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【感想】ROMES シリーズ(五條瑛)

架空の洋上型国際空港「西日本国際空港(西空)」を舞台にした作品群です。

ROMES 06
ROMES 06 誘惑の女神
ROMES 06 まどろみの月桃

五條作品のなかで、現在も購入できる貴重なシリーズもの。電子書籍もありますので、ぜひまとめて手に取っていただきたい。
五條ファンはもちろん、サスペンス好きの方、空港や飛行機、システム、コンピュータなどに魅かれる方にもおすすめです。

(以下ネタバレあり)

主人公は、空港のセキュリティセンターに勤める砂村 多駒(たく)。
砂村が夢中になっている最新型の総合警備システムの名前が、タイトルの「ROMES」です。
ROMESには01監視、02探索、03追跡…と段階があり、タイトルに入っている「06」は極秘。読んで確かめてください。

ROMESは、世界的な保険会社が軍事施設の警備を目的に開発したシステムで、西空でただひとりそのシステムの全容を知るのが、開発元の保険会社から派遣されている砂村の上司の成嶋 優弥。
いつも元麻薬探知犬のラブラドール「ハル」と空港内をふらふらしている成嶋ですが、事件が起こればROMES(と砂村たち)を駆使して対応します。

セキュリティのスペシャリストでROMESというシステムを知り尽くしている成嶋は最初は砂村にも心を開かないドライなものの見方をする人ですが、ROMESはまだ成長段階で、人を理解できなければ完璧な警備はできないと語る彼の目指す、完成型のROMESがどんなものなのか。
警備が人との闘いである以上、それに対応したシステムは常に進歩を続け完成はしないのかもしれません。

…というと、ROMESというシステムありきの話のようですが、違います。
確かにすごいシステムではあるのですが、徹頭徹尾ただのツールとして描かれているところに、個人的にとても好感を持っています。
ROMESにも搭載されていて、もう現実にも普及が進んでいる顔認証や監視システム。技術そのものに善悪はなく問われているのはそれを使う人間の方だということ、そして、機械・システムは万能ではなくて人が与えた能力以上のことはできないということ。当たり前の現実をしっかりと土台に置きつつ、描かれているのは人間。
物語の背骨はあくまで、空港という特殊で閉鎖的な環境を舞台にした、砂村たちと、彼らの対峙するテロリストなどとの緊迫した戦いで、対峙する双方に物語がある。なので、システムとか興味ないという方ももちろん大いに楽しめます。
(私だって、たまたま仕事の関係で今は思うところがあるだけで、1作目を読んだときは技術がどうとかシステムがどうとか考えてませんでしたから!)

最初はハルとROMESにしか興味を示さない成嶋が、少しずつ砂村に心を許していく様子。
成嶋に振り回されながらも世話をやく砂村。
かわいいハル。
そんなところを楽しむのもよいと思います。

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