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飲み会終わりに女の子の部屋に行ったらどうなる?ー『街の上で』ー

どうしても今泉力哉監督の最新作「街の上で」をたくさんの人にみてもらいたので、かく。
かくにあたって映画のネタバレはせず、youtubeにある予告編や既出のあらすじまでに情報を留める。

この作品は、2021年に公開される日本映画の中でベストといっても過言ではないと思う。ぜひみてほしい。

またあらすじを公式ホームページから引用する。

 古着屋で働く荒川青は、恋人に浮気された上にフラれたが、いまだに彼女のことが忘れられない。そんな青のもとに、美大に通う女性監督から自主映画への出演依頼が舞い込む。行きつけの飲み屋では常連客から「それは“告白”だ!」とそそのかされるが——

『街の上で』公式ホームページhttps://machinouede.com/

「街の上で」を絶賛する多くの人がいっているのは、「街」や「文化」についてである。確かにそうだ。この作品は、下北沢が舞台であり、下北沢は文化的な営みをする人々が訪れ、住み、生活している街である。私もそう思うし、異論はない。映画に登場するお店やそこに生きる(だろう)人々をみると、街の中で生きることの素晴らしさと文化もまだまだ捨てたものじゃないと強く思う。しかし今回は今泉力哉監督作品の醍醐味である「恋愛」に焦点を絞っていきたい。

ところでこの投稿のタイトル、なんとも気持ち悪い。“女の子”ってなんだよ。そんな言葉使うなよという気持ちになるし、文の背後に潜むいやらしさ、流れが透ける。どうせセックスするんだろうという。またタイトルのことを映画にしようとすると、どうしてもエロいシーンにして、見せ場にしようというまたもや気持ち悪い思惑が想像できてしまう。
ここに恋愛映画を好まない人の理由があると思ってる。つまり、お決まりの流れに沿う物語とそれによって生まれる安い感動を消費することに嫌気がさすということである。

しかし『街の上で』は違う、と言ってみる。今泉力哉監督の作品には、ありきたりな恋愛映画にはないおもしろさがあると思う。そのおもしろさをあえて言語化するならば、「誰もが共通で想定する物語や流れに、揺さぶりをかけて違う物語を展開すること」である。

『街の上で』において、タイトルで言われるシーンがまさに中原青と城定イハのシーンである。城定イハは、自主映画のスタッフであり、青とは撮影後の飲み会で仲良くなる。そしてイハは、二次会に参加しない青を呼び止め、自宅に誘う。それが以下の、予告のシーン冒頭である。

上述のことを抜きにして、映像表現や内容をみてみる。まずは今泉力哉監督の特徴ともいえる長回しと独特の台詞。それらによって現実世界に実際にある時空間のような画になっている。加えて青演じる若葉さん、イハ演じる中田さんの演技がとてもいい。イハの関西弁はキュンとくるし、青の表情も素晴らしいですね。
ただ恋バナをするっていうのは、なんともありふれているしありがちな物語に為りかねない。しかしこのシーンでは、以下のことが起こり、揺さぶりが始まる。

そうシーツを広げるのである。なんですかそれ…。それとカットしてもおかしくないこのシーンを長回しでやっているのとてもおもしろいと思いませんか。しかも「実際もお茶の上」ってどういうことなんだろう…。セリフもおもしろい。そして忘れてはいけないのが、このシーンは飲み会後の女の子の部屋で展開される物語なのである。
これで十分分かったと思う。
確実に言えることは、お決まりの流れにはならないということである。

この場面の夜はまだ続く。そして映画はさらに展開されていく。誰もが笑ってしまうシーンが至るところに散りばめられているので、ぜひそれは映画館でみてほしい。存分に笑えるはずである。

またみる人によって好きなシーンや感想が違ってくるのも今泉力哉監督作品の魅力である。
映画を観終わった人、好きなシーンをぜひおしえてください。


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