二律背反 感性と理性のはざまかんぺー
今日は特に暑くて熱中症気味だから風呂上がりにエアコンをつけて
ベッドに転がるとうたた寝をした
ただとても疲れていたせいで眠ったけれど疲れは取れずなんだか苦痛な感じの夢を見ていた
そんな夢見たくもないのにまだまだその苦痛は続きそうだったから、
もうそろそろ目覚めないかな?と
覚醒しなかったところで
ある人の顔が浮かんできて、アレ?なんで?
そう思ったら目が覚めた
ある人というのはネットで知り合った人でいわゆるマッチングアプリ的な
ヤツで声をかけて来た人だった
「とてもタイプなんです、一度お会いしたいです」
って、10歳以上年下のその人は言う
僕は正直なところそれほどお会いしたい感じにはならなかったのだけれど
「とてもタイプ」なんて稀少なことを言ってくださる方にお目にかかることは滅多にないので、お会いするだけならお会いしましょうか、となった
もったいつけてるけど
素直に嬉しかったんだし
お互い、散歩するのが好きだと分かっていたのでじゃあ街を歩きましょう
って事であの日はお茶の水を起点に歩き始めた
水道橋から東京ドームの公園でひと休みそこから本郷方面に向かい、
湯島天神、気がつくと不忍池に隣接した動物園の辺りまで来ている
獣の匂いがして来て、なんか変な匂いしない?って話してたら左側に高く
そびえるのは動物園の塀だったからこんなとこまで歩かせてしまって
ゴメンね、と謝った
「全然大丈夫だよ、散歩好きだし」
ここへ来るまでの間、彼はずっと僕の話しを聞いて相槌を打つ聞き役だった
僕は普段それほど多弁ではないのだけど喋らないと間がもたないじゃないか
と、もうひとりの自分からお叱りを受けるので、仕方なく目に映るものをネタに他愛もないことを話し、時々店先に売っているものを手に取ってみてた
品物を手に取ると
「それ欲しいの?もっとじっくり見てみる?」
と彼が言い店の中に連れて行かれる
いや、本当はそんなに興味もないんだけど
なんとなくさ、行きがかり上ちょっと
見てみただけなんだけど…
とは言えず、店内をそれとなく眺めて
「うーん、今日は下見、また今度にしとく」
「じゃあ、今度また一緒に来ようよ」
なんてやり取りがあったり。
また今度一緒に来るんだ
って言葉をパンツの後ろポケットに引っ掛けたまま不忍池をぐるーっと
1/4周くらい来たところで、成人映画をやってる建物の横を通過する
「ここさ、来たことある?」
今まで聞き役だった彼が急に話しを振ってき始めた
「え?無いな、ここってアレでしょ?」
「うん、なかなかねえカオスだよ」
「行ったことあるの?」
「時々来るよ」
(マジか)
「へえ、そうなんだ。でもここってかなりおじさんが
多いんだよね?大丈夫なの?ってか、なんかされるの?」
「うん、それなりにされるよ」
「されちゃうの?」
「だって、なんだかかわいそうな感じするんだよ、だから僕で良かったら
って感じかなぁ」
(え?まさか俺のこともかわいそうな感じに思ってるわけ?
俺、ここの爺さんたちよか全然若いぞ?)
「かわいそうな感じする」
と言う言葉もまた後ろポケットの奥にねじ込んで、そこから賑やかな
駅前の辺りを歩いた
もう夕方だし、たっぷり歩いたしちょうど駅もそこにあるから、電車
乗って帰ろうよ、って思ってたら
「あのさ、サウナ行かない?」
サウナ?ああ、サウナね
ん?サウナってあそこかな?
今はもう無いけれど、このサウナは一般向けを装いつつ隠し部屋
みたいなとこがあるとこで耳年増な僕は話だけはやたら詳しく
知っていた
僕はこの時までソコに行ったことが無かったからウワサに聞く
隠し部屋的なスペースがどうなってるのか確かめたくなって
では行きましょうと言うことになった
身体を洗ってさっぱりしてサウナはあいさつ程度に覗いて
さて、館内探索だ
こういうところは静かにしてなきゃいけないことはちゃんと
躾けられていたのだけれど、珍しすぎて
僕は笑いながら
「あっ、これが噂の階段なんだ」
「マジで秘密の小部屋があるじゃん」
「結構いるね人」
などとムード感なんて一切出さずに面白アトラクションを
楽しんでカーテンの隙間から他人の行為なんかチラ見していた
すごく迷惑なヤツ
でも本心は俺なんかに手を出したってがっかりするだけだから
やめときなよ、っていう警告というか
防御的な行動だったと思う
俺に触ると火傷をするぜwww
それでも防御レベルが幼稚すぎてあっさりと防衛線を破られやはり
結局彼が攻撃を仕掛けてきて「なんだかかわいそう」なヤツ
だと思われているかもしれない僕とそういうことになって、そして
その日はもうそれで終わりだった
今思うとその人はとても癒しのある人だった
あの時期、恋人との関係に悩んでいた僕にとって
知らずのうちに癒しを与えてもらっていた気がする
半月くらいしてまた彼から連絡があった
なんだかんだと何度も会った
二度目、高円寺デートの時だ
彼はこう言った
「僕ね、結婚するんだ」
へ?結婚?
この世には普通に異性と結婚しつつこちら側に関りを持つ人もいるから
ああこの人そっちだったんだなと思ったら違っていた
僕より年上の男性と結婚をするという。まぁこの場合の結婚は相手の籍に
入るということだ
あと何とかパートナーシップみたいな制度も利用するっぽかったし
結婚式も披露宴もするんだと話した
相手の男が少し頼りなくて自分がいなきゃダメな人なんだ
みたいなことも言ってたと思う
僕が誤解しているのかもしれないけれど同性婚を望んでいる人たちって
相手との信頼関係が強固でその人と肉親以上のきずなを持っている人が
多いのじゃないかと思っている
だから、間違ってもこんなどこの誰だか分かんない男(僕のこと)と
白昼にアバンチュールを楽しむような人は結婚なんて形を望んで
いないのだと思っていた
思い込みと言うか先入観。やっぱ人それぞれだよね
実際は
で、それから間もなく結婚式の写真とか動画とか
送ってくれて、それはもう幸せそうだ
ちょっと頼りなさそうな相手の男もすごく嬉しそうな顔をしていて
写真をみてる僕だって幸せな気持ちになったよ
けどね、ちょっとやっぱ
引っかかる
これが一般的な男女の結婚とかならすぐインスタとかで漫画になっちゃう
ような話なんだけど、そこはゲイだから恋人以外の不特定多数との性的接触は「普通」だよね
普通なのかな、まあそういう意見をよく目にする そこにこだわったら
この世界やってけないよ、って言われたこともある
それはそれ、これはこれ
そんな風に考えることも出来る。人それぞれだからこうであるべきだ!
なんて思わないけれど、同性婚という一般の男女の結婚と同等の権利?を
求めている人が、その部分に関しては
「ゲイだから、ま、いいっしょ」
みたいに軽くなっちゃうのはどうなん?
口に出そうと思ったけれど、言わなかった
そのモヤモヤを、またポッケに隠しその後も何度か会った
まぁ僕にも恋人はいるけれど、同性婚を望むかと言われれば
「そんなことしたら田舎じゃ一族郎党村八分に遭っちゃうから
勘弁して欲しいっす」
って感じなのでだから、「それはそれ、これはこれ」にも至らず
お互い好きなようにして暮らしている
もっとももう数年単位でそんなことと縁がなくこのまま終わるのだ
と覚悟は決めているけれど。
で、なぜその人の顔が疲労困憊で夢まどろむあの時間に現れたのか
意味なんて無いようでちゃんとどこかに隠れているものだ
きっとあの人は不可能に思われる二律背反を二律成立させているのかも
しれないな
余計なことを言わなくてよかった
いつの間にかお互い忙しくなってそのうちコロナで疎遠になった
ポケットは重いままだったから
今ここに捨てておこう
良い経験をした
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