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マクドナルドのプレイランド

子どもの頃にできなかったことや、叶わなかったことは今でも燻るように心の奥底に残っている。大人になったらなったで、そのささやかな願いのデメリットがわかってしまうから。
全部いいよとはいえないけど、可能な限り応じてあげたいなと思い、時計や財布と協議する。
土産屋に売っているちゃちなキーホルダー
一度回したらきっと満足するガチャガチャ
絶対完食できなさそうなお子様ランチ
我が子が願うことは、小さなわたしが願っていたことと恐らくほぼ同じだ。

親になったらいろんなことが見えてきた。まだ親になってたった2年なのに。
あれをしなさいこれをしなさい。保育園児が小学生になったらきっともっと口を酸っぱくして言うだろうお小言。すべてを認めて受け入れる優しいお母さんになりたいな、なんてのは我が子が1歳半頃に無理だとわかった。きっとこれからもっとうるさくて怖いお母さんになる。

手を洗いなさい 風邪をひかないように
なんでも食べなさい 早く眠りなさい しっかり育つように
あなたのためなのよ、なんて綺麗事だと思っていたけど、本当に「あなたのためなのよ」なんだから仕方ない。
親になる過程で、きっと子どもの頃のやんちゃな心を少しずつ置いていく気がする。というか、置いていってる。つまらない親になるのは、どうにか避けたい。ゆえに、かつてわたしがしたかったことを、少しずつ叶えようと決めた。子どもの心が残っているうちに。吾子とわたしを重ねて、そんな未練を成仏させようとしているかのようにも見えるけど。

マクドナルドのプレイランドという場所がある。
大きい店舗の中にある、子どものちょっとした遊び場所だ。ソフトマットに小さなすべり台があるだけの、ほんとうに小さな空間。なにもそこじゃなくても、児童館や公園の方がもっと広くて自由に遊べるのに。
娘はそこで遊びたい!と言い、ちいさいわたしも「遊びたかったの!」と言った。
つまらない大人になったわたしは「マックをテイクアウトして、もっと広い公園に行こう」と言うだろう。今はまだつまらなくないな。店内でハッピーセットとコーヒーを頼み、娘が満足するまで、その小さい遊具で遊ぶことにした。
結果1時間半ほど、小さなマットの上で飛び跳ねるのを眺めていた。

子が望むことをすべて叶えることは難しい。時間もお金も有限なのに、望みは無限で湧き水のようにどんどん出てくるからだ。取捨選択して叶えても、捨て去られた方をなぜか覚え続けている。それでもなるべく、望みを叶えてやりたい。それがわたしのエゴだとしても。

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