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スタートアップに「向いていないな」と思った時のこと

大企業からスタートアップに転職し、3年半後大企業へと転職した。「速い成長を」と思ってスタートアップに飛び込んだはずが、数年後には同じような理由で再び大企業へと転職したのであった。ちなみに職業はエンジニアである。

何が起こったのか、自分の中で振り返ってみることにした。

スタートアップの見えない現実

「スキルが上がる、成長が速い」というよくある売り文句に覚悟を決めて4年前にスタートアップの門戸を叩いた。入ってみると確かに色々な分野の仕事を担当させてもらい、何だかスーパーマンになれそう。そんな気がしたことを覚えている。色々と自由度は高いし面倒な調整ごとも大企業にいた時と比べたら減ったし、「これを導入してみたい」といえば説得力さえあればすぐにトライアルすることもできた。こうしたフットワークの軽さはスタートアップ企業ならではだと思った。

一方で逆の意味で「ならでは」ということも感じるようになってきた。

1. 「自分の成長」に精一杯なメンバーが多く、会社からもそれを求められるので、あまり会社や業界といった大きな視座で捉えるような仕組みが整っていない。また生き残ることに必死なため、業界への影響力を持つような仕事は難しい。

2. 持っているサービス数が少ないため、根本的な改善案件や新規事業でもない限り慣れてしまえばオペレーションを回す日々になる

自分は入社面接で話があったこともあり「新規事業」に期待していた面もあったのだが、基本的に人員不足なスタートアップで新規事業で一発当てるだけのリソースを会社として中々割くこともできず、結局退職するまでに新規事業に携わることはなかった。

スタートアップの良さは「フットワーク軽く新しいことを試せること」だと思っていて、それ自体はその通りではあったのだが、スケールの大きなことはむしろ資金力のある企業での方がやりやすい、ということがスタートアップで得た学びの一つになった。

また、常に人員不足なので、スキルについても「何でも屋」になりがちな傾向がある。それ自体は悪くはないのだが、「専門性を深めたい」とか「この分野で飯を食っていきたい」という思いが生まれてからは、やりたい業務とのミスマッチが次第に大きくなっていった。エンジニアという職業柄、分野での専門性を深めた方が単価は高くなりやすいのだが、それを求めるにはスタートアップは向いていない、というのが、二つ目の学びだった。

転職活動

結局自分がどうしたいかを考えたときに、自分が深く携わっていきたい分野が所属していたスタートアップ企業ではできなさそう、またある程度サービスを持っていて、新規サービスの立ち上げが仕組み化されているところに行きたいと思い始めた。

そんなこんなで、転職活動を始めた。同じような規模の他スタートアップに行ったとしても同じ結果になることは目に見えるので受けなかった。この時点で「今の自分にはスタートアップは向いてないな」と思ったのだ。なのである程度規模の大きなところを受け、某東証一部上場メガベンチャーから内定をもらい、そこに行くことにした。

サービスが大小合わせるとかなりの数あり、多くのサービスの面倒を横串で見れるというのが決め手になった。

スタートアップ企業を検討するときに

自分が不確実性を楽しめる人か吟味する

スタートアップ企業は当然、ヒトモノカネ全てにおいて常に不足している状態にいる。次の日に何が起こるか誰にもわからない。自分の立てた半期の目標が全て次の日に覆るかもしれない。業績が下がれば賞与だってない。この人にしかこの部分の仕様がわからない状況なのに辞められたら。こんなカオスな状況を自分は楽しめたので3年半も在籍していたのだが、そもそもこの状態が苦手だと最初からつまずくことになってしまう。この点は考えた方がいい。

働く上でのプライオリティを整理する

給料は基本的に下がると思っておいた方がいい。賞与も出て1ヶ月2ヶ月分。この状況は稼ぐ力がまだまだ乏しいスタートアップ企業ではむしろ当然で、働くプライオリティ最上位がお金な人だと、結構苦しいと思う。常に大型連休の海外旅行を楽しみに働いている人なんかは向いていない。自分で会社をどう大きくするかを一番に考えられる人は逆に適正あると思う。

身につけたいスキルを整理する

「何でも屋」を目指したいのか「専門的な人」を目指したいのか整理する。スタートアップ企業は人員不足なので何でも屋になりがちな傾向がある。「この分野をやりたい」というのは目標設定の希望には書けるのだが、それとは関係ないことも少なくない割合でやる必要はあるし、途中で別のことを対応する必要が出てしまって目標自体が書き変わることもあった。このことをプラスに捉えられるかどうか、自分がやりたいこと、なりたい姿を整理しておかないと業務ミスマッチになってしまう可能性がある。

ざっと思いつく限りでこの辺りはきちんと整理しておくべきな気がする。

速い成長とは

「成長したいならスタートアップ」という言葉は、逆は成り立つかもしれないがこの言葉自体を修正するのならば「成長したいならスタートアップとは限らない」。そもそも、成長とは。新規事業をやりたいのであれば、資金力がある企業ではなくなぜスタートアップなのか。その仕事を通じて得るものが本当に得たいものなのか。資金力がある企業での成長とスタートアップで得られる成長は何が違うのか。「速い成長」は、その時々のポジションや状況によって変化するものなので、スタートアップに行くべきタイミング、そうではないタイミングがあることを理解しておくと自分のなりたい姿に向けて軌道に乗ってくると思う。

まとめ

今回のnoteで、自分はスタートアップを悪くいうつもりはなく、大企業を持ち上げるつもりもない。スタートアップは素晴らしい環境だし、そうでなければ3年半在籍していない。組織を引っ張るポジションになったりしたら見方も変わっていると思う。その時は「大企業に向いていないと思った時のこと」とかいう題材で書いているかもしれない。

そんなこんなで長くなりましたが、ではまた。

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