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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.40「虹の岬の喫茶店」

「いつかカフェをやってみたいな」
なんとなくぼんやりと思ったことがある。田舎町のはずれにひっそりとたたずむカフェ。ゆったりとした時間の流れの中で、コーヒーの香りを漂わせながら、本と音楽に包まれて、ふらっと訪れる客の心を癒す空間。いつかそんな場所が作れたらいいなと、そんな話を友人にしたらこの本を紹介された。

 小さな岬の先端にある喫茶店。そこでは美味しいコーヒーとともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人々。彼らの人生は、その店との出会いと女主人の言葉で、大きく変化し始める。四季折々に訪れる一つ一つの物語がどれも素敵で、もしかしたらどこかにこんなカフェがあるかもなと、カフェ巡りをしたい気分になった。

今回の引用は、そんな岬カフェに泥棒として入ったけれど、思いとどまった男に向けて伝えた、女主人の名言。

本当のことを言うとね。私も、祈ってたの。せっかく覚悟を決めて泥棒に入ったのに、ついついあの絵に魅入っちゃうような人が、決して悪い人じゃありませんようにって。
わたしね、大好きな言葉があるの。間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない。インドの民族運動の指導者だったガンディーの言葉なんだって。
今夜のあなたにも、間違いを犯す自由があったはずよ。次から間違えなければ、今夜の経験はきっと無駄にはならないわ。

この言葉に、男はどれだけ救われただろう。それを思うと、僕も胸が熱くなった。

人間は間違いを犯す。むしろそれが人間だ。ロボットは間違わない。だから、人間味というのは「間違うこと」なのかもしれないと思った。間違いを犯す自由が人には与えられていて、それを赦す自由、あるいは赦される自由も与えられていて、間違って、赦されて、また間違って、赦されて、そうやって僕たちは成長していく生き物で、そのプロセス自体を「生きる」と呼ぶのかもしれない。

もう一つ。自分が間違ったことがないと、人を赦すことは出来ないのかもしれないと思った。自分が味わったことのない痛みは、本当の意味で共感することができないように、自分が間違ったことがない人間に、間違う人間の痛みは分からないのかもしれない。そう考えると、この女主人もたくさん間違ってきたのだろうし、人を赦せる人というのは、たくさん間違ってきたことのある人なのだろう。

僕はこれまでたくさん間違ってきたし、これからもきっとたくさん間違うこともあると思う。けれどその分、たくさんの人を赦せる人になれるのなら、むしろ自信をもって間違っていけそうな気がした。

その際はどうか寛容な心で赦してくださいと、僕の大切な友人たちに捧げます。

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