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シガーキス”セルフ”アンソロジー

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「シガーキス」をテーマに書いた短編をアンソロジーという形でまとめたものです。  暇つぶしにでも読んで頂ければ、幸いです。
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#文学フリマ

1.『屋上のふたり』

1.『屋上のふたり』

昼休憩になると、俺は校舎の屋上に行く。貴重な休み時間をあの窮屈な生徒指導室で過ごすのは、正直ごめんだ。

抜けるような青空の下、屋上の柵に寄りかかりながら煙草を吹かす。立ち上っていく煙が、空に浮かぶ巨大な入道雲に吞み込まれていくように見えた。

「あ。センセ~!やっとみつけた~」

立ち入り禁止で、俺以外に誰もいない筈の屋上に、なんとも生意気な声が響く

「も~。何処にもいないから探しましたよう

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2. 『真夜中の灯り』

2. 『真夜中の灯り』

時刻はとっくの前に24時を回った。部屋で音を発するものは、俺が叩いているキーボードと、不規則に明滅する蛍光灯だけだ。
 
「一ノ瀬。進捗は?」
 
突然、背後から声を掛けられる。
 
「あ、志村さん。お疲れ様です」
 
彼女は気だるげな視線をこちらに投げ、缶コーヒーを一本こちらに差し出していた。
 
「ありがとうございます。進捗は…良くはないですかねぇ」
 
コーヒーを受け取り、言葉を返す。
 

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