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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.30「ホテルローヤル」

「良い人生って、どんな人生だろう」
何が起こるか分からないけれど、何かが起こるのが人生だ。何も起こらないことなどあり得ない。あとはその何かというのが、人による大小の違いがあるだけだ。波乱万丈の人生を面白い人生と呼ぶかどうか。特に起伏のない人生を健やかな人生と呼ぶかどうか。そもそも、人生は人が生きると書くのだから、生きているだけでいいのかもねと、そんなことを考えていたらこの本を紹介された。

2010~2012年に書かれた6本の短編小説に、書下ろしを加え単行本化。北国のラブホテル「ホテルローヤル」にまつわるそれぞれの物語に加筆された第149回直木賞作品。

挫折、負け犬、希望、夢_。
会話に挟み込まれる単語はそれまで美幸が思い描いていた未来_普通の一生を送ることができれば御の字という_の細い芯を揺さぶった。ドラマチックなひとときを持つ男のそばにいるだけで、自分も彼のドラマの一部になれる気がした。
-シャッターチャンス より-

元アイスホッケーの選手で、怪我のためリンクをさった貴史が新たに情熱の対象としたのがヌード写真家。顔を隠すことを条件にモデルを頼まれた恋人の美幸が、撮影中の彼を見ながら感じた心情の一節。

誰かの夢を応援するときに、その人の夢に自分の想いを乗せることを「仮託(かたく)する」というらしい。そう考えると、僕らはみな「夢を仮託し合って生きている」と言えるのかもしれない。例えば、プロ野球選手になるのが夢だという人もいれば、球場のビールの売り子になるのが夢だという人もいるし、プロ野球選手の奥さんになるのが夢だという人もいれば、パーソナルトレーナーになるのが夢だという人もいる。それぞれの人がそれぞれの人の夢を仮託し合う世界。もしも自分とは交わらないであろう夢を持っている人も、めぐりめぐってどこかで自分の夢と仮託し合っていると考えたら、素直に誰かの夢を応援し合える気がした。

良い人生とは、夢を仮託し合える人生なのかもしれない。自分の夢も、誰かの夢も、きっと叶うと信じて、心から応援し合える人生。そんな人生を歩んでいきたいと思った。

いつかあなたの夢もきっと叶いますように。

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