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「N1分析」と称して、顧客の担当者に我が社のことをネホリハホリ聞いてみた


「N1分析」をご存じだろうか。あの西口一希氏が考案した「たった一人の分析から事業を成長させる」マーケティング手法だ。
P&G出身のマーケッターである西口氏は、転職先のロート製薬で「肌ラボ」ブランドを急成長させる際にこのN1分析を編み出したという。

そして現在は、スマートニュースのマーケティング担当執行役員として、このN1分析を駆使しスマートニュースのユーザー数を急伸させている。

詳しくは、氏の著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践・顧客起点マーケティング』(翔泳社)をお読みいただきたい。学ぶところ多々である。


で、今回わたしが書くことは、もっとしょぼい話だ。
でも、意外と効果があったので、少し自慢したくなり書いている。

実はN1分析は、B2B事業の既存顧客に向けて、「改めて営業する」のに適しているのだ。

きっかけは些細なことだった。
ある顧客を担当する部下と、仕事の進め方で意見が分かれた。

「方法Aの方が顧客に喜ばれるんじゃないの?」というわたしに対して、部下の返答は「方法Bじゃないと顧客の意志を反映できない」という。
「私がお客なら手間が省ける方がいいけどな。意見を反映したければ…云々」。

「推察で議論するくらいなら直接お聞きすればいいじゃん」ということでアポを貰うことにしたけど、用件を正直に言うのは少し気が引ける。


そこでN1分析の名前を借りた。

「お客様の話をじっくりお聞きする中から、弊社の事業を改善したい。ついては、御社のN1分析をさせてください」と。
先方のご担当もN1分析をご存じだったようで、申し入れにすんなりOKが出て、懐に入ったお話ができた。


たとえば顧客には、わが社にとって競合する発注先が何社存在するのか。

N1分析ふうの質問を繰り出す中から、「一時は見積額に誘われて浮気をしたが…」などとリアルな話が出てきた。

「では、わが社に定期的に発注くださる理由は?」と伺う中からは、先方が感じておられる「わが社の良いところ」もいくつか語っていただくことができた。

たとえば、撮影機材の搬入等のロジ周りや、スタッフのマナー、撮影の合間の取材先との何気ない会話など、
「そこも評価されているのか」という発見もあった。

要望などもストレートにお聞きでき、「できることはすぐ改善します」とお約束もした。

結果的に、N1の入り口辺りはクリア。マーケティング戦略の立案まではいけないが、そのまま仕事に生かせ、顧客との絆を強くできる展開になった。


わたしたちの普段の営業スタイルでは、こんな話はなかなか聞き出しにくい。
お聞きしたいことの外周をぐるぐる回って終わりそうだ。

それは営業技量の問題かもしれない。
だが、営業ガチガチのアプローチだったら顧客も返答をぼかしたたり、あるいは穏便な回答になったりしたのではないだろうか。

それがN1分析と称しただけで、圧倒的に訪問のハードルが下がり、まるで客観的な立場のようにお話をお聞きできる。これはいい。

今回の実践は、西口氏が提唱するマーケティング手法とは程遠い。
N1で手に入れた顧客の声をデータ化して分析するのでもなければ、ブランディングのための広告を打つわけでもない。

ほんの体裁をお借りしただけだ。

それでも、複数の取引先にN1分析を試みれば、少なくともわが社の問題点の把握や顧客にどう向き合うかのスタンスは見直せそうだ。
部下と顧客の思いを推察して、あれやこれやと議論に時間を費やす必要もない。


西口氏は著書の中で、「B2Bにも応用できる」と書いておられる。それを応援の言葉にして、もう何社かに我流N1分析を試みてみたい。


(記事:P&D_TSUBAKURO)

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