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心のカタチ

「なんでそんなことになんねん、、、」
心の声が漏れるように出たことがある。

あくまでも
「なんでそんなことになんねん‼︎」ではなく

※イメージとしては、地べたに座って片膝を立ててもう片方は伸ばしたまま、壁にもたれて後頭部も壁につけて、斜め上45度見上げながらの、、

「なんでそんなことになんねん、、、」



事の始まりは、高校生の時。
体育の授業で準備体操をしていて、、

「だるない?」

「なぁ?」

「なぁて!」

俺は、隣で体操してる友達に一方的に話しかけていた。

「ええから、ちゃんとせーよ。また怒れんで。」

友達は、僕にそう促す、、

「またってなんやねん!」

「だって、、」

友達が何か言いかけたのを遮るように
ついに俺は口を滑らす、、

「××××××」(自主規制)

それは、その友達を揶揄する差別用語。

言い訳になるけど、
差別心のカケラもなかった。
言葉の意味さえ深く理解して無かった。何より、
その子とはホンマに仲が良い友達やったし、、

「コラ‼︎今何て言った!?」

すでに目をつけていた先生が、一目散に走って来る

「ほらぁー、だから言ったやん。
 また、怒られるでって、、」

友達がそう呟くのとほぼ同時に
先生は、目的にたどり着く、、

「これは問題です!問題にします!」

目的に向かって先生は、そう言い放った。


その日の内に、俺の処分は決まった。

停学は免れたが、放課後に一週間特別授業。
ろくに学校に行ってなかった俺にすれば
一週間、毎日通学する事でさえ地獄やった。

でも仕方ない。
悪気は無かったにせよ、言ったらあかんことは
言ったらあかんこと。

教育者として、それを理解させ深く反省させなければならない。
という先方の意図は汲み取れた。

その日から一週間、授業が終わったら
放課後、なんらかの教育を受けた、、
被害者にされた友達も、毎日それが終わるのを待っててくれた。

ただ、、申し訳ないんやけど、、
これは、さすがに申し訳ないと思うけど、、

特別授業と題された、その時間の記憶がまるで無い、、

なんか、よう分からん嫌悪感にも似た違和感だけ
感覚的に残ってるけど、内容そのものの記憶が、、

丸ごと、完全に、完膚なきまでに、、無い。

そんなこんなで、特別授業も最終日を迎えた。
最後の日は、「差別について」という題目で
感想文を書きなさい。というものやった。

「書き終えたら職員室に呼びに来なさい。
今日は、提出するまで帰しません‼︎」

先生は、ビックリするくらいのドヤ顔で
そう言うと、クルッと反転してドアを閉めて出て行った。

え?練習したん?
最後そう言うて決めてたやん。
一週間前から決めてたやん。

そんな邪念を拭い去るように、ペンを走らせた。
至って真面目に、これはもう真面目に
俺なりに、アホはアホなりに、、誰がやねん!
その時思った事を最大限に、本心で書き上げた。

生い立ちや人種、身体には、人それぞれ違いが
あるけど、違ってていい。
違ってることが面白い。違いこそが個性。

ザックリそんなことを書いたと思う。

それを読んだ先生は、頭を抱えていた、、
たしかその時は2人いたと思うけど、左右同じ形状やった。

シンメトリー?
え?なんで?
結構、真面目に書きましたやん、、
僕、意外とちゃんとしましたやん、、
もっと言うたら、あのドヤ顔の時
吹き出しそうなのん、我慢しましたやん。

顔を上げた右側の先生が口を開いた。

「君、全然理解してないね、、
 一週間、何を聞いていたんだ?」

さすがに、「記憶がおまへん。」とは言えず

真っ直ぐ、ただひたすら真っ直ぐに先生の
目を見てた、、

左側は、まだ頭抱えたままフリーズ、、

右側が続ける
「あのね、人間はね。」

(おう!大きく出たな!言えや!言ってみろや!
 芯食えよ!バチッと決めろよ!)

「人間は、みんな同じなんだよ。
 みんな同じ人間だから、差別はいけないんだよ。
 君は間違っているから、今からそう思いなさい。」

え?マジすか?
サイコパスなんですか?
静かな口調がより一層サイコパスなんですか?

恐かった。
なんか、ものすっご恐かった、、
そして、悟った、、
同じじゃなかったらアカンという概念が
差別を量産してるのだと、、

めちゃくちゃ嫌やった、、
「嫌やー!!!」って叫びたかった、、
心そのものを否定された気分やった、、

「えぇーと君ね、君の心、、

それ不良品だから、これと取替えなさい。」

と言って、箱の中にガサガサー手つっこんで
正立方体でツルツルの、いかにも大量生産しました
って感じの「心」ってシール貼ってるやつ、
その内の一つを無造作に差し出された。

そんな気分やった、、

そりゃまぁさぁ
こちとら、そんなキレイでもないしぃ
所々傷入ってるしぃ、ギザギザとかぁ
デコボコしてるとこもあるけどぉ、
これはこれで、重宝してまんねん。

「あっはい、わかりました。」
って簡単にそんなもんと引換に渡す訳には
いかんのですわ。

顔に出てたと思う。
口に出すの我慢した分、我慢というか
説明するのも嫌やったし、
出るとこ顔しかないから、、

めちゃくちゃ出てたと思う。

でもさぁ、、

「納得していないみたいだね。特別授業、、
      
  延長します。」


「なんでそんなことになんねん、、、」

※繰り返し