奥深き手土産の世界: 御菓子司 文銭堂本舗 [東京都港区]

週末の正午、場所は西新橋、平日とちがい、人もまばらで静かな都会を感じることができるひと時だ。 お休みで扉のしまったビル街の中で、昔ながらの住まいを佇む一軒の和菓子屋がある。

扉を開けて入ってみると、そこは時が止まったかのような、懐かしいお店の景色。店頭のショーケースにならんだ饅頭に最中、煎餅。品物を眺めていると、

「いらっしゃいませ、お茶をどうぞ。」

と、昔ながらのおもてなし。外の週末の静けさと相まって、都会の真ん中にいるのかいないのか、不思議な感覚におそわれる。

もともと、私は手土産には縁がなかった人間だ。

実家は新興ニュータウン、加えて両親が近所づきあい、親戚づきあいをしない家だったせいか、手土産をもらったりあげたりという風景に出くわすことがなかった。社会人になっても、まあ所詮男の一人暮らし、お呼ばれされるようなこともなく手土産とは無縁の人生を過ごしてきた。

とはいえ、人間年をとれば状況は変わるもの。徐々にお呼ばれを受けることも出てきて、さすがに手持無沙汰でいくのもはばかられる。そして、結婚や出産などのイベントを経ると、いろいろといただいたり、お礼をする機会は増えてくる。

そして、手土産は意外に普段の生活でも要入りになる。家族へのお土産だ。別にやましいことがなくても、たまに普段いかないようなところへ行くと、せっかくなので何か買って帰るかという気になるものだ。

とはいえ、これまで手土産とは無縁に過ごしてきた身、何を買うべきか見当がつかない。

そして調べてみると、世の中には手土産本というものが存在することを知る。世の中は私が思っているよりもずっと、手土産が贈り、贈られしていたのだ。早速いくつか本を買ってみた。

雑誌を開くと、著名人の方々が選びすぐりの手土産を紹介しているのだが、食通が全国食べ歩いた末に行きついた料理店を紹介するかのごとく、こだわりが半端ない。正直手土産がここまで奥深い世界とは知らなかった。

そして、いざ店選びとなると、頼もしいのが関西エルマガジン社のMEETS。MEETSは関西のカルチャーの屋台骨を支える…おっと、話が長くなるので別の機会に。

雑誌をめくると、都心の老舗から、下町の手作り店舗まで、都内各地にいろいろと手土産スポットがあることを知る。手土産の目線から都内を見てみると全く気付かなかった景色が見える。やはり、手土産、奥深い。

そんなこんなで、私はひよっこ手土産リサーチャーとなり、本日虎ノ門に手土産を買うに至る。

「うちの一番人気は、やっぱりこの最中ですかね。」

「ちょうど小ぶりでいいですね、それいただきます。」

いただいたお茶を少し口にし、老舗和菓子屋の最中を手に私は西新橋を離れる。

「孤独のグルメ」の次は、「孤独の手土産」とかいいと思うんだけどな。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?