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3歳牡馬 M3血統分析   ~スマートウォッチのストレス測定は、異常な正確さだった?~

 久々の更新になる今回は、皐月賞、青葉賞が終わったので、ダービーに向けて3歳牡馬中長距離路線の「M3  血統タイプ分析」を、全15頭分、詳しくやりたいと思う。このブログの血統分析だから、もちろん、直ぐそのまま使える実用的な話になる。
 3歳牡馬GⅠ戦線は、朝日杯FSの3番人ドウデュース、ホープフルSの2番人気キラーアビリティ、皐月賞の5番人気ジオグリフと、全て私の本命が勝って馬単を当てている。そして先日の青葉賞も的中して、かなり手の内に入れている馬達でもあり、分析も鋭さを増している?はずなので、乞うご期待!
 また、今回もMの面白さと怖さを同時に体感できる実践編として、皐月賞当日のドキュメントも最後に収録してある。

 

4月17日のとある数値のグラフ。この日は一体何があった日?

 

スマートウォッチで、体調と予想精度を整えろ!

 
 その3歳馬血統分析の前に、上の棒グラフをちょっと見て頂きたい。
 15時43分のところで、赤い棒が突然飛び抜けている。
 これは一体、何のグラフなのだろうか?
 
 最近、私はスマートウォッチを装着して、日々を過ごしている。かなりの健康オタクなので、随分安くなってきたのを知ってお試しで買ってしまった、あの噂のHUAWEI製だ。
 腕時計をするのは、もの凄く久しぶり。確か最後の腕時計は、チンチロでピンぞろを出されて、机に腕を叩きつけたときに壊してしまったはず(もう忘れかけていたが、若い頃はそれなりに血気盛んだったのだ)。それ以来、何十年ぶりかの腕時計で、着けてみると腕が少しむず痒く感じた。
 それにしても1万円以下のスマートウォッチなのに、心拍数、血中酸素、睡眠状態なども管理できるのだから、凄い時代になったものである。
 その中にストレス値という項目があるのだが、「こんなの信頼できるのかなぁ」というのが最初の感想で、あまり見ることもなく過ごしていた。
 そんなある日曜日の午後。
「えっ?」
 スマートウォッチのストレス値にたまたま目をやって、思わず二度見してしまった。
 午後3時のところで、棒グラフが赤く飛び出しているのだ。
 そう!JRAのメインレースの時間ではないか。
 慌てて、前日の土曜も見てみると、やはり赤く飛び出していた。
「・・・これは、もの凄く正確な測定値だぞ!」
 びっくりして早速記録を調べてみると、毎週日曜の午後、グラフは異常な正確さで、決まって高く飛び抜けている。
 競馬をしている人間でないと、ストレス値なんて、如何にも怪しいものが実は正確だったことに、こうもはっきりとは気付かないに違いない。
 面白いことに多少のブレはあるが、GⅠ週であるとか、重賞の有無とかに関係なく、だいたい赤くなっている。どうやら、レースのレベルに関係なく、似たようなストレスを開催日の午後には受けるらしい。
 レースを走るサラブレッドと同じように、いやひょっとすると私のストレスの方が高かったという、Mの法則的にはなんとも言えないオチである。よくもまぁ毎週、こんな状態で何十年もやってきたなと驚いたが、同時に少し嬉しくもあった。
 あまり得意でない相手と話したり、空売りしてた銘柄が朝起きたらストップ高に張り付いてたり、締め切り当日の夜10時になっていたり、ひょんなことで家でヘビを掴んだり、山崎康が9回に打たれたり、それとちょっとここでは話せないような切羽詰まったトラブルがあったときでも、記録を調べてみると、一度も赤いところまでグラフが伸びた形跡はなかった。
 案外、いつも私は、平常心らしい。
 それなのに、開催日の午後には、きちんと正確に赤くなるのだ。
 それだけ競馬に集中し、全生命エネルギーを注いでいるのだろう。このグラフの伸びの分だけ、命を何年か分、削っているような気もするが、毎週これだけの緊張と興奮、スリルを味わえるイベントが、他になにかあるだろうか?
 ちょっと、私には思いつかない。
 実際、過去の測定値を見る限り、そういった経験は、どうやらないらしい。
 脳がヒリヒリするほど集中して思考をめぐらせ予想するだけの価値が、やはり競馬にはあることを、この数値は証明している(医者に見せたら、「明日からもう、競馬は辞めなさい」と言われるのかもしれないけれど・・・)。

 そこで、冒頭の棒グラフだ。
 飛び抜けた指数は、15時43分に記録した「90」。これは、スマートウォッチを装着して以来、最大値になる。
 4月17日の午後、私のストレスと興奮は最高潮に達し、寿命をまた一気に縮めてしまったのだ。しかも、夜の8時くらいまでオレンジ状態が継続し、ストレス値はなかなか収まろうとしない。
 一体、どれほど恐ろしいことが、この日に起きたのだろう・・・?


全15頭収録!  M3血統分析・3歳牡馬編


 ストレス値の続き、ドキュメント編に入る前に、今回のメイン、最新の3歳牡馬の詳しいM3タイプと、オプション表を掲載したので見て頂きたい(各項目の詳細は、用語集参照のこと)。
 CSLのタイプ表記は馬の性格を表し(敢えて細かく分析過程を紹介する目的で、例えばCLで済むタイプでも、CL(S)など、存在要素を出来るだけ載せている)、「オプション」はその馬が激走しやすいタイミングを表したものになる。

S(LC) ジオグリフ
 体力とパワーが豊富。揉まれ弱いほどではないが、不器用なのでブレーキを掛けず強引に加速する形が理想でごちゃつくと嫌がる。そのため、外から一気に捲るような競馬の適性が高い
 オプション(延・開・外・重) 距離(18・22・20) 状態(不安定

LC(SC) イクイノックス
 量とパワーが豊富で体力もある。スムーズな競馬が理想で精神的には安定しているので、延長や広いコースの方が競馬はしやすい。緩い流れの高速上がりや重馬場など、特殊馬場がベスト
 オプション(延・開・特・巻) 距離(20・18・22)  状態(平行

SC(LC) ドウデュース
 馬群に入れてしぶとさを活かすのがベストで、上がり勝負も対応するが、タフな展開での混戦の方が良い。前走よりペースアップすると集中しやすいので短縮適性が高い。ショックを好むので、延長もタフな流れや内枠だと対応する
 オプション(短・延・重・開) 距離(20・18・22)  状態(平行

CS(L) ダノンベルーガ
 ドウデュースよりややCが強めのハーツクライ産駒で、精神コントロールはこちらの方が難しい。位置取りショックや特殊馬場で集中させたい。相手強化の混戦に向くが、使い込まれると弱い相手にあっさりと投げ出すことも
 オプション(開・重・延・短) 距離(20・22・24) 状態(不安定

LC(S) アスクビクターモア
 パワーが豊富だが、ディープインパクト産駒にしては量が少ない。速すぎない流れで、上がりの少し掛かる前残り競馬がベスト。出入りの激しい競馬だと嫌がる
 オプション(外・延・重・開) 距離(20・18・16) 状態(不安定

LC(S) キラーアビリティ
 ディープインパクト産駒にしては掛かりやすいので、小回りベターで、広いコースなら壁を作る方が競馬はしやすい。体力とパワーは豊富で、淀みなく流れる延長が向く。消耗しやすいタイプで、入れ込んでの馬体減りに注意
 オプション(延・中・開・重) 距離(20・22・18)  状態(平行

S(LC) デシエルト
 回りに馬がいるとエキサイトしやすく、単騎逃げか、逃げないのなら縦長の展開になって欲しいタイプ。上がりの掛かる前残り馬場向きも、あまりダッシュ力はないので、前半の入りが遅く、その後ラップを落とさず逃げられる展開がベスト
 オプション(重・開・延・巻) 距離(20・22・D18)  状態(不安定

LC(S) ジャスティンロック
 リオンディーズ産駒は、量が豊富で体力もあるのが基本で、同馬はその性質が強く、その分揉まれると嫌がる。広いコースで単調な外差し競馬がベストだが、少頭数やばらける馬場で、外捲りの利く展開なら小回りも合う。ブレーキを掛けたり、タイトな位置に入ると嫌がって投げ出す
 オプション(延・外・坂・開) 距離(20・22・18)  状態(不安定

CL(S) オニャンコポン
 馬群に入って前に目標を置くと集中して走れるタイプで、内~中目での混戦がベスト。特にペースアップで差しに回る位置取りショックが合う。混戦になれば相手なりにしぶといが、単調な流れで集中出来ないとあっさり凡走する
 オプション(巻・多・短・内) 距離(20・18・22)  状態(不安定

LC(SC) プラダリア
 量と体力のあるディープインパクト牡馬でまとまっている。かなりタイトなレースにならなければ大崩れしにくいタイプで、コントロールしやすく、延長に向き、鮮度時なら馬群も割れる。湿った馬場などで、適度に上がりが掛かると理想
 オプション(重・延・開・中) 距離(24・25・22)  状態(平行

S(LC) ロードレゼル
 かなりパワー寄りのディープインパクト産駒で、上がりの掛かる前残り競馬が向くので、平均やや速めの流れが合う。先行馬だがジリジリ伸びるので、広いコースで縦長の展開がベスト
 オプション(重・延・坂・開) 距離(22・24・25)  状態(平行

SC(LC) セリフォス
 まとまった中でS質が強いのはダイワメジャー産駒の基本だが、量も豊富。その為、平均した流れで速い上がりの差し競馬がベスト。フレッシュだと馬群を割れるが、使い込むと硬くなりやすいので、間隔取りながら使いたい。生涯鮮度がなくなると裏の量的な部分が表に出て淡白になりやすい
 オプション(内・短・重) 距離(16・14・18)  状態(平行

S(LC) ピースオブエイト
 パワーがあって、適度に上がりが掛かる前残り競馬がベスト。先行馬だが、ダッシュ力や器用さに欠くので、広めの馬場が理想で延長が合う。道悪適性は高い
 オプション(延・重・開・交) 距離(18・20・22) 状態(平行

CL(S) マテンロウレオ
 馬群に入れると集中力を発揮するC系。ダッシュ力がないので、前走よりペースアップし過ぎると馬群に取り付けないので集中出来ない。内目の枠で、前半緩くて、徐々にペースアップして最終的に消耗戦になる「ハーツクライラップ」が理想
 オプション(内・重・多・延) 距離(20・22・18) 状態(不安定

LC(S) アライバル
 揉まれず、自分の競馬をして強い、基本的なハービンジャー牡馬。広いコースの外差し競馬がベスト。先行するなら、ダッシュ力は無いので、前半緩い流れで被されない形が合う。荒れてばらける馬場だと馬群の中でも多少対応出来るので、雨が降ると走りやすい
 オプション(開・重・外・巻) 距離(18・16・20) 状態(不安定

 

オプションの使い方 ~ジオグリフを例に~


 ここで少し、オプションの具体的使い方を、皐月賞馬ジオグリフを例に見てみよう。
 ジオグリフの共同通信杯終了後のオプション(オープンで5着以内に入った馬は、「競馬GP」などのサイトで、最新版のオプションが掲載される)は、「延」、「開」、「外」、「重」だった。
「延」は、前走からの距離延長を意味し、今回は1800mからの延長なのでオプション「延」に当てはまる。
「開」は、レース間隔を開けると良いことを意味し、共同通信杯から中8週はピッタリだ。
「外」は、外枠を意味し、今回の7枠14番もちょうど良い。
「重」は、道悪を意味し、今回は良発表だったが、昼間まで稍重で、かなり重いコンディションで道悪に近かった。
 つまり、Mのオプション4つ全てを揃えてきたのが、皐月賞のジオグリフだったのだ。
 このように単純にオプションを満たせば満たすほど激走確率は上がる。
 さらにこのオプションは、状況に合わせて少し適応範囲や意味を修正すると、より破壊的になる
 例えばオプション「外」の場合なら、だいたい揉まれ弱い馬に付くので、仮に内枠でも少頭数や楽に先行出来そうなメンバーだったりとか、揉まれにくい条件が揃えば、悪くないと判断出来る。
「短」が付く馬なら、一般に前走よりペースアップするレースで強いので(そうでないタイプもいるが、例外については、Mを知るうちに自然に身についていくと思う)、仮に今回は同距離でも、前走スローで今回がハイペースなら、短縮に近い意味合いになるため、激走しやすくなるといった具合である。


 

改修工事中のスタンド

 

ドキュメント・4月17日(皐月賞当日)


「ふー」
 思わず、息を吐いた。
 固唾をのんで見守った皐月賞のスタート。ジオグリフは出遅れず、私が好走ポイントとして予想で解説しておいた、「中団差しに回る位置取りショック」を敢行している。
 これでようやく、ここ数十分の、永遠と思えた悪夢は終わりを迎えるに違いない。

 皐月賞当日。
 この日の予想は、メインに面白いレースを揃えていた。福島民放杯、アンタレスS、皐月賞の3レースだ。
 共に多頭数の混戦で、それぞれに少しずつ違った手応えがある。
 福島民放杯は、9番人気のプレシャスブルー本命で、対抗5番人気アンティペイト。アンタレスSは12番人気プリティーチャンス本命で、対抗2番人気オメガパフューム。皐月賞は5番人気ジオグリフ本命で、対抗1番人気ドウデュース。
 どの本命も人気薄で破壊力抜群だが、特に勝負レースに抜擢した福島民放杯と皐月賞は楽しみだ。アンタレスSのプリティーチャンスに関しては、単勝61倍につられた面も否定できないが、やはりそれなりの手応えはある。

 

小回りハイペースで万馬券を1点目で狙い定める方法

 まず3本の矢の第一弾、福島民放杯。
 私はこのレース、9番人気プレシャスブルーか、5番人気アンティシペイト、どちらを本命にするかで相当悩んだ。

プレシャスブルー(Lの強いまとまり系)の近4走

 雨が激しく、土曜の馬場はかなり掘れていた。あの状態だと、日曜も馬場は荒れたままだろう。
 問題は、どこまで乾くかだ。アンティシペイトは荒れ馬場は上手いが、道悪は得意でもない。プレシャスブルーは荒れ馬場に加え、道悪も上手いので、湿った馬場が残ればより有利になる。
 ただ、当日の乾き具合は神のみぞ知るで、あれこれ悩んでも仕方なく、一端脇に置く。
 もう一つ、実は2頭で悩む、重要なポイントがあった。
 それは、アンティシペイトの「位置取り」である。
 勝負レースに福島民放杯を選んだ理由の一つに、先行馬が多くてハイペース濃厚な点があった。福島なのでハイペースでも先行馬が残る可能性も高いが、土曜を見れば、ハイペースなら少なくともステップの良い差し馬なら、つまりM的にストレスのない差し馬ならば、必ず伸びてくる馬場だ。
 そういう意味で、プレシャスブルーの臨戦過程は絶好である。前走11着惨敗で、今回は休み明け。そして200mの短縮。
「惨敗」、「短縮」とフレッシュな条件を重ね、ストレスからは全くのフリー。しかも小回り向きの追い込み馬で、「鮮度要求率」(用語集参照)の高いディープインパクト産駒の「休み明け」でもある。そのどれをとっても、確実に上位に追い込んでくるシチュエーションが揃った。それで9番人気なのだから、買わない手は全くない。
 安パイといっても過言ではないだろう。
 では、アンティシペイトはどうか?
 

アンティシペイト(L系)の近8走

 同馬は前走2番手で競馬をして、過去に4度逃げて連対したことのある先行馬だ。
「どうする?」
 思わず、緊張で唇を噛んだ。
 実はこの臨戦過程、Mでは、ある決まった競馬さえすれば、今回は勝つ可能性の極めて高い馬だと、あらかじめ分析出来る。そして、それ以外の競馬を選択すれば、かなりの確率で惨敗することも分かるのだ。
 同馬は以前、今回と同じ短縮2000mだったオホーツクSで差して勝っている。差すことも出来る馬だ。今回、差しに回れば、オホーツクSと全く同じ臨戦過程で、かなりの確率で勝つ。
 競馬は、同じ位置取りで同じような実力の馬だと、「位置取りショック(用語集参照)」をした馬の方が、鮮度とリズムを内包する分、有利なスポーツになる。つまり、いつも追い込んでいるプレシャスブルーより、アンティシペイトの方が、同じ位置からの差し脚くらべのレースになれば、今回に関しては圧倒的に有利になるのだ(特に、S質の強いハイペース差し競馬の場合は、位置取りショックが重要になる)
 ただ、問題もあった。
 アンティシペイトはM3タイプ分析では、L系(用語集参照)と呼ばれるルーラーシップ産駒だ。L系は、量や体力が豊富だが、揉まれ弱い。
 同馬が過去連対した9レース中7レースが2番手以内。つまり、揉まれずスムーズに先行したときだ。
 他には3番手と9番手が1回ずつで、その3番手も広い東京2400mで11頭立ての外枠と、揉まれる要素のほとんどないレースだった。
 今回は前走東京3400mのスローを2番手先行から、一気に1400mも短縮で、しかも小回りの福島だ。流れが前走より相当激化するのは、間違いない。ということは、いつもの先行策を取ろうとすると、出入りの激しい争いに巻き込まれ、揉まれて嫌がって投げ出す。だから仮に完全な前残り競馬になってさえも、この馬だけは100%、先行したら直線で垂れる。
 では、差しの位置取りショックをしてきた場合は、どうか?
 徹底先行型の同馬が、生涯唯一、好位から連対したのが、さっき見たオホーツクSだ。つまり、短縮2000mで、今回と全く同じシチュエーションである。
 そうであるならば、今回も同じように差しに回ったら有利に思えるかもしれないが、必ずしもそうではない(そうであるなら、どれだけ簡単なことか!)。
 私には確信があった。
「この札幌2000mのレース、中枠から差して勝ってるけど、恐らくずっと外を回ったはず・・・」
 もし、そうでなければ、つまり中枠から枠なりに馬群を突き抜けて勝っていれば、ここは鉄板になる。
 今回は、急なペースアップで無理に先行しようとしても、スピードの違いで自然に好位になる確率が高い。そうなれば、札幌のときと全く同じ、「差しの位置取りショック」が掛かって、激走する。
 揉まれ弱い馬でも、短縮や凡走後など、鮮度が高いと一時的に馬群を割れるタイプもそれなりにいるのだ。
「でも、違うはず」
 私の予感が外れてくれれば、アンティシペイト本命で、確実に当てられるのだが・・・。
 僅かな期待を持って、オホーツクSのVTRを再生した。
 やはり、残念ではあるが、予感は的中した。15頭立ての中枠だったが、上手く道中は外に出していたのだ。典型的なL系向きの、全く揉まれない競馬だ。
 今回16頭立ての9番枠なので、普通に差しに回ったら、馬群のまっただ中になる。短縮ハイペースで馬群に入ったら、初めての激しい流れで揉まれる経験、しかもそれが東京から福島への1000mを超える大幅距離短縮のために、馬群で苦しがり、投げ出す可能性の方が、遥かに高い。
 つまり、今回激走するには、差しに回って、かつ意識的に大外に出さないといけないのだ。そうしないとほぼ凡走する。
 しかし、差しに回って、かつ揉まれない位置を取れば、確実にプレシャスブルーに先着し、そして恐らくここは勝つだろう。
 ・・・どうする?
 プレシャスブルーは、好走確率の極めて高い人気薄だが、位置取りショックがないぶん、破壊力に欠く。
 単勝ならアンティシペイト。馬連、3連複、ワイドならプレシャスブルーだろう。
 ただ、予想ではどちらかを本命にしないといけない。
 私は、プレシャスブルーを本命にした。対抗アンティシペイトだ。
 プレシャスブルーは9番人気にも関わらず、激走確率が極めて高い。しかも騎手が位置取りショックを掛けて、かつ外に出さない限り凡走する5番人気アンティシペイトよりも、人気がないのだ。それと、もし馬場が乾かなかったときの道悪適性が、2頭ではプレシャスブルーの方がかなり高い。仮に滑るような馬場が残れば、間違いなく先着する。

 確かにそれらは全てもっともらしい説明であり、実際、100%真実でもあった。
 だが、理由は何であれ、私はこのレースでリスクを取ろうとはしなかったのだ
 予想のコメントには、
 プレシャスブルーは、「重い荒れ馬場で外目に出して捲る競馬ならベスト」とし、アンティペイトは、「湿った馬場?も、差しに回って外に出して揉まれなければベスト」と、端的に書いておいた。
 そして当日。
 いきなり福島は朝から良発表だ。道悪だったのは何故か福島より雨量の少ない中山の方。皐月賞に向けては朗報だが、福島民放杯に向けては、嫌な材料だ。
「あの雨で朝から乾くのか・・・」

 ここで少し、何故プレシャスブルーに、「重い荒れ馬場で」とコメントしたのかについて、解説しておこう。
 さらに細かいレース前の解説では、「土曜の湿った荒れ馬場で、追い込みも間に合う競馬なら得意で。一旦下げて外から捲って行けば」、とも解説していた。
 ここには、プレシャスブルーの道悪適性が高いことに加えて、「活性化(用語集参照)」の問題がある。同馬は、近走で常に追い込んでいるので、活性化が弱い。活性化が弱いと、ハイペースの福島のような忙しい条件(S質な条件)だと、間に合わないリスクが高くなるのが、Mの基本になる(だからこそ、S質な差し馬場では位置取りショックが重要になる)。
 だが、馬場が重くなった場合は、活性化が弱くても間に合う確率が高くなる。そのため、湿った馬場が残る方が良いのだ。
 つまり、当日の朝から既に良馬場になったのは、活性化面でマイナス材料になる。
 ただそれでも、時計の掛かる荒れた馬場には違いなかったので、多少活性化がネックでも、勝てるかまでは分からないが、プレシャスブルーが好走することには自信があった。問題は、馬場が回復したのが、前走先行して活性化されているライバル、アンティシペイトに有利な点だ。
 アンティシペイトが私の解説したように乗るのかどうか?が、当日の馬場状態から、焦点のほぼ全てになったといって良いだろう。

 

出航した3隻

福島民放杯、発走 ~武藤は理解していたのか?~ 

 スタートが切られた。
 思った通り、プレシャスブルーはいつもの最後方だ。良馬場なので、ここから勝ちきれるかは分からないが、崩れることもないだろう。
 アンティシペイトは前半ついていけない感じで下がっていく。これで、「自然に差しに回る位置取りショック」の完成だ。アンティシペイトの最初の関門は、見事にクリアされた。
「あ、しまった。縦長か・・・
 冷や汗が出る。福島で縦長ということは、相当ペースが速い(加えて、縦長だと揉まれにくくなる)。ハイペース想定ではあったが、私の想定以上に、これは極端に速いラップのはず。速すぎると、よりS質が要求されるので、いつも追い込んでいる活性化の弱いプレシャスブルーが間に合う確率は下がる。予想の解説で書いたような、今回最も効果的な「捲る競馬」をしようにも、このペースだと追走に一杯になるので、自力で早い段階から捲って動くのは難しい。いつも追い込んでいる馬が、小回りで捲るには、ペースが速すぎるのだ。今の馬場だと、勝ち切るには、捲るのが一番なのだが・・・。
 そのときだ。
 アンティシペイトが動き始めた!
 外からだ。外から強引に捲り始めたのである。
「ああ。全くもって、完璧じゃないか」
 前半下げて、外から捲り気味に動く。揉まれたくないがパワー豊富なタイプの短縮馬が取るべき、M的に最も効果的な競馬だ。これなら、全く揉まれず、短縮+位置取りショックで与えられたパワーだけを、思う存分、直線で満喫出来る。
 結果は、アンティシペイト1着。プレシャスブルーは追い込むも、大捲り馬2頭には届かず、3着に終わった。
 2頭のワイドでも22倍ついたので、馬券的には美味しかったが、2着に「馬場乾いての差し競馬なら理想で」と解説した人気のシュヴァリエローズに良馬場で割って入られて、高配当の馬連1点目的中は阻まれてしまった。
 馬場が乾いて、揉まれない形で差しに回ればアンティシペイトが勝ち、湿った馬場が残って捲り気味に動けばプレシャスブルーが勝つ。だが、馬場が乾いて捲りきれないと、プレシャスブルーは好走しても間に合わない。
 全て前日にシミュレーションし、予想でも書いた、あらかじめ分かっていたシナリオ通りの結末だ。
 しかし、結果はワイドだけが残った。
 馬場の乾き具合も、縦長になるかも、アンティシペイトが位置取りショックをして、かつ武藤が外に出すかどうかも、前日には神様でなければ分からない。
 自分でコントロール出来ないことは、諦めるのが得策だ。
 そう思おうとしたが、激しい動悸が襲ってくる。

位置取りショックという病

 アンティシペイトの武藤が、差しに回って、かつ外に出す選択をする可能性に、やはり賭けるべきだったのではないか・・・。
 それが、私が今なお、競馬を続けていることの、本来的な意味ではなかったろうか?例えば、30年前の私だったら、どうしたのか?
 自然に差しに回らず強引に騎手が前に出していけば揉まれて惨敗。差しに回っても馬群に突っ込めば凡走する確率が高い。だが、差しに回って、かつ大外に出せば1着。
 Mを知らない予想だと、アンティシペイトが激走しても、「この条件が合うから」とか、「差しに回って展開に嵌まった」とかで、片付けてしまうだろう。
 だが、Mでは来るパターン、その位置取りも、ペース毎に事前に詳細な部分までだいたい分かる。
 これがMの恐ろしさ、そして「位置取りショックの恐ろしさ」だ(実際、Mの予想に触れている人間なら、大穴を開ける馬は、事前の指定通りに乗っていることがあまりに多いことを知っているだろう)。
 分かっていたからこそ差しに回っても馬群に突っ込むのが怖く、本命に出来なかった。その事実を知らなければ、簡単に本命にしていたろう。全てを知っているからこそ、怖いのだ。
 それはあたかも、予定調和の敗北である。
 位置取りショックのジレンマが、ここにある。
 位置取りショックという病は、かなり重く、そして底なしなのだ。
 恐らくこの時点で、スマートウォッチの棒グラフは、今までの日曜を上回るペースで、ぐんぐんと伸び始めていたに違いない。

 

アンタレスS 牝馬の歴史を12番人気が破れるのか?


 福島民放杯の10分後、本日二本目の矢、アンタレスSの発走時間だ。
 このレース、出馬表を見た瞬間に思わずニヤリとした。
 

バーテンヴァイラー(Lの強いドゥラメンテ産駒)の近3走


 前売りで1番人気のバーデンヴァイラー(当日は3番人気に落ちたが)が、まず危ない。前々回このブログでも解説した、揉まれ弱いドゥラメンテ牡馬が、スローを逃げて圧勝した直後だ。今回は先行馬が多く、前走より揉まれる可能性が高いので、危ない。
 逆にハイペースなら、前売りで3番人気だったオメガパフュームの体力が活きてくる。59キロだが、ペースが上がると斤量差は影響しにくくなるので、ハイペース前提なら手堅いカードだ。集中力も高く、休み明けでフレッシュなので、馬群に突っ込めば差し込んでくるだろう。
 しかし、このレースにはどうしても買いたい馬がいた。12番人気、単勝61倍のプリティーチャンスである。
 前走1.5秒差惨敗で、ストレスは皆無。右回りの坂コースが得意な差し馬で、阪神のハイペースはベストだ。中央重賞をまだ1回しか走っていないのも、カテゴリーストレス(用語集参照)面で有利。それで12番人気なのだから、かなりの勝負馬券だ。
 ただ、不安材料が一つだけあった。
 牝馬なのだ。この5年間で、牡牝混合の古馬ダート重賞で牝馬が連対したのは、18年平安Sのクイーンマンボしかいない。勝ち馬となると、15年のチャンピオンズCサンビスタまで遡る。その2頭とも交流重賞で連続連対中と、JRAではない鮮度と共に、圧倒的な勢いと安定感、実績があった。しかも急坂があって体力の要る中山、阪神の1800m以上の古馬重賞では、近年連対例はない(11年の稍重だったマーチSまで遡る)。さすがにダートの急坂長距離重賞ともなると、パワーの優位性が前面に出て、牝馬には不利なのだ。
 プリティーチャンスは、連続凡走後で、そもそも重賞連対経験すらない。データ的には、ほぼアウトの牝馬である。

プリティーチャンス(M系だが、別路線牝馬で一時的にC要素が強い状態)の近3走

 ただ、ここはハイペース激戦が濃厚なメンバーだ。激しい差し競馬になった場合、ストレスのない馬が圧倒的に有利。特に、激戦になれば馬群を割れる差し馬は、M的に有利になる。馬群の中に突っ込んでの差し争いなら、・・・なんとかなるか?
 激戦で馬群を突けば、近年のJRAのデータを12番人気の彼女が覆しても、なんらおかしくない。それだけのステップだ。
 私はMに賭けて、勝負に出ることにした。
◎12番人気プリティーチャンス、○2番人気オメガパフューム、▲1番人気グロリアムンディだ。

「・・・まずい」 
 レースは、先行馬が揃った割に、ペースがそれほど上がらない。
 上がりの掛かる差し競馬向きなので、プリティーチャンスに良い流れではない。ただ、外を回らずロス無く走っている。このままインを突けば、ストレスの薄さと、牝馬特有のしぶとさ、異端性、そして瞬発力がものを言う可能性も高くなるので、ペースが上がらなくても相殺出来るチャンスがある。
 しかし、直線は外に出してしまった。しかも密集の中で包まれてしまう・・・。
 勝ったのは、馬群に突っ込んでこじ開けてきた、対抗のオメガパフュームだった。2着グロリアムンディ。縦目、6点目で馬単的中だった。
 プリティーチャンスはスムーズさを欠いたぶん、僅か3着に間に合わず4着。騎手も、あれがなければ3着だったろうと後で話していたが、3連複200倍の1点目的中を、ぎりぎりで逃してしまった。
 ・・・この結果はあらかじめ分かっていたのか、それとも分かっていなかったのか。
「オメガパフュームでいけば確実だぞ」という、長い年月のうちに培っていた直感を振り切って、プリティーチャンスにした。その必然的な帰結がこれなのか、それとも単なる展開の綾、運の悪さだったのか。
 微妙である。

 福島民放杯で9番人気、アンタレスSで12番人気と、私の超人気薄の本命が、負けるとしたら考えられる、前日シミュレーションしたパターンに嵌まって僅差で競り負け、本命にするかギリギリまで悩んだ対抗が前日の好走するためにしたシミュレーション通りに騎手が乗って、鮮やかに勝つ光景が、僅か十数分のうちに、立て続けに目の前で展開された。
 呆然とした私は、ふとスマートウォッチに目を落とす。やはり、ストレスグラフは、もう赤く突き抜けていた
 

 

春、田んぼに
テントウ虫と水がやってきた


皐月賞 今、生きている馬を探し出せ!


 では、これから5分後の皐月賞はどうだ?
 また、本命の人気薄ジオグリフが展開の綾で連を外し、対抗の人気馬ドウデュースがあっさりと勝つのだろうか?
 いや、今度は全然違うぞ。
 これまでの2レースの本命と、ジオグリフでは、本質的な意味が違う。ジオグリフは生きて動いているのだ。
 福島民放杯と比べた場合、プレシャスブルーはドウデュースで、ジオグリフはアンティシペイトになる。
 どういうことか?
 ドウデュースはMの血統理論では、戦う意欲が強いハーツクライ産駒で、弥生賞から皐月賞という相手強化のステップはピッタリになる。3番人気の朝日杯のときにドウデュースを本命にしたのも、「OP特別からGⅠ」という、相手強化の混戦向きの性格を狙ったものだ。今回も、まず崩れないだろう。

ドウデュース(SとCの強いタイプ)の近4走

  だが、勝つとなるとどうか?
 2歳チャンピオン戦の朝日杯FSを勝って、王道トライアルの弥生賞も2着だ。裏路線のOP特別からの出走だった朝日杯のときと違って、ストレスがかなりきつい。
 またもう一つ、大きな問題があった。弥生賞の位置取りだ。
 馬群に入れてタフな競馬をさせて接戦の2着だったのだ。これは一見、本番に向けて良い作戦のように思われるかもしれないが、逆だ。
 この競馬では、ストレスが余計に溜まる。負けるなら先行して垂れるか、外を回して凡走する方が良い。前哨戦でタイトな経験をさせる必要はない。これだけタフなレースをした以上、心身ストレスはきつく残る。そのぶん、最後に脚が鈍る可能性は高い。
 ただ、これはドウデュースだから、マイナスになるのだというとこは、覚えておいて欲しい。例えば、前週の桜花賞に出走した、同じ鞍上のウォーターナビレラなら、話は180度違ってくる
 ウォーターナビレラは、シルバーテースト産駒だ。シルバーテーストは、ハーツクライと真逆の揉まれ弱いタイプ、MでいうL系になる。その馬が、デビューから阪神牝馬Sまで、揉まれることなく、毎回スムーズな競馬をして好走してきた。となると、本番の桜花賞で初めて揉まれる競馬になれば、ほぼ100%投げ出す。競馬は、「前走より気分良く走った馬が好走するスポーツ」だ。
 

ウォーターナビレラ(L系)の近4走


 そこで敢えて武豊は、チューリップ賞で馬群に突っ込んだのだ。先行していたら、チューリップ賞はほぼ確実に好走していたレースだが、始めて揉まれるレースをL系に敢えてさせたので、M的には当たり前の話だが、馬が辛く感じて凡走したのだ(先行馬が少ないレースなので、先行して揉まれないと思って本命にしたので、差しに回ったのは個人的にはショックだったが)。この揉まれた経験で、桜花賞は多少なら揉まれても前走より辛く感じないので好走する可能性が出てきたし、「前に行く位置取りショック」で本来の先行策に戻して、かつ単調なペースの揉まれない展開になれば、好走する。
 結局、桜花賞はスローを前に行く位置取りショックで、前走と一転して、全く揉まれなかったので、気分良く走って連対したのだ。
 それと同じことをドウデュースでも試みたわけだが、これは違った。ドウデュースは、スローのアイビーSを先行した後に、短縮で大幅相手強化のハイペースだったGⅠを差して勝った馬だ(実際、差しに回る位置取りショックを狙っての本命でもあった)。
 外目を回ってほとんど揉まれなかったにしても、急激な流れ激化の短縮+相手強化という、前走より遥かにタフな競馬を経験し、かつ結果も出しているので、もう馬群に入れるような、タフな経験は必要ない。
 しかもウォーターナビレラと違って、C要素が強いハーツクライ産駒なので、前走より揉まれても反応出来る。弥生賞で馬群に入れたのは、むしろ次走に向けて、ストレスを残すに過ぎない。
 そのストレスのぶん、今回は最後に脚が鈍る。ただ、総合力の高さ、タフなGⅠへの適性の高さ、相手強化向きの性格、それらを考慮したら、崩れる理由もない。
 相手がみんな走らなければ繰り上がりで1着もあるだろう。だが、相手が例えば適切な位置取りショックを仕掛けて来たら、その馬には勝てない。安パイではあるが、単勝は買えない馬だ。
 つまり、先ほどの福島民放杯におけるプレシャスブルーと、全く同じ意味合いの臨戦過程なのだ。しかし、私のここでの、判断は違った。
 福島民放杯でアンティシペイトが位置取りショックをする可能性に賭けず、安全策でプレシャスブルーを選択したのと違って、皐月賞ではドウデュースを選択しなかった。
 ドウデュースは条件が揃っているのでほぼ確実に好走するが、Mの決め手がもがれている。
 その状況は両者同じだが、プレシャスブルーは9番人気で、ドウデュースは1番人気だ。
 いくら好走確率の極めて高い安パイでも、恵まれないと勝ちきれない1番人気を、本命には出来ない。
 そこで私は、ジオグリフを選択した。
 同馬は前走先行していた。今回、差しに回る位置取りショックを掛ければ、ハイペースか、外伸び馬場になれば、勝つ可能性が高い。つまり、福島民放杯でいうところの、彼はアンティペイトになる。

ジオグリフ(Sの強い非C系)の近4走

 ただアンティペイトほどの、賭けでもない。前走はスローで自然に前に行った形で、2,3走前を見れば誰でも分かることだが、ペースが上がれば差しに回ることは間違いない、本質的な差し馬だ。先行馬のアンティペイトみたいに、騎手が差しを選択するかどうかに賭ける必要はない。
 そもそもジオグリフはスタートが遅いので、騎手が行こうにも、多頭数小回りのGⅠでは、自然に差しに回らざるを得ない馬でもある。
 ところで、前走共同通信杯のジオグリフも、直線で馬群に入って揉まれていた。
 これは、ウォーターナビレラのように本番でプラスなのか、あるいはドウデュースのようにマイナスなのか?
 答えは、Mを知っている人なら分かると思うが、文句なくプラスになる。
 同馬は、新馬を超スロー、札幌2歳Sを大外捲り、朝日杯を後方侭と、一度も揉まれたことのない馬だ。したがって、前走の揉まれた経験はかなり辛いもので、0.2秒差も千切られて負けたのも当然である。今回は外枠の差しだから、前走のように揉まれる確率はかなり低い。前走より、楽に感じることは間違いないのだ。
 またジオグリフの父ドレフォンは、ドウュースの父ハーツクライのようなC要素はあまりなく、どちらかというと揉まれ弱い。だからこそ、前走揉まれて、今回スムーズだと、相当気分良く走れる。
 これは、似たタイプのウォーターナビレラの桜花賞と、全く同じ構造になる。
 だからこそ、福島民放杯のときと、レース前の気持ちは全く違っていた。
 アンティシペイトが「差しに回る位置取りショックを掛けてくるのか?」とおびえながらレースを見守った20分前だったが、今回は福永が差しに回る位置取りショックを掛けるのを、余裕を持って、静かに待つだけだ。
 エネルギーに満ちた、この予想には、生きたダイナミズムの手応えがある。
 福島民放杯の9番人気本命と比べて、今回は5番人気と穴人気の馬が本命になったわけだが、むしろ予想は攻めの、生きている実感が、確かにそこにあった。

 スタートし、福永は自然に前走よりペースアップしたので、中団差しの位置取りになる。
 この瞬間、ほぼ連対したのは分かる。私が期待し、解説した通りの位置取りショックが発動した瞬間だ。
 武豊に視線を移すと、ほぼ最後方。
 ・・・なるほど、この作戦だったのか!
 前走馬群に入ってタフな経験をさせた後に、ストレスのない後方から大外一気を外差し馬場で選択する。Mでは、王道の位置取りショックだ。これなら、前走の作戦にも意味が出てくる。馬が前走よりかなり楽に感じるからだ。
 実際、これが揉まれ弱いL系なら完全な正解だった。だが、先ほど書いたように、C系のドウデュースには前走より揉まれない、負荷の少ない競馬は、それほど大きなプラスにはならない。むしろ、馬群でファイトさせた方が集中しやすいタイプでさえある。しかも、弥生賞で前走よりタイトなレースを中団から勝ちに動いて結果を出したのは、朝日杯のタフな経験がある馬の次走としては、位置取りショックの仕込みとして、いささか過剰さを覚える。疲れる経験の連続だった(この前哨戦と本番の心身構造は、天皇賞春のディープボンドもほぼ同じだったので、あとでよく見比べて欲しい)。
 結果、ジオグリフが勝ち、ドウデュースは3着で、馬単、3連複共に的中した。
 

さつき晴れ(誤用?)


 どっとこみ上げた疲労感で、思わずへたり込む。
 福島民放杯とアンタレスSで、思うように世界と調和できなかったことへの後悔が体にしみてくる。だが、それと同時にほんの僅かだけど、穏やかな風が心をよぎった。そう、私はそれを感じるために、毎週ここにいる。
 
   スマートウォッチは、また来週、同じように赤い突き出たグラフを照らし出すのだろう。

 4月17日の15時。
   位置取りショックは、その馬のタイプと臨戦過程に合わせたものだと、より効果は倍増する。それを如実に物語るレースが、福島民放杯から皐月賞の僅か20分間に凝縮され展開し、その記憶がウェアラブル端末へと刻まれたのだった。
 
 

感謝とおわび

 ところで、このブログをしてフォローなどの反響で気付いたのだが、ここnoteにも、Mを熱心に語ってる人が多くいることに驚き、嬉しく思った。
 私は、仕事で必要最低限のこと以外は、ほとんんど人と競馬の話はしない。S君と開催日に少しLINEするくらいだ(笑)。というのも、単純に消耗するからである。あまりネットに触れないのも、自分の中で人の話が反響し、世界が攪乱され、考えの軸がぶれてしまうのが怖いという理由からだ。
 ただ、会話の相互性は、新しい世界を開拓するのに、効果的なことは間違いないだろう。そんな世界に生きてみるのもまた楽しいのかもしれない。いつか、そういう日があるのかもしれないけれど、とりあえず今は、繊細な私?の軸がぶれないように、ブログを訪れてくれた人のページを、時間があるときに少し覗くくらいの、世界との曖昧なつながりの中で止めておきたいと思う。
 アメリカか何かの有名な心理テストで、自分の性質を20個くらいに順位付けするものがあって試したら、私の1位は確か独創性で、2位は意外にも公平性、公共性だった(下位の方には、協調性があったりした)。確かに思い返すと公平性が私の行動規範になっていて、グループに入ると、全ての友人に公平に対処しないと落ち着かなく(苦手な人はいるけど、何事にもフラットに判断するので、人の好き嫌いのない性質というのもあるが)、めんどくさくなって結局独りの方が楽になるタイプだ。どんな風変わりな相手にも同じように対応するので、結構グループでは人気になって、ことある毎に声を掛けられるのだが、それがまた私の公平性の基準を摩耗させるという循環である。ファンの人からメールとかも貰うのだが、誰かに返信するとみんなに公平に対処しないといけないと思って、結局、なんの反応もしなくなってしまい、申し訳なく思っている(しかも、仕事の返信にすら、そういう癖があるのだから!)。こういうメールや年賀状とかの返事がしたくても出来なくなるのは恐らく何か、名前の付いた心理的な障害なのではと思うが、そんなこんなで、年賀状も書いていないし、今は家族以外、あまり人と交わっていない。
 そういう性質なので、恐らくSNSなんかを始めたら、全ての人に公平に反応し、返信しないと気が済まなくなるだろうし、結局疲れて今度は一切反応しなくなる姿が目に見えているので、やっていない。
 ただnoteを始めると、微妙ではあるが、期せずして世界とつながってしまう構造があるようだ。フォローした人に反応すると、みなさんの記事全てに応えないといけなくなってしまいそうなので、あまり反応しないのを許して頂きたい(ハートを貰うと原稿に共感して貰えているのかと私も嬉しく思うので、反応しないのは何とも申し訳ないのだが)。
 今回noteを始めた機会で、フォローされているみなさんのものを、少し眺めていると、いろいろな人がいて、率直にみなさん凄いなぁと感心した(ラジオとかしている人もいるのだから)。
 それでいつの間にかYouTubeにいきついてみると、「Mの法則クイズ」なるものに突き当たった(具体的に言及するとまた公平性で切りがなし、ポリフォニックなMの進化にも支障を来すと思うので伏せておく)。面白くて、私も国語のテストを久しぶりに受けるような気分になって解いてみた。
 結果は、・・・全問正解ではなかった(笑)。
 どうやら、引っかけに見事に本人が引っかかってしまったようだ。ただ、解説されていることは正解で、「ここまで皆さん分かってるんだ」とびっくりした。私がいなくなった世界の、Mの進化を想像すると楽しい限りである。
 様々なところから発生するポリフォニックなMの道程と、Mに関わる全てのみなさんの活躍を祈っています。


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