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スタバで甘いフラペチーノを飲みながら読んでほしい小説 「グリフィスの傷」千早茜 著


好きな作家さんの新刊を買った。るんるんと書店を出て、家に帰ってコーヒーをいれて本を開く。万全の状態で物語を迎え入れようとした。

それなのに、読めない。読んでいられない。短編集なのだけれど、1作品目でもう指が震えてしまって、体も震えてきて読んでいられないのだ。どうしたものかと本を持ってとりあえず外に出る。そして、スターバックスに向かった。

震える手と揺さぶられる心を押さえつけられるのは、抵抗できないほどの強烈な甘さを持つスタバのフラペチーノしかないからだ。

期間限定のバナナを丸ごと一本使ったというフラペチーノを注文し、店員さんおすすめのカスタマイズにした。「とにかく甘いのを飲みたくて…」という雑すぎるオーダーにも優しく対応してくれたスタバ店員さんは神である。

揺さぶられる心をなんとかフラペチーノの甘さで紛らわしながら、スタバで読了することができた本についてご紹介します。


「グリフィスの傷」 千早茜 著


からだは傷みを忘れない――たとえ肌がなめらかさを取り戻そうとも。
「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。
「みんな、皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている」。ある日を境に、「私」は高校のクラスメイト全員から「存在しない者」とされてしまい――「竜舌蘭」
「傷が、いつの日かよみがえってあなたを壊してしまわないよう、わたしはずっと祈り続けます」。公園で「わたし」が「あなた」を見守る理由は――「グリフィスの傷」
「瞬きを、する。このまぶたに傷をつけてくれたひとのことをおもう」。「あたし」は「さやちゃん先生」をめがけて、渋谷の街を駆け抜ける――「まぶたの光」
……ほか、からだに刻まれた傷を精緻にとらえた短編10作を収録。

集英社HPより


「傷」をめぐる10の物語が描かれた短編集。

読んでいると、とにかく痛い。本を読んでいるだけなのに、切り傷を刻まれたような鋭い痛みを感じ、本を持つ手が震える。

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