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スペシャル山手線ショー

かっこいい瞬間を見た。山手線内回りが工事の為2日間運休していた時だ。僕はその工事を初日にたまたま渋谷駅で反対のホームから見かけた。
永遠に続く線路と夜の上で職人達が動いている。
みんな同じ動きをしていないのに、不思議な連帯感がある。過剰なまでの強い明かりが夜に立ち向かう職人を照らすスポットライトみたい。
いや、むしろ、スポットライトを超えて後光のように見えてくる。仏様や好きな子や職人に差す後光。
そして、名前がわからない鉄の塊で名前がわからない鉄の塊をぶん殴っている。
金属のぶつかり合う音と光の中には、何をすればいいか分からず隅っこで立ち続けている初日のアルバイトはいない。全員が自分のやるべき事を振るべきハンマーを振り続けている。
何度も確かめるように、初めて叩くようにガンガンガンガン、鉄の悲鳴が聞こえ続ける。
剥き出しの金属がデカい恐竜の背骨に見えてくる。そしたら、線路工事がモンスターハンターで討伐したモンスターから職人達が素材を剥ぎ取っているように見えてくる。
そういう瞬間の連続がかっこいい。
反対側のホームで僕が写真撮ったり感動したりしていて他の人も同じくらい非日常の光景に目を奪われてるのかなと思いながら周りを見るとみんなスマホを見たり友達と談笑している。ほとんど誰も見ていないのである!
1人で勝手に興奮してちょっと恥ずかしい。
そうなってくると、線路工事が僕だけの為に開催してくれてるスペシャルショーのような気がしてきた。
もちろん、そんなことはない。
山手線の為、東京都の為、日本の為、ひいては世界の為である。でも、なんだか、目の前で工事を見ていると僕なんかの為に夜通し働いてもらってありがとうございますとお礼を言いたくなってくる。
生きていると、そんなスペシャルショーが僕の為に開催されているのではと驚くことが度々ある。
最近、読書がマイブームでよく読んでいる(先月は6冊も読んですごい)のだが、この前、すごい面白い本を読んだ後に、全く別のジャンルの人のエッセイを読んでいるとこの前に読んだすごい面白い本について書かれているじゃないか!!
年代も国も何もかも違う二つの本なのに!
上下巻のような連帯感が湧き上がる。
すごいじゃん。まさに僕の為に書かれているスペシャルブックじゃん。
そう思うと、俄然、得している気分になる。損得勘定で本を読んでいるわけではないんだけど、こういうしょうもない奇跡が起こる事がある。そんな偶然を図々しくも嬉しく思うのである。
奇跡というのは案外そういうものの積み重ねとかパズルみたいなものがぴったりハマることなのかもしれない。どうでもいいものとか無意味なピース、役に立たないものをいかに面白がれる事が人生において大切なのかもしれない。

うれしくて喜びます