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読書メンタルが強い人にしかおすすめできない東野圭吾作品「魔球」
東野圭吾という作家をご存じだろうか。
この問いに「知らない」と答える人はいないと思う。日本の常識。偉人である。
これまで恐ろしいほどの数の作品がメディアミックスされてきた。大げさではなく、東野先生の物語に触れたことがない人はいないのではないだろうか。
はじめて買った本「流星の絆」
わたしの本との出会いは、東野圭吾作品だった。人生で一番最初に買ってもらった本は「流星の絆」の単行本。2008年発刊の初版本だった。
いまでもあのときのことを覚えている。それまでは図書館の本を借りるばかりだったが、「流星の絆」を書店で数ページ立ち読みしただけで、衝撃をうけた。絶対におもしろいし、何度も何度も読み返す大切な本になるという確信のような予感がした。だから買って自分のものにしたいと思った。
いまはもう閉店してしまった実家近くの書店で、「流星の絆」が大規模に展開されていた様子、一緒にいた父親が「買ってあげる~」と言ったものの、単行本の値段の高さにおどろいて前言撤回するか迷っていた様子。すべてをはっきりと覚えている。衝撃的な出会いだった。
「流星の絆」は一気に読んだ。そして、本当に何度も何度も読み返した。いまでも大好きな本だ。
東野圭吾作品。いちばん好きな作品は?とファンの方に聞いたら、十人十色さまざまな作品があげられるのだろう。作品数はとても多く、名作揃いで選びきれない。
そんな名作揃いの東野圭吾作品のなかでも、わたしが衝撃的で忘れられない読書体験をした作品をご紹介します。
「魔球」 東野圭吾 著
9回裏2死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる“魔球”を投げた!すべてはこの1球に込められていた……捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。
高校野球がテーマでありながら、青春小説ではない。いや、これが青春なら辛すぎる。涙も出ないほどの苦しさで胸がいっぱいになる、重厚なミステリーだ。
かなり前の作品かつ時代設定も古く、野球にも詳しくないわたしは、あまり自分には合わないだろうと思いながら読み始めた。
ところが、気付いたときにはこの物語の絡みつく謎に、そして孤高の天才ピッチャーである須田武志の姿に心を奪われ、一気に物語にのめり込んでいた。タイトルである「魔球」の印象が、読む前と読んだ後でがらりと変わる。「魔球」に囚われた人々の生き様が、じわりじわりと心を締め付ける。
ミステリーを読み終わって、「解決!スッキリした!」「難しくて理解できなかったかも…」「感動した〜」以外の感想を持ったのは、この作品が初めてだった。
この作品を読み終わったあとの感想は、「胸が苦しい…こんなのもう一生読みたくない…この気持ちを忘れたい…」だった。それほどまでに、のめりこんで心が締め付けられ、心に大きなダメージを受ける。なのに数年に一度読み返して、これを繰り返す中毒に陥る。こんな読書体験、おすすめしていいのだろうか…
いまでも変わらず大人気作家・偉大すぎる東野先生
東野圭吾作品との出会いから16年経ち、いまでは書店員として東野先生の本を売場に並べている。いまでも変わらず、メインの棚に大規模展開だ。読書ビギナーもコアな読者も、さまざまな人の心を掴んで離さない。間違いなく偉人。
知らなかった苦しい感情を教えてくれるミステリー作品「魔球」は、衝撃的におもしろいのでおすすめです。
いや、作品の世界に引きずり込まれすぎない、強めの読書メンタルをお持ちの方におすすめです!ぜひ書店でこの本に出会ってみてください。
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