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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.24「新しい靴を買わなくちゃ」

「靴って、究極的には1足あれば良いものだよね?」
だって、歩くときに怪我をしないためのものなら、歩きやすい1足あれば充分じゃん。それをいつからか、「走る用」とか「お出かけ用」とか「晴れの日用」とか、より「使い勝手」を考えて、増やしていっただけでしょ。人間って、そうやって「あれば嬉しいけど、本当はなくても困らないもの」をどんどん増やしていったんだよね。だから、世界一貧しいと呼ばれたムカヒ大統領が嘆いてたんだよねって、そんな話を友人にしたら、この本を紹介された。

妹とパリを旅するはずが、到着早々置き去りにされ、茫然と立ちすくむ主人公のセン。そこに偶然通りがかったパリ在住の日本人女性・アオイは、センが落としたパスポートで足を滑らせて転んでしまう。ヒールを追ってしまったアオイと、パスポートを破損してしまったセン。そこから始まる、おとぎ話のような3日間。月9ドラマの女王、北川悦吏子作品を小説で読んだのは、何を隠そうこれが初めてで、なるほどこれが僕らの青春を彩った北川マジックかと、唸りながら、そして声を上げながら、気づけば一気に読破してしまった。

フランスで飲むワインはほんとうにおいしいのだと、旅立つ前にさんざん事務所のスタッフから奨められてきたが、いま飲んでいるワインはほんとうにおいしかった。
でも、とセンは思うのだ。特別な人と飲むワインは、ワインの実力以上に気持ちのほうが勝手においしく感じてしまうんじゃないだろうか。

「ワインのおいしさ」は、舌ではなく脳で味わうのだと、あるワイン通の友人から聞いたことがある。そのときは、「○○産」とか「○○万円」とか「限定〇〇本」とか、どちらかというと「希少価値」について「脳で味わう」ことを推奨していたように感じた。しかし、我らが北川先生はやはり言うことが違う。特別な「人」と飲むワインこそ、ワインの価値を高めてくれるのだと。そしてもしかすると、ワインだけではなく、食事全般、ひいては、仕事や趣味、もっと言えば人生そのものすら、特別な「人」とすることこそ、それを味わい深いものにしてくれるのではないかと、そんなことを思った。

「何を飲むか」よりも「誰と飲むか」。
「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」。
「何をして過ごすか」よりも「誰と過ごすか」。
僕たちの人生を豊かにしてくれるのは、きっと「もの」ではなく「人」なのだろう。こうやって書くと当たり前なんだけれど、でもなぜか忙しい毎日の中では笑えるくらいに簡単に忘れてしまう。けれど、そのたびに、こうして思い出させてくれる人がいる。もしかすると、それが自分にとって「特別な人」なのかもしれない。

今日もそんな友人と、この感想文を最後まで読んで下さったあなたに感謝して、筆をおきたいと思います(パソコンやけど)。

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