」を執筆する。

就職活動を始めるにあたり、小説を書いている時が一番楽しいことに気づき小説家を目指す。

新人賞に落選することが続いていた時、復刊したばかりの『メフィスト』を見つけ、メフィスト賞に応募する。

2010年2月『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞しデビュー。

同作は2011年版「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選出された。

2012年『葬式組曲』が「本格ミステリ・ベスト10」2013年版で第7位になる。

2013年同作で第13回本格ミステリ大賞の候補作に、同作に収録されている「父の葬式」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)の候補作になる。

2015年『もう教祖しかない!』で第7回日本タイトルだけ大賞の候補作になる。


感想

社会問題を題材にした小説は何となく複雑で難しい印象があったのですが
以前、『希望が死んだ夜に』で天祢涼さんの文章に初めて触れてこんなにも読みやすく、現代社会の闇に触れることができ、さらにはミステリーとしても面白い。
こんなことが成立するなんてと驚きと共に、すごい作家さんに出会えて嬉しくもなりました。

今回の『あの子の殺人計画』も本屋さんで並んでいるのを見て、まずタイトルが衝撃的。 概要を読んでさらに興味が湧きすぐに購入。

【虐待】というテーマで想像するとかなり心が苦しくなる描写もありましたが とても文章が読みやすく、さらに重いテーマだからこそ途中で止めることができず最後まで一気に読み終わりました。

最後の四章以降、「えっ!えええええ!」という驚きの連続。

そういうことだったのかと。
これは再読して頭の中を整理した方が良さそう。

自分が「普通」だと思って生きているこの状況は世間から見たら普通ではないのかも?
SNSなどで他人と比べ過ぎて自分の境遇を嘆いたり、他人を羨んだりすることも問題になっていますが、逆に狭い世界の中で生きていると虐待を躾だと思い込んでおかしいと感じることのないまま過ごしてしまう。

翔太のように『君は虐待をされているんだ』とはっきり相手に言うことも難しいし、言われた側もそれを受け入れることが中々出来ない。

結局どのような対応が正しいのか。様々なことを考えさせられる1冊でした。


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