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高騰する不動産は”善”なのか

52平方メートル1億円、83平方メートル2億5千万円、150平方メートル6億円。

 週末、新聞に折り込まれた不動産広告を見ながらため息が出る。東京の特に都心部では恐ろしいほどマンションの価格が高騰していて、その余波がじわりじわりと周辺部や地方都市へと広がっている。

 不動産市場が活況で景気が良くなっているという人もいる。これは本当にいいことなのだろうか?

 東京23区の今年7月の中古マンション価格は1年前より7.4%上昇しているそうだ。知り合いの不動産業者によると、立地のいいマンションによっては新築時の倍になっているところもあるという。価格水準が日本人には手が出せないレベルになっていて、彼が最近売ったマンションは10組内見が入ったそうだが、その全てが中国や台湾のお客さんだったそうだ。僕らは円建ての価格で見ているから高騰しているように感じるが、ドル建てでみるとそれほどでもないのだ。

 ドル円レートはこの4年で100円強の水準から160円前後にまで駆け上がった。マンション価格が1億円から2億円に上昇しても、100万ドルだったものが125万ドルに上昇しただけにしか見えない。

 元々、東京の不動産は世界的に見て安いと言われていたことに加えて、対中関係が緊迫化していることなどから、台湾の富裕層たちが有事に備えて東京のマンションを買っているそうだ。

 価格上昇の原因はそれだけではない。その高騰ぶりを見て、マンション投機で儲けてやろうとする人たちが、まだ値上がりしていない物件を探して周辺部へと食指を動かしている。

 不動産価格が上昇することによって本当に住みたい人が住めない状況になっている。そもそも価格が上昇することはいいことなのだろうか? 1990年に不動産バブルが崩壊したときも「○○兆円の富が失われた」と言われた。しかし、安くなることで土地やマンションを購入できるようになった人もいたはずだ。

富とは一体何なのだろう。
 土地やマンションの根源的な価値は、生活の快適さというところにあるのではないだろうか。何もなかった土地に、水道や道路などのインフラが整備されれば、人々が暮らせるようになる。さらに鉄道が敷かれて、駅の周りに商店街ができれば、ますます便利になり土地の値段は上がっていく。みんなが便利だと思う土地は、みんなが欲しがるから結果的に値段は上がる。

しかし、その逆は成り立たない。土地の値段だけ上がっても便利にならないし、値段が下がったといって、急に不便になるわけではない。
 安いうちに買って高く誰かに売ろうとする人たちが増えても、生活が良くなるわけではない。バブル経済の崩壊から学ぶべきは、不動産の本質的な価値に目を向けることだ。価格だけ上がっても意味がない。「価格=富」と考えるのではなく、本当に必要な人が住める環境を作ることこそが重要だ。
 シンガポールでは外国人が不動産購入をする場合には60%の税金をかけたり、2軒目を購入する国民に20%の税金をかけたりしている。
 日本でも、価格上昇を抑えるための方法を考えた方がいいのではないだろうか。

*こちらは、週刊誌AERAに連載している「経済のミカタ」第5回の内容を一部変えて、投稿していいます

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今回は、今週の活動方向と、記事に書ききれなかったマンション価格の今後について。

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お金や経済の話はとっつきにくく難しいですよね。ここでは、身近な話から広げて、お金や経済、社会の仕組みなどについて書いていこうと思います。 …

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