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ケイコ 目を澄ませて〜
映画館の最後列から字幕がかすんで視えないと気づき、とうとう酒の過ぎでバチが当たったか、.天を仰いで翌日眼科へ飛んで行った
若年性白内障だといわれ『アンダルシアの犬』のような手術によって眼内レンズが埋め込まれ身体の一部がアンドロイド化した
そして数日後だったか目を開くと世界ってこんなに明るかったんだと驚くほどまばゆい視界が人生でほぼ初めて私のものとなった
あのときの感動は忘れないといっても視力がはからずも187.5倍ぐらいとなり鮮やかに視えることが当たり前になってしまうと、人間とはいいかげんな生きものなので視えづらかったころの逆境を忘れてしまう
自分のつらい思いとか不自由などまったく大したものではなく少なくともネタにもカネにもならない、それに比べてこの映画の主人公はという話だ
身障者スポーツは人間の可能性を無限に広げているといえるし五体満足な凡人に身体性の低さと生きる気力の乏しさを痛感せしめるに十二分である
ましてこの映画のモデルのボクサーは耳の聞こえる人間と同じリングに立ちハンデをものともせず対等以上に戦い続けた
自分などはその事実の前にひれ伏し言葉を失う
今週もすでに無力感無能感を大いに味わう出来事があった
ただひたすら謝られても何かもらわねば収まりがつかない、ならば米一年分でも要求するかと思っても冷静に計算したら二人家族でひと月に五キロとしても年間三万五千円ぐらいの出費にしかならない
モノを考える尺度が小さすぎて情けなくさせる映画だった
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