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トピックス 中国動向🇨🇳

トピックス 中国動向

⚫️2021.11.1日本経済新聞🗞

【サマリー】
中国 IT、不動産等 各種不安

【思ったこと】
引き続き注意
中国の何が弾けたりするかわからない
弾けてもしばらくは隠されたりするが、表に出た時経済にどんな影響あるか、きつい経済を想定しておくべき

【記事全文】

中国がIT企業の規制強化や不動産大手・中国恒大集団の経営危機に揺れている。プライベート・エクイティや不動産投資を手掛ける香港の投資会社、PAGの単偉建グループ会長兼最高経営責任者(CEO)に展望を聞いた。
政策緩和の公算

――中国の7~9月の実質成長率は4.9%にとどまりました。
「中国の基準では4.9%は非常に低い。ただ政府は金融政策や財政政策のツールを持つ。成長率が5%を下回ると政策を緩和する可能性が高まるため、10~12月期はいくぶん回復するだろう。通年の成長率は8%程度とみる」
「課題も多い。中国は新型コロナウイルスを完全に封じ込めるゼロコロナ政策を採用し、国境を閉じている。感染が発生するたびにロックダウン(都市封鎖)を繰り返すと大きな影響がある。輸出が好調だったのはコロナで他国の生産に支障が生じ、中国から買うしかなかったためだ。他国の経済が正常化するとこうした需要は続かない」
――不動産市場で不安が広がっています。
「政策担当者は債務と住宅という2つのバブルがあると認識し、昨年8月に不動産会社向けの厳しい財務指針を導入した。その後も恒大などは事業拡大を続けたため、バブルを確実に抑え込む決心をしたのだろう。問題は段階を踏まず、事前説明や警告なしに行動を起こすことだ。市場にショックを与え、政策が正しくても意図しない結果をもたらす場合がある」
テック投資好機
「長い目で見て、バブルを取り除くのは良いことだ。不動産の需要は引き続き堅調だ。当社は世界最大のモール運営会社である珠海万達商業管理集団に28億ドル(約3200億円)投資した。中国で380のモールを運営し、テナントの入居率は98%に上る。計画中の案件も数百あり、力強い成長が見込める」
――IT企業への風当たりが厳しく「共同富裕」の考え方も聞かれます。
「独占禁止や個人データ保護といった考え方は先進国と似ている。問題は規制そのものでなく、プロセスや透明性を欠くことだ。テック企業のバリュエーション(投資尺度)は下がっており、絶好の投資機会だ」
「共同富裕は一部に富が偏る逆ピラミッド型から、楕円形のアメリカンフットボールのような社会に変え、大きな中間層を作る狙いだろう。経済の効率性を考えると、文化大革命や政府が統制する計画経済に戻ることはない」
――中国で文化大革命を経験した後、米国の大学教授になりました。米中の分断傾向をどう見ますか。
「貿易の分断は起きていないが、テクノロジーの分断はある程度起きている。一部の中国企業の成長が遅れる可能性があるが、米企業も中国市場を失う。長期的には中国による独自技術の開発を促すだろう」
――PAGは日本の不動産などに積極投資しています。
「日本には大きな市場と成熟した経済があり、企業も優れた製品や技術を持つ。海外展開を通じて成長を支援できる。PAGの日本拠点には100人以上おり、最近もレストランチェーンの買収を決めた」

⚫️2021.10.27日本経済新聞🗞

不動産大手、中国恒大集団の経営不安はどんな中国経済の未来を示唆しているのだろうか。米投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者、ハワード・マークス氏に話を聞いた。同氏はこれまで不況知らずだった中国経済は今後、米国や日本と同様に好不況の景気サイクルを経験するようになり、同社が得意とする不振企業への投資の好機が訪れるとみている。
――恒大のデフォルト(債務不履行)危機をどう受け止めていますか。
「中国は資金調達のしやすさと多額の資本投下によって、非常に高い成長を続けてきた。資本投下には本来必要のないビルの建設も含まれる。恒大の経営問題はこうした状況が持続不可能であることを示した。どこかの時点で中央銀行に頼らない経済に移行しなければならなくなる」
「中国の一般人や個人投資家は、政府が巧みに不況を回避してくれると思っていたかもしれない。過剰な自信や過剰な信頼があるからこそ、サイクルが生まれるのであって、それが高すぎると修正される。そして過剰な恐怖と過剰な恐慌が起こり、再び修正される。すべては最終的に循環する」
――中国人民銀行の幹部は恒大問題について「制御可能」と述べました。
「中国政府は最終的に何でもできる。有権者や議会の承認を得る必要がない。最近では営利目的の教育は不要と言い放ち、あっという間に産業がなくなった。恒大を救済したければ『我々は負債をすべて買い戻すつもりだ』と言うこともできる。ただし彼らはこうした措置をとらないだろう」
「中国は約30年間、不況を経験せずに成長を続けてきた。一方、先進国は一本調子に成長することはなく、好不況を繰り返す。私は浮き沈みのサイクルを『経済のリアリティー(現実)』と呼んでいる。巨大な痛みや危機は、中国経済が『現実』に移行する契機になる。中国は賢いので(一連の対応を通じて)『恒大の投資家をすべて救済するつもりはない』と言っているように思う」
――誰が救われて、誰が救われないとみていますか。
「個人が購入した商品は何とかするだろう。中国国内の社債保有者はわからない。国外の社債保有者は救済対象にならないだろう。そもそも債権者の救済とは経済の現実を否定することだ。経済システムには創造的破壊がつきものであり、今回はターニングポイントになる」
――日本企業は1990年代~2000年代初頭、株価や不動産価格の下落に直面すると、負債圧縮に走り、経済の縮小均衡を招きました。中国が日本と同じような状況に陥る可能性はありますか。
「中国にはまだそれほど多くの中産階級が存在しない。中産階級の拡大と、彼らの国内消費によって今後も経済成長が期待できる。世界平均以上の成長率を維持できそうだ。単なる印象にすぎないが(年率の経済成長率は)3~6%のどこかになると思う。米国なら2%以上でハッピーだ」
――オークツリーは15年から中国でディストレスト債投資を始めました。今後の投資機会をどうみていますか。
「中国の融資は景気サイクルを前提にしたものになっていなかった。好不況の循環が現れるようになれば、より多くの不良債権が発生するようになる。我々はこれまでのところ良い経験を積んできた。契約は守られ、予見可能性の高いプロセスも確保されている。投資を続けない理由はない」
――米中の政治対立が続いています。投資活動で不都合は生じていませんか。
「何の妨害も受けていない。中国は上海や北京を世界の金融センターにしたい。そのためには法律が一貫して公平に適用されなければならない。中国は今後もそうするだろう」
「たまに(塾禁止令の出た)教育分野や、(子供のゲーム時間制限で監督強化の対象になった)騰訊控股(テンセント)のような事例が出てくるかもしれない。我々としては中国政府と認識を共有すること以上に、政府が望むことをするのが重要だ」
「私は試したことはないが、もし可能なら習近平(シー・ジンピン)国家主席が何に反発しそうか考えてみよう。前もって把握できて、そのような行動を避けられたら素晴らしい。我々は敵ではなく、パートナーになるような投資を心がけてきた」
――ウォール街は長年、中国と良好な関係を築いていますね。
「お互いさまの関係にある。中国は金融大国を目指している。我々は中国で良いビジネスをしたい。2つの目標は一致させることができる」

⚫️2021.10.22日本経済新聞🗞

【香港=木原雄士】中国の不動産大手、中国恒大集団のドル建て社債が23日にも債務不履行(デフォルト)に陥る懸念が強まっている。傘下の不動産管理会社の売却交渉が行き詰まり、まとまった資金を確保するメドが立たない。21日の香港市場で売買を再開した恒大株は売りが殺到し、一時14%下げた。

「財務上の義務を履行できる保証はない」。恒大は20日夜、ドル債が30日間の利払い猶予期間中であるとしつつ、デフォルトになる可能性を事実上認めた。
格付け会社S&Pグローバルの8月時点の推計によると、恒大は仕入れ代金などを含め年内に1000億元(約1兆8千億円)規模の支払いを迫られている。資産を切り売りして当面の危機をしのぐ方針だったが、20日に「盛京銀行の保有株売却を除けば、グループの資産売却に大きな進展はなかった」と明かした。
傘下の有力企業で不動産管理を手掛ける恒大物業集団の売却は、現金確保の切り札と位置づけていた。恒大によると、約200億香港ドル(約3000億円)で合生創展集団に売却する合意を交わしたものの、最終的に折り合わなかった。
1つの社債の利払い猶予期限である23日が刻々と迫る。21日に3週間ぶりに取引を再開した恒大株は12.5%安で取引を終えた。社債市場でもドル建て債は額面の2割程度で取引され、デフォルトを織り込む。
恒大はドル債の利払いを見送る一方、国内投資家向けの人民元建て債の利払いは実行している。劉鶴(リュウ・ハァ)副首相などが「リスクは管理可能」との発言を繰り返し、処理に自信を見せる。債務に依存した開発は不動産業界全体に共通する問題で、信用不安が収まる兆しは見えない。

⚫️2021.10.21日本経済新聞🗞

【サマリー】
中国大手不動産  債務不履行決定
事業は継続見込み

【思ったこと】
事業継続なっても
債務不履行は債務不履行
金融当局の支援あっても
再建は難しいか長期化するのでは?
そうすると、実際中国不動産バブルは崩壊に足がかかったに近い

【記事全文】

【上海=土居倫之】中国の不動産大手、中国恒大集団の米ドル債の利払い期限が23日(日本時間24日)に迫っている。過去に中国で社債が債務不履行(デフォルト)になった企業と同様に、事業は続けるとの見方が多い。(関連記事を国際面に)
恒大は9月23日が期限だった米ドル債の利払いを見送った。30日間の猶予期限があり、10月23日までに利払いしないと正式に格付け会社からデフォルトと認定される。資産売却交渉は難航しており、同社債はデフォルトに陥る可能性がある。
米ドルなどの外貨建て債は一般に、特定の社債がデフォルトするとほかの社債も同時にデフォルトとみなす「クロス・デフォルト」や償還を要求できる「クロス・アクセラレーション」と呼ぶ条項がある。恒大の場合も同様とみられている。
中国で社債がデフォルトになってもすぐ事業停止になるわけではない。18日に期限を迎えた米ドル債を償還できなかった新力控股(シニック・ホールディングス)などが社債デフォルトを起こしたが事業を続けている。
恒大も事業を継続したうえで保有資産などの売却交渉を続けるとみられる。ただデフォルトになると海外からの資金調達は閉ざされ、資金繰りは国内金融機関などに頼らざるを得ない。当局の支援が焦点になる。
債務整理の手法や順番も日本と中国では異なる。中国では社債のデフォルト後、政府や銀行主導で資産・負債関係をある程度整理し、再建のめどが立った段階で法的整理手続きに入るケースが多い。法的整理手続きまでは時間を要する。

⚫️2021.10.18日本経済新聞📰

【サマリー】
中国の不動産会社
債務不履行に

【思ったこと】
懸念されてたひずみが、顕在化した
今回は若干小規模
だんだん大きくなるのだろう

【記事全文】

 【北京時事】中国不動産開発会社のチャイナ・プロパティーズ・グループ(CPG)は15日、子会社が発行した社債について、同日の償還期限までに元本と利息を支払うことができず、デフォルト(債務不履行)に陥ったと発表した。
 期限を迎えた社債は2億2600万ドル(約260億円)で、金利は年15%。CPGは債務の借り換えや資産売却が償還期限に間に合わなかったと説明。債権者と連絡を取りつつ、早期の資金調達を目指すと強調した。 【時事通信社】

⚫️2021.10.14日本経済新聞📰

【サマリー】
中国の「地方財政」に影
中国の地方は、不動産の売却益が主力財源
中心部の不動産バブル抑制を狙った施策が、地方には大ダメージ。

【思ったこと】
中国、国土は大きいが、統制はイマイチ。
世界経済に大きなダメージを与える要素をもっと含んでいるのだろう。

【記事全文】

【北京=川手伊織】中国の地方政府が住宅の値下がりへの警戒を強めている。8月には6年5カ月ぶりに31ある省・直轄市・自治区の半数超で値下がりした。地方財政の柱であるマンション用地の売却収入が減りかねず、約10都市が値下げ制限令を導入した。大都市のバブル抑制を狙った不動産規制が地方財政に影を落としている。
湖南省岳陽市や河北省張家口市は8月以降、新築物件を当局に事前に届け出た価格より15%超値引きすることを禁じた。江蘇省無錫市の一部地域では、開発コストを下回る不当廉売などを禁止する通知を出した。中国メディアによると、中小都市を中心に約10都市が値下げ制限令を発動した。
需要喚起策も相次ぐ。黒竜江省ハルビン市は10月から1軒目の住宅を買う高学歴人材を対象に、最大10万元(約170万円)を補助する。公的住宅ローンの対象となる中古物件もこれまでの築20年以内から同30年以内に広げ、在庫圧縮を促す。



政府の不動産規制をきっかけにマンションが値下がりしているからだ。中国国家統計局によると、新築住宅の販売総額を総面積で割った販売単価は8月、前年同月比2.7%下落した。新型コロナウイルスがまん延した直後の2020年4月以来の下落だ。
半数超値下がり
31省・直轄市・自治区のうち16地域で値下がりした。半数以上の地域がマイナスとなるのは景気が減速していた15年3月以来。最も下落幅が大きかったのは黒竜江省の21%で20年9月から下落が止まらない。中国南部の雲南省と貴州省、内陸部の寧夏回族自治区も10%を超す落ち込みだった。
政府は住宅ローン審査の厳格化などでマンション投機を抑えてきた。中小都市は人口流出で需要が縮んできたが、規制強化がさらに下押しする。
実際の値下がり幅は公式統計が示すより大きそうだ。不動産開発業者の資金繰りが苦しくなり、物件売却で現金化を急いでいるからだ。インターネット上では、経営難の不動産開発大手、中国恒大集団などの物件について「元値の半分で売り出し始めた」といった情報が飛び交う。



中国の土地は国有制で、地方政府が土地の使用権を不動産開発業者に売り渡し、業者がマンションや商業施設を建てて販売する。売却収入は地方政府の重要財源の1つだ。20年の収入は、中央と地方の税収総額の5割以上に相当する。景気対策の減税などで税源が細る中、歳入面で不動産への依存を深めた。
マンションが値下がりすれば「仕入れ」にあたる土地の価格にも響く。不動産開発業者が資金不足なので、入札にかけても買い手がつかない土地も増えた。中国財政省によると、8月単月の売却収入は前年同月を2割近く下回った。5月、7月も減少したが、8月の落ち込みは4割減った15年8月以来の大きさだ。
中国財政省傘下のシンクタンク、中国財政科学研究院の報告書によると、地方政府には18年末時点で21兆~45兆元の隠れ債務がある。公表されている債務規模(18兆元)を上回る規模だ。
地方政府の歳入が細れば、隠れ債務を含めた借金の償還能力への懸念が強まりかねない。不動産発の金融リスクを封じ込めるための規制強化が、地方財政の破綻という別の金融リスクを膨らませる恐れもある。
不動産税先送り
主要国では不動産の所有者が納める固定資産税が、地方政府の安定財源として機能している。中国も習近平(シー・ジンピン)指導部が発足した翌13年の「3中全会」の報告書に不動産税の立法化を盛ったが、先送りが続いて実現していない。
大都市に多くの物件を持つ共産党高官やその親族の反発が根強いためとされる。地方政府は安定財源がないため、不安定な土地売却に頼るいびつな構図が定着した。
中国人民銀行(中央銀行)の19年の調査によると、中国の都市部の持ち家比率は9割を超す。
いまの中国の不動産売買の大半が投機とみられる。不動産投機を抑えつつ地方財政を安定させるには、「不動産税」の本格導入が第一歩となる。

⚫️2021.10.11日本経済新聞🗞

【サマリー】
中国 台湾統一に係る方針は引き続き強行路線

【思ったこと】
ずっと平行線
どちらかが折れるしかないが、おそらく不可
大きくもめることになれば、台湾は世界の半導体の製造拠点でもあるので懸念あるが、今まで通りであればそこまで大きな問題にはならないか?🤔

【記事全文】

【北京=羽田野主、台北=中村裕】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は9日、北京の人民大会堂で開いた辛亥革命110年記念大会で演説した。台湾問題を「祖国の完全な統一は必ず実現しなければならない歴史的任務」と述べた。強国路線を堅持し、将来の統一に意欲と自信をみせた。
「台湾独立勢力は統一の最大の障害だ。祖国に背き国家を分裂させる者は、必ず人民に唾棄され歴史の審判を受ける」。習氏はこう力を込めた。
辛亥革命は1911年に起き、清朝を倒し、中華民国が建国された。習氏は、辛亥革命を指導し、中台双方で英雄視される孫文が「統一は中国国民の願いだ」と述べたことを引き合いに、統一の必要性を訴えた。
習氏は「台湾問題は中国の内政問題であり、いかなる干渉も許さない。国家主権と領土保全に関わる中国人民の断固とした意志と強大な能力を過小評価すべきではない」とも指摘した。台湾への関与を強め、対中包囲網を敷く米国を批判した。
共産党最高指導部の人事を決める5年に1度の党大会が2022年秋に迫っており、異例の3期目をうかがう習氏にとって台湾問題の扱いは重要だ。中台統一の旗を高く掲げ、求心力を維持しようとする狙いがあるとみられる。
一方で、過去の台湾政策を巡る重要演説に比べると今回抑制した部分も見え隠れする。
習氏は2019年1月の演説で、台湾に向けて「武力の使用を放棄することを約束しない。一切の必要な措置を講じる選択肢を残している」と話し、台湾の「中国離れ」が進むきっかけをつくった。今回は武力行使を巡る発言は控えた。
共産党創立100年を巡る今年7月の演説では「台湾独立のたくらみを断固粉砕する」と主張したが、今回はなかった。
東大の松田康博教授は「強硬発言が飛び出すとの見方もあったが、少し肩すかしだった。中国に不利な状況を打開するために穏健なメッセージも含ませたのではないか」と分析する。
習氏の演説に対して、台湾の総統府は9日「中華民国(台湾)は、主権を有する独立国家で、中華人民共和国の一部ではない。国の未来は台湾の人々の手の中にある」とする声明を発表した。
台湾では10日、中華民国の建国記念日にあたる「双十節」の祝賀式典を開く。軍事パレードや、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の演説が予定され、中国に対し、どこまで強いメッセージを送るかが注目される。

⚫️2021.10.8NewsPicks📱

【サマリー】
中国、垣大以外でも債務不履行

【思ったこと】
備えてほしい中国の不動産バブル崩壊に
もう崩壊しているに近い
コロナ融資で手元暑いなら、投資にまわしすぎずキープもあり

【記事全文】

中国 不動産市場めぐり動揺続く 恒大以外でも債務一部不履行
2021年10月7日 5時40分 中国
中国では、経営難に陥っている不動産大手「恒大グループ」の株式の取り引き停止が続いているほか、別の不動産会社が債務の一部不履行に陥るなど、不動産市場をめぐる動揺が収まっていません。
巨額の負債を抱えて経営難に陥っている中国の恒大グループは、香港証券取引所での株式の取り引きが今月4日から停止され、6日も再開されませんでした。

地元メディアは、厳しい資金繰りを改善させるため傘下の不動産管理会社を売却する見込みだと伝えていて、会社側も「大型案件の発表を控えていることが取り引き停止の理由だ」としていますが、これまでのところ発表はありません。

このため、相次ぐ社債の利払いができるかなど、資金繰りへの懸念はぬぐえない状況です。

こうした中、同じく香港市場に上場する別の不動産会社「花様年グループ」が今月4日に期限を迎えた2億ドル余り、日本円で220億円余りの債務の支払いができなかったと発表し、大手格付け会社は、5日、債務の一部不履行にあたると認定しました。

中国では、不動産市場の過熱を抑えたい政府による規制強化を背景に恒大グループ以外でも不動産会社の経営状況が悪化し、動揺が続いていて、世界の金融市場で影響が警戒されています。

⚫️2021.10.4 日本経済新聞📰

【北京=川手伊織、香港=木原雄士】中国で企業や個人による資金調達が急減速している。政府が不動産向け融資の規制を強めた影響が大きく、銀行による企業向け中長期融資は8月に前年同月比で28%減った。中国企業の債務返済能力への懸念から外債発行も減少。中国政府にとって適切な債務管理は重要な課題だが、調達環境の悪化は先行きの成長率を大きく鈍化させるリスクも潜む。



9月29日、中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会は不動産金融に関する会議を開き、「不動産を短期の景気刺激策としない」という方針を確認した。バブルが指摘される足元の不動産市況について、景気対策として押し上げることはないとの意思表示だ。
不動産については人民銀が2020年夏に大手不動産会社に対し、守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けると通達。21年1月には住宅ローンや不動産会社向け融資に総量規制を設けるなど段階的に規制を導入してきた。一連の規制は中国恒大集団が経営難に陥る一因となった。
この結果、銀行や市場からの調達総額を示す「社会融資規模」の8月末の残高は前年同月比10.3%増の305兆元(約5200兆円)で、増加率は2年8カ月ぶりの低さとなった。20年10月の13.7%増から減速が鮮明だ。
銀行による中長期資金の融資をみると、8月は企業向けだけではなく個人向けも24%減となった。不動産関連の資金需要が急速にしぼんだとみられる。
不動産と直接関係がない企業にも影響は及んでいる可能性がある。金融情報会社リフィニティブによると、中国企業による7~9月の外債発行額は約80億ドル(約8900億円)と、4~6月期と比べて7割近く減った。主要な格付け機関が恒大を相次いで格下げし、低格付け企業に対する投資家の警戒感が高まった。
仏投資銀行ナティクシスは仮に恒大の資金繰りが行き詰まった場合、「完成物件待ちの人が優遇され、ドル債の保有者は一番大きな影響を受ける」と予想する。こうした見方も信用力の低い企業の資金調達を一段と難しくしている。
資金調達の規制はすでに不動産開発にブレーキをかけている。8月単月の不動産開発投資は前年同月比0.3%の増加にとどまった。新型コロナウイルス禍でマイナスだった20年1~2月以来の低い水準だ。
銀行融資以外の「シャドーバンク(影の銀行)」も金融当局が締め付けを強める。
銀行の帳簿に計上されない委託融資、信託融資、手形引き受けは8月、1058億元のマイナス。返済が調達を上回ったことを示す。1~8月の累計では1兆3534億元の返済超過で、前年同期の8倍となった。20年夏までは新型コロナ禍の打撃を被った経済状況を考慮し規制を緩めたとみられるが、21年は改めて締め付けを強めている。



銀行での借り入れが難しい中小零細企業にとって「影の銀行」は重要な資金調達手段だった。資源高をきっかけにしたコスト高が中小零細企業の収益を圧迫している。「影の銀行」への締め付け強化が、中小零細企業の資金繰り難を一層厳しくしている面は否めない。
資金繰りの問題に加えて、景気の先行き不安が強まり、前向きな資金調達も様子見の動きがみられる。1~8月の設備投資は前年同期より1.4%少なかった。新型コロナ感染の影響で1割超減少した20年同時期の水準をさらに下回る。
中国では、就業者の8割が中小零細企業で働く。1~8月の都市部の新規雇用は938万人だった。新型コロナまん延前の19年同時期をなお5%近く下回っており、中小零細企業の雇用創出力が弱まっている。人民銀は7月に銀行の資金調達コストに直結する預金準備率を引き下げ、9月には低利での借り換えを促す資金枠を創設した。中小零細企業の資金支援策を打ち出してきたが、資金繰りに苦しむ企業はなお多い。
資金調達の伸び悩みは固定資産投資などの減少を通じて景気回復の足取りを重くしかねない。中国政府は、債務増加の抑制と経済の安定成長という難しい両立を迫られている。

⚫️2021.9.28日本経済新聞🗞

【サマリー】
中国大手不動産🇨🇳
破綻懸念情報引き続き
リーマンの時のようにならない可能性もあるが、予断は許さない

【思ったこと】
何が起こるか、ほんとうにリーマンショックのようにならないか
不透明
コロナ融資で借りた余裕資金を投資信託等に回しているのであれば、至急現金化が望ましいと思う。

【記事全文】

中国恒大集団の債務問題への市場の警戒が続いている。2008年の米投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻のように金融危機の引き金となるとの見方は現時点では限られる。ただ、共産党の締め付けが、企業の破綻リスクを軽視しながら膨張した中国の信用市場の転機となり、信用収縮が経済を停滞させかねないと懸念されている。

中国恒大集団が開発した不動産物件(24日、中国・武漢)=ゲッティ共同
「リーマン・モーメントとみるのか」「現段階ではノーだ」――。21日、米格付け会社S&Pグローバル・レーティングスは「恒大のデフォルト(債務不履行)の波及リスク」と題した緊急のウェブセミナーを開き、参加者から寄せられた質問に回答した。
S&Pによると、中国の銀行の総融資額のうち恒大向けは0.3%強にとどまる。貸し手も幅広く分散しており、「デフォルトがシステミックなリスクを起こす可能性は小さい」。ただ、信用リスクの広がりは注意する必要があるとみる。
S&Pは不動産開発などを手掛ける建業地産、花様年控股、新力控股といった企業や、仲介業の易居企業控股などの格付けを引き下げ方向で見直したり、引き下げたりしている。債券利回りが上昇して借り換えできず、事業の圧縮に動く不動産会社もある。
恒大の取引先は売掛金や手形を回収できないリスクがあり、S&Pは江蘇南通三建集団が47億人民元(約800億円)の売掛金のうち12億人民元が恒大向けで影響が大きいとみる。
同業の不動産会社や取引先に債務問題が連鎖すれば、銀行にとって軽視できないリスクになる。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは27日付リポートで、中国の銀行の不動産開発業者向けの融資残高は14兆元にのぼり、融資全体の7.4%を占めると指摘。「恒大集団が破綻して他の不動産開発業者の資金調達や事業運営に支障が生じれば、金融機関はより大きな損失を被る可能性がある」と警鐘を鳴らす。


米シティグループは、銀行の資産のうち直接、間接に不動産セクターに関連するものは40.7%とみる。脆弱な銀行への打撃が懸念され、社債利回りが7%を超えるような不動産開発業者へのローンが多い銀行として民生銀行、平安銀行、光大銀行をあげる。
問題をこじらせないよう、債券の専門家やエコノミストらが口々に重要性を指摘するのが、中国政府による制御だ。
共産党は格差是正へ「共同富裕(ともに豊かになる)」のスローガンを掲げ、富裕層の投機対象になりやすい不動産事業への規制を強めている。責任を負うべき債権者を守るモラルハザードになるため安易な救済は予想されていない。ただ、「リーマンの教訓は、システミックリスクはモラルハザードより優先されるべきだということ」(英バークレイズ)として、共産党はリスクが高まりすぎないよう対処するとの見立てが多い。
恒大の負債は政府関与のもと、返済期限を伸ばしたり銀行に与信を継続させたりしながら時間をかけ減らす。資産を投げ売りせず、適当な価格で売却できるようにする。理財商品を買った個人や取引先への返済を優先し、ローンや債券は一部カットしながら債務再編するといったシナリオが市場の中心的な見方だ。
恒大問題は中国の信用市場の転機となりうる。北京大学光華管理学院のマイケル・ペティス教授は「地方自治体や規制当局が最後は介入するため大口の借り手は破綻しないとの想定が信用市場を支えてきた。このモラルハザードをなくせば信用市場の構造的な基盤が変わる」と指摘する。
そこにリスクが潜む。新たな信用市場の姿が見えないうちは、貸し手が融資に慎重になり、信用収縮の悪循環が起こる可能性がある。ペティス教授は「名目上、健全な企業にすら(信用収縮が)波及しかねない。規制当局は広がりを抑えるため素早く動かなければならない」とみる。
米ムーディーズは、中国当局が介入しても広範な企業に信用上の損失を与えるとみる。「政府の対応で経済的、社会的な不安定さを避けられても、経済的なコストは排除できない」とする。
仏ソシエテ・ジェネラルは「リーマン・モーメント(金融危機)ではなく経済(の成長)の試練」とする。信用収縮が中国の国内総生産(GDP)の4分の1を占める不動産セクターの縮小につながれば打撃は大きい。同社によると「住宅価格の下落は、住宅が70~80%を占める家計の資産にとって深刻な脅威」。恒大問題をどう処理するかが中国経済の先行きを握り、予断を許さない。

⚫️2021.9.27日本経済新聞📰
【サマリー】
中国不動産バブル崩壊懸念
格差是正を習近辺が掲げており、不動産価格高騰を容認できない状況にあることが拝啓

【思ったこと】
経営者、ビジネスマンにとって重要な外部環境。中国が大揺れすれば、円高、輸出減、さまざまな所に影響出る
かつての日本のバブル崩壊を踏まえて、慎重に対応して欲しい🇨🇳

【記事全文】


【北京=川手伊織】中国恒大集団の過剰債務問題をきっかけに、中国の不動産バブルへの懸念が高まっている。格差是正を掲げる習近平(シー・ジンピン)指導部にとって不動産価格の高騰を容認しにくくなっているためだ。経済規模に対する民間債務比率などの指標はバブル期の日本を超えており、軟着陸は容易ではない。対応次第では、中国経済が低迷期に入る可能性がある。
中国で不動産は拡大する格差の象徴だ。如是金融研究院によると広東省深圳市ではマンション価格が平均年収の57倍、北京市も55倍に達する。バブルだった1990年の東京都でも18倍で中国の大都市圏は庶民に手が届く水準ではない。
中国人民銀行(中央銀行)は2020年夏に、大手不動産会社が財務面で守るべき「3つのレッドライン」を設けた。自己資本に対する負債比率を一定水準以下に保つことなどを求め、借金を増やしにくくした。不動産へのマネー流入が細ることになる。
今年8月には習指導部が「共同富裕(共に豊かになる)」のため、格差是正を打ち出した。マンション価格の高騰の裏には富裕層の投機もあり、締め付けは避けられないとの見方が広がった。影響は不動産価格にも出始め、販売総額を総面積で割った単価は8月に前年同月比2.7%下落した。
価格上昇が鈍ったことで、負債総額が30兆円を超える恒大の経営が苦しくなるとの懸念が強まり、9月には日米などの株式相場が急落した。
恒大は保有資産や事業の売却を急ぐ。突発的な倒産のような事態を避けたとしても、中国の不動産を巡る先行きの不透明感を払拭するハードルは高い。不動産に偏った成長が逆回転しバブル経済が崩壊した1990年前後の日本を上回るサインがともっているためだ。
2008年のリーマン・ショックをはじめ、景気減速のたびに財政出動や、企業に積極的な投資を促して政府が掲げた高い成長目標を達成してきた。国際決済銀行(BIS)によると、金融機関以外の民間債務は最近5年間、年1割超のペースで増え、直近で35兆ドル(約3850兆円)を超える。特に不動産は銀行の関連融資残高が5年で2.1倍に膨らんだ。

この結果、中国の民間債務残高の国内総生産(GDP)比は220%に達し、日本がバブル崩壊直後につけたピーク(218%)を上回る。融資残高全体に占める不動産向けの割合も今の中国が3割弱と、21~22%台だった日本のバブル期より高い。
日本のバブル期は不動産だけではなく株式にもお金が向かった。1989年末に日経平均株価が最高値を付けるまでの10年間で、上昇率は5.9倍に達した。一方、足元の中国の上海総合指数の水準は10年前比で1.5倍程度にとどまり、不動産への集中ぶりが透ける。
上昇が続くことが前提だった住宅価格が下がり始めれば、借金で購入した富裕層や在庫を抱える不動産会社による売却が急増しかねない。価格の下落は債務を抱える不動産会社の資金繰りをさらに悪化させ、住宅着工などが細ることになる。
中国の住宅の新規着工面積は1~8月に前年同期比で1.7%減少した。米ゴールドマン・サックスの試算では、2022年の住宅着工が前年比3割減少するなどの深刻シナリオになると、22年の実質国内総生産を4.1%押し下げる。
日本の場合、土地と住宅の時価合計は1990年の2685兆円から、2005年までにGDPの約2倍にあたる1000兆円以上が失われた。
日本政府は積み上がった金融機関の不良債権を時間をかけて処理する道を探ったが、不良債権の増加が収まらず貸し渋りや資金回収が広がった。経済の収縮を招いて「負の遺産」の処理に10年以上を要した。
中国共産党は7月末の中央政治局会議で21年後半の経済運営方針に「不動産価格の安定」を盛った。過度な値下がりに対し直接介入を辞さない姿勢だが、不動産市況の調整は金融機関の不良債権増を通じて中国経済が長く低迷する要因になりかねない。

⚫️2021.9.24日本経済新聞📰


【上海=土居倫之、広州=比奈田悠佑】習近平(シー・ジンピン)指導部が唱える「共同富裕(ともに豊かになる)」と「金融リスクの解消」が中国の不動産会社の経営にのしかかっている。中国恒大集団は23日の人民元建て債の利払いを表明したが、過剰負債は不動産会社に共通する問題だ。第2、第3の「恒大」が現れ、経済の重荷になる恐れは否定できない。
「住宅の円滑な引き渡しは義務であり、理財商品の償還も最優先事項だ」。複数の中国メディアによると恒大の許家印・董事局主席は22日夜に会議を開き、存続に向けた意欲を改めて強調した。債務不履行はいったん回避できるとの見方から、23日の香港市場で恒大株は休場前の21日終値比で一時30%超も上昇した。
中国の住宅業界は過去20年近く繁栄を謳歌してきた。高度成長に農村から都市への人口移動が加わり、需要に供給が追いつかない状況が続いたためだ。かつての日本と同じように「住宅神話」を生み、投機熱を高めた。
上海市の労働者の平均年収12万4056元(約210万円、2020年)に対し、中古住宅の平均価格は100平方メートル換算で731万元(8月時点、捜房網調べ)と約59倍に達する。如是金融研究院によると、住宅が年収の何倍かを示す数値は広東省深圳や北京でも50倍を大きく超え、9~14倍の東京やニューヨーク、ロンドンを上回る。
中国の住宅市場を支えてきたのが銀行など金融機関だ。中国の不動産融資は6月末時点で50兆7800億元。10年で約5倍に膨らみ、中国の名目国内総生産(GDP)の約半分に相当する。
金融監督当局は危機感を強めた。中国人民銀行(中央銀行)は20年夏、大手不動産会社に対して守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。(1)総資産に対する負債(前受け金を除く)の比率が70%以下(2)自己資本に対する負債比率が100%以下(3)短期負債を上回る現金を保有していること――を指す。基準を破った企業への融資制限を銀行に指導する。
不動産調査の貝殻研究院によると、21年6月末で主要85社のうち基準を全て守っているのは4割に満たない。恒大も1指標しか守れていない。準大手以下はより厳しい。高級住宅の泰禾集団や、産業用地と住宅を一体整備してきた華夏幸福基業、四川省の四川藍光発展は相次ぎ社債の債務不履行を起こした。
習指導部は8月の中央財経委員会で「共同富裕」を掲げ、富裕層からの所得再分配を強化して貧困層を引き上げる方針を打ち出した。22年秋の党大会で3期目続投を視野に入れる習氏の旗印ともされる。庶民の購入負担が重い不動産は締め付けが避けて通れない。
同委員会は「金融リスクの解消」も議題とした。準大手の興業銀行は22日、「恒大向け与信を徐々に減らしている」と明らかにした。光大銀行も「顧客のリスクを圧縮・削減している」とする。銀行以外でも、恒大の大株主の華人置業集団は23日、保有する全株式を売却する方針を発表した。
中国の住宅高騰は資産効果を通じ個人消費を支えてきた。住宅バブルの崩壊は消費失速や金融機関の不良債権、不動産・建設業の雇用喪失など経済に広範囲に打撃を与える。その影響は世界に波及しかねない。

⚫️2021.9.21NewsPicks📱

【サマリー】
中国大手不動産🇨🇳
資金繰りに窮する💰
理財商品(中国の財テク商品)の期日がきており、本来投資家に現金で返済だが、
難しく、不動産等現物での返済を模索中

【思ったこと】
中国、不動産をはじめ、かなり問題の火種がくすぶっている
一帯一路構想も、たくさんひずみがあるのではないか?🤔
中国はじげて世界経済がよりどんよりなることも想定しておくべきか?🥲

【記事全文】

[北京 19日 ロイター] - 資金繰り難に陥っている中国の不動産開発大手、中国恒大集団は、理財商品の投資家に不動産での返済を開始した。同社の部門が明らかにした。
3000億ドル超の負債を抱える中国恒大は、流動性危機に直面。金融機関やサプライヤーへの支払いに向けた資金調達に追われている。23日には8350万ドルの社債利払いが期日を迎える。
同社の部門は対話アプリ「微信(ウィーチャット)」への18日の投稿で、現物資産との交換による理財商品の償還に関心のある投資家に対し、投資コンサルタントに連絡するか、地元オフィスを訪れるよう案内した。
金融ニュースの財新が19日に報じたところによると、中国恒大の理財商品の残高は推定400億元(60億ドル)。これらの商品は一般的に個人投資家が保有している。
顧客サービス担当者が19日にロイターに語ったところによると、具体的な支払い方法や詳細については、現地の状況に応じて決定されるという。
ロイターが先に入手した情報では、理財商品の投資家は返済の代わりに割引されたアパート、オフィス、小売スペース、駐車場を選択できる。中国恒大はこれについては確認していない。
同社は10日、期日を迎えた理財商品の全てについて、可能な限り早期に償還を行うと表明していた。

⚫️2021.9.16日本経済新聞📰

【サマリー】
中国景気減速🇨🇳
コロナにより、港湾作業が厳しくなり、物流停滞。
半導体不足。
これらが背景。

【思ったこと】
中国が落ち込めば日本も落ち込む
中国だけでなく、アメリカ、中国、中東、EU
世界を俯瞰して外部環境を把握しておいたほうが経営上いいかも😢

【記事全文】

北京=川手伊織】中国景気の減速感が強まっている。8月の工業生産は前年同月比5.3%増にとどまった。国際物流の停滞や半導体不足に直面するグローバル経済の変調を映す。7月下旬から新型コロナウイルスが再び広がる中、大規模な行動制限を繰り返す対応手法が消費の頭を押さえる。中国景気のもたつきが世界に波及するリスクが高まりつつある。

中国国家統計局が15日発表した8月の工業生産は、新型コロナの打撃から復調し始めた2020年7月(4.8%)以来の低い伸びとなった。季節の変動要因をならした前月比伸び率は0.31%とより鈍い。
背景の一つが海外経済の頭打ちだ。米欧では8月の購買担当者景気指数(PMI、総合、速報値)が悪化した。デルタ型の感染拡大が消費に及ぼす影響に加え、港湾の人手不足など供給網の混乱が長引いている。
浙江省寧波・舟山港の輸出コンテナ価格指数は新型コロナがまん延した昨年から上昇が続く。20年初と比べ4倍超に跳ね上がっている。
港湾手続きも遅れ気味だ。「米ロサンゼルスの港で陸揚げした輸出品が2週間足止めされたままだ」。天津市の貿易会社経営者は気をもむ。顧客が待つメキシコへの鉄道輸送のメドが立たない。
中国では新型コロナの再拡大を背景に港湾の検査が厳しくなっており、生産や輸出入の重荷となっている。「鉄道で欧州などに運び、そこから転送する荷主も出始めた」(物流コンサルタントの趙小敏氏)という。
世界的な半導体不足の影響も深刻だ。8月の自動車生産は前年同月より2割近く落ち込んだ。減少は4カ月連続だ。「半導体の供給拠点であるマレーシアなどで新型コロナの感染が広がり、減産圧力が強まっている」(中国汽車工業協会幹部)。21年の中国国内の販売台数は、前年比7%増の約2700万台とした予測を下回る可能性が大きくなっている。
加えて企業の体力をじわじわと奪うのが原材料高だ。投機資金の流入もあって一部の商品価格が高騰し、中国の中間財や素材に波及している。8月の卸売物価指数は前年同月比9.5%の上昇と、13年ぶりの水準を記録した。中小零細企業の収益を圧迫し、増産投資などを見送る動きもある。
液晶パネルや電池部材などで高い世界シェアを持つ中国の生産減速はグローバル経済の変調を映し出す。PMIの新規海外受注を示す指数は、8月まで4カ月連続で好不調の境目である50を下回る。3~6カ月後の輸出停滞を示唆する。
就業者の8割が働く中小零細企業は資金繰り難に苦しむほどで、雇用や賃金の足かせになっている。1~8月の都市部の新規雇用は938万人と、コロナ前の19年の同時期を5%近く下回る。
振るわない雇用、賃金は内需に波及する。消費動向を反映する社会消費品小売総額(小売売上高)は8月、前年同月比2.5%増にとどまった。全体の1割を占める飲食店が4.5%減と落ち込んだことが響いた。宿泊や運輸を含むサービス業の生産活動指数の上昇率も4.8%に縮まり、7%前後だったコロナ前の水準を下回った。
また、中国は感染者が出た地区の封鎖などでコロナ拡大を徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策を採ってきた。今夏の感染拡大でも省をまたぐ移動の制限や観光地の閉鎖が相次ぎ、接触型消費の重荷になった。
警戒態勢の強化と解除の繰り返しで消費は勢いを取り戻せない。丸紅中国の鈴木貴元・経済調査総監は「瞬間風速でみれば、内需の成長はほぼゼロになった」と語る。
追い打ちをかけるのが政府の規制強化だ。価格高騰に庶民の不満が強い不動産は、住宅ローンの総量規制やマンション取引の制限策を導入してきた。主要70都市の中古住宅価格は8月、前月比で下落した都市が上昇した都市を上回るなど需要は冷え込み始めている。
中国政府は地方政府のインフラ債発行を加速させて、公共事業で21年後半の景気を下支えする構えだ。ただ、グローバル景気の変調を背景にした踊り場から抜け出せなければ、影響はまた世界経済に跳ね返りかねない。

⚫️2021.9.14日本経済新聞🗞

【サマリー】
中国 不動産過熱の抑制へ

【思ったこと】
かつての日本のように、キュッと不動産バブルをしめつけると
景気が一瞬で冷える
中国が失敗すると影響大🇨🇳
要注視

【記事全文】
【香港=木原雄士】中国大手銀行の不動産関連融資が悪化している。中国当局が過剰債務企業への監視を強めているためで、中国工商銀行の不動産業向け不良債権比率は6月末に4.29%と前年同期の1.41%から急上昇した。不動産大手、中国恒大集団の経営危機が金融市場を揺さぶるなか、当局は格差是正にむけた資産価格の抑制と不良債権問題というジレンマを抱えている。
大手行の2021年1~6月期の業績は新型コロナウイルスからの経済回復を受けて改善した。工商銀、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行の純利益はそれぞれ前年同期比9~12%増えた。
4行合計の不良債権残高は6月末に1兆325億元(約18兆円)と20年末に比べて3.3%増だった。1年で22%増えた20年に比べて増加ペースが鈍った。不良債権比率は平均1.47%と、20年末に比べて0.08ポイント低下した。
工商銀の王景武副行長はオンライン会見で「感染状況が正常化する中、信用リスクの管理を強化した。返済猶予額の伸びも鈍ってきた」と説明した。
もっとも、改善はまだら模様だ。不動産業向けに限ると、中国銀の不良債権比率は4.91%と1年前の0.41%から跳ね上がった。リスク管理を担当する劉堅東氏は「海外資産には一定の劣化圧力がかかる。コロナの影響を大きく受ける航空や不動産、輸出企業に注意が必要だ」と話す。


中国当局は不動産の投機的な取引を取り締まるため、融資制限など開発業者への締め付けを強めている。米ジェフリーズのアナリスト、陳●(おんなへんに朱)瑾氏は「当局の姿勢はかつてなく厳しく、影響が長引きそうだ。景気悪化に不動産の締め付けが重なれば、来年は厳しい状況になる。全体の不良債権比率が上がる可能性がある」と指摘する。
格付け会社フィッチ・レーティングスも「一部の開発業者は流動性や借り換えのリスクに直面する」と警告した。銀行の融資姿勢が厳しくなり、開発業者の経営悪化が不動産価格の下落につながる可能性もある。中国当局は不良債権の受け皿会社、中国華融資産管理の経営悪化を受けて、金融リスク管理に神経をとがらせる。
地域ごとの傾向も一様ではない。遼寧省や吉林省など経済成長が遅れる東北部で資産内容の劣化が目立つ。工商銀の場合、東北部の不良債権比率は3.9%と、広東省など珠江デルタ(0.96%)より突出して高く、20年末の3.38%に比べても悪化した。
地場企業向け貸し出しが多い中小金融機関も厳しい。香港紙・東方日報によると、香港上場の中国本土銀行のうち4割が、6月末の不良債権額、比率の両方が20年末に比べて悪化した。遼寧省錦州市を拠点とする錦州銀行の不良債権額は半年で22%増えた。不良債権比率も不動産(7.7%)や個人ローン(27%)などが高い。


習近平(シー・ジンピン)指導部は「共同富裕(ともに豊かになる)」を旗印に、格差是正を進める。高騰する不動産価格の抑制は優先課題の1つだ。半面、急激に締め付ければバブルが崩壊し、経済全体への悪影響は避けられない。
日本経済の長期停滞の起点となったバブル崩壊も、引き金を引いたのは旧大蔵省が1990年に導入した不動産融資の総量規制だった。金融機関に対し不動産向け融資の伸び率を総貸し出しの伸び率以下に抑えることを求め、金融機関が一斉に抑制に動いたことで貸し渋りや貸しはがしにつながった。
中国の金融監督当局も21年1月から銀行の住宅ローンや不動産会社への融資に総量規制を設けた。過剰債務を抱える開発業者にも厳しい目を向ける。
中国当局は過度に経済を冷やさずに、バブルをおさえ込む難しいかじ取りを迫られている。

⚫️2021.9.8日本経済新聞📰

【サマリー】
中国、国の統制強める🇨🇳
芸能等にも介入
自由が制限されると、イノベーションがとまる
中国が内向きになると世界経済に影響

【思ったこと】
中国動向は、気にしておくべき重要な外部環境。思いもよらぬ方向への舵取りも考えられるため、要注意。


【記事全文】
中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が社会や思想への統制を強めている。経営者批判に加え、芸能や教育など若者の思想形成に影響力を持つ分野への介入が相次ぎ、中国はにわかに「文化大革命」(総合2面きょうのことば)の様相も帯びる。米国に迫る経済大国となった中国が内向きに転じれば世界も無傷ではいられない。
4日、中国のSNS(交流サイト)「微博」がこんな声明を出した。「非理性的なスター追従行為に断固反対し厳正に処理する」。同日、あるアイドルの誕生日を祝うファンクラブが飛行機の外観を飾るという派手な行動で注目を集めていた。
折しも中国はファンクラブの資金集めなどに対する規制を出したばかり。背景には熱狂的にアイドルを崇拝し、共産党の思想に沿わない集団を生むことへの懸念がある。微博はファンクラブ中心人物のアカウント利用を60日間停止し、党の意向に迅速に対応した。
8月下旬には複数の著名芸能人が脱税などを理由に罰せられたり失職したりした。党中央宣伝部は9月2日、芸能人や企業を党が厳しく管理し思想教育を強化すると通知した。中国の芸能界は今後、メディアと並び名実ともに「党の舌(党の宣伝機関)」となる。
文化を通じた社会統制は1960~70年代の文革をほうふつとさせる。毛沢東に扇動された若者らが指導者や知識人を攻撃した。文革10年間のうち3年でマイナス成長となるなど経済は壊滅的打撃を受けた。
その後、指導者となった鄧小平は経済再建へ改革開放を始めた。もし今、中国が「富める人らをたたく」発想で先祖返りするならば、経済成長は止まり、習指導部にも負の影響は及ぶ。それでも統制強化は止まらない。
8月末、評論家の李光満氏の論文が注目を集めた。芸能界やIT業界への介入を「重大な変革または革命」と賛美する内容だ。異例だったのは個人の論文を党傘下の代表的メディアがそろって転載したこと。京劇を批評する記事が号砲となった文革を想起させた。
教育も統制が進む。9月の新学期からは小中高で「習近平思想」が必修化された。道徳の授業で学ぶ学生読本には習氏の地位の重要性や「習氏の金言」が並ぶ。個人の名を冠した思想教育は個人崇拝と隣り合わせだ。「毛沢東に権力が集中しすぎたゆえに招いた文革の再来が恐ろしい」。共産党関係者は声を潜める。
企業家への締め付けも続く。8月下旬の微博では突然アリババ集団の話題が盛り上がった。その頃「粛清」された芸能人にアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏と関係が近い著名人が複数含まれ「マー氏の立場も危うい」との受け止めが広がったためだ。
グループのスマホ決済アプリ「支付宝(アリペイ)」から「お金を引き出しておくべきかどうか」。サービス存続を危惧する利用者たちはアプリの凍結で資金を失いかねないとの不安を抱いた。
中国のIT大手は、格差是正をめざす習氏が掲げる政策「共同富裕」のため競うように巨額の寄付に走る。企業家を動かす原動力が恐怖と不信になれば中国のイノベーションも止まりかねない。
文革は毛が政敵を追い落とす政治闘争に主眼があった。今回もそうした側面は否定できない。IT企業の経営者らは江沢民(ジアン・ズォーミン)元国家主席と関係がある。芸能界は江氏側近の曽慶紅元国家副主席一族が強い影響力を持つ。
「文革2.0」がもし発動されれば中国の地殻変動につながる恐れもある。内向きの中国は世界のリスクでもある。 

⚫️2021.9.1日本経済新聞📰

「サマリー」
中国も国をあげてDX推進
ただ、中国政府がからむと、うまくいかない可能性。民間に任せた方がよい可能性。

「思ったこと」
大国中国もデジタル化は気にしてる。
日本政府もデジタル庁たちあげなので注力する方針だけど、民間のDX企業支援もこれから増えるかな🧐


「記事全文」

【北京=多部田俊輔】中国政府は1日、データの統制を強化するデータ安全法(データセキュリティー法)を施行する。データにかかわる法整備を進めることで国内の利用拡大を促し、統制下での成長を目指す。2025年にデジタル経済の規模を1000兆円規模まで引き上げ、先行する米国に対抗することをめざす。

新法は企業や国などの競争力を左右するデータの取り扱いにかかわる中国で初めての包括的な法律だ。第1条で「データの利用を促進し、国家の主権や安全を維持するために本法を制定する」と明記する。
国内で扱うあらゆるデータが規制対象で、収集や保存、利用など中国国内で扱われるデータのすべての過程を当局が管理する体制となる。アリババ集団など中国のネットをけん引してきた民営企業からデータを巡る主導権を奪い、統制下での成長をめざす。
具体的には、国がデータにかかわるインフラ整備を推進することに加え、データを重要性で分類してデータを取引する管理制度を確立し、データ取引市場の育成をめざす。企業が当局の指導下で、データを取り扱ってビジネスにつなげる未来図を描く。
データ安全法について、中国の東方証券は関連するリポートで「安全はデータ市場の成長に重要な条件であり、同法はデータ産業の良好な発展を推進する」と指摘する。中国のネット企業幹部も「データの分類や取り扱いの法整備が進めば、データの活用や売買が加速するだろう」との見方を示す。
習近平(シー・ジンピン)指導部は17年にサイバー空間を統制するインターネット安全法を施行したのを手始めに、データに関連する法整備を本格化した。データ安全法と、11月1日に施行する個人情報保護法を含めた3本でデータ統制の法的枠組みを完成させた。
データ統制3法にもとづく細則などの整備も加速している。9月1日には通信やエネルギーなど国家の安全にかかわる重要インフラ施設のデータにかかわる条例も同時に施行し、10月1日には自動車の走行データの管理を定める規定を施行する。
習指導部が狙うのは党政府主導でデータ分野で先行する米国を追いかけ、米国の制裁などの影響を受けない独自のデジタル経済圏を構築することだ。習国家主席は「情報掌握の多寡は国家のソフトパワーと競争力の重要な指標となる」と指摘したことがある。
中国政府直属機関の中国情報通信研究院によると、中国のデジタル経済の規模は20年で5兆3500億ドル(約600兆円)で、米国の4割程度の規模にとどまる。25年には20年比で5割増以上の60兆元(約1000兆円)をめざす。
同研究院が示すデジタル経済の定義は通信やネットのサービスに加え、デジタル技術を使って成長した製造業や流通業なども含む。習指導部はデータ統制3法だけでなく、25年までの5カ年計画でも人工知能(AI)や量子通信、データをやりとりする通信機器の心臓部である半導体の開発を盛り込んだ。
データを扱う国有企業の強化も進める。6月には軍事向けも手がけ、米国の規制対象となっている国有IT(情報技術)大手の中国電子科技集団と中国普天信息産業集団の経営統合を認めた。2社の売上高の合計は5兆円前後に達することから、規模の拡大で開発力を高める狙いだ。
米中対立が先鋭化するなか、データ統制3法は米国に対抗することも念頭に置く。新法では中国の国外でも中国の国家安全を損なう場合は法的責任を追及できるほか、外国政府がデータに関する投資や取引で中国に差別的な措置をとれば、対抗措置を講じることができるようにした。
米国企業との向き合い方も変化する。習氏の側近とされる陳敏爾・重慶市トップが始めた産業博覧会でも、これまでは米国企業のトップらの登壇が目立っていたが、今年はほとんど出席せず、ロシア、中央アジア諸国などとつくる上海協力機構(SCO)との共同イベントとなった。習氏自らが旗を振る広域経済圏構想「一帯一路」との連携に軸足を移す。
中国は「ネットの長城」と呼ばれるネット監視システムを構築し、グーグルやフェイスブックなどの米国のネット大手の多くを排除し、中国のアリババや騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)などの民間企業を育成してきた。
中国のネット社会の成長は中国の民間企業の貪欲な取り組みや競争などがもたらした。データの重要性が高まるなか、習指導部は党や政府が統制する形でネット社会やデジタル経済の成長をめざすが、「民間企業のアイデアとやる気をそいだら、従来のような成長は難しい」(外資系企業幹部)との見方もある。

⚫️2021.9.1日本経済新聞📰

「記事全文」

中国恒大集団のマンション販売拠点(広東省仏山市)
【広州=比奈田悠佑】中国の不動産大手、中国恒大集団が経営問題に揺れている。2020年末に7000億元(約12兆円)まで膨らんだ有利子負債の圧縮を急ぐ一方で、取引先による代金未払いの告発や、金融機関による預金の凍結など、資金繰りの悪化を連想させる事態が相次ぐ。業界を代表する恒大の経営の行方を巡っては、当局が金融システムへの波及を懸念している。

恒大が31日発表した21年1~6月期決算は、物件の販売単価の下落が響き、売上高は2226億元と前年同期に比べて17%減少した。出資先の保有株売却などで、純利益は2.2倍の143億元を確保した。21年6月末の有利子負債は約5700億元となり、20年末から約2割減った。
資金確保に奔走
「グループの置かれている状況は本当に苦しい」。マンション販売拠点の従業員は天を仰ぐ。恒大は負債圧縮のため、ここ数カ月にわたり、物件の「投げ売り」に走っている。地方では1年前の半値で売られる物件も登場している。7月、1平方メートル当たりの平均販売価格は8055元と、前年同月比14%下落した。
身を切る安値攻勢により、21年1~6月期は不動産事業単体では41億元の赤字に陥った。恒大が目の前の業績を犠牲にしてでも、在庫処分に走るのには理由がある。
中国人民銀行(中央銀行)は20年8月、大手不動産会社に対し、守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けると通達した。資産に対する負債比率や短期有利子負債に対する現金など3つの基準を設け、クリアできなかった数に応じ、金融機関などからの借り入れ規模を制限する方策だ。
慌てた恒大が「金策」に走ったのも無理はない。証券会社などの調べによると、20年末時点で3つすべての基準をクリアできていなかった。当局の要求に合わせて財務基盤の改善を一気に進めたい恒大だが、足元では運転資金の逼迫を想起させるトラブルが相次ぐ。
「何度も手紙を送り支払いを求めたが、金がない、という理由で断られた」。安徽省の石炭採掘会社、淮北鉱業は憤る。7月末に傘下の建設会社が恒大の関連会社を提訴すると発表した。工事代金や遅延金で合計約4億元の支払いを求める。
広東省を地盤とする地銀、広発銀行は7月、裁判所を通じて恒大の一部預金を凍結した。融資契約を巡るトラブルがあったとみられる。当初は恒大側も広発銀を提訴する構えを見せたが、その後は「双方で十分に協議することで適切に解決した」とトーンダウンした。
恒大は1996年、広州市で従業員10人弱の小さな会社で産声を上げた。低価格の小型マンションで足場を築き、創業者で経営トップである許家印・董事局主席の強烈なリーダーシップで、短期間で中国を代表する不動産会社に成長した。サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を2度制覇した名門クラブ「広州FC」を保有することでも知られる。
成長の種を売却
ただ足元は現在の窮地を象徴するように、貴重なグループ資産を売却せざるを得ない状況に陥っている。不動産から次へ――。許氏が次代の成長の種と位置付けた資産を次々と切り離している。
8月1日には出資する映画の制作配信会社、恒騰網絡の発行済み株式約10%を同じく恒騰の大株主であるネット大手、騰訊控股(テンセント)などに約33億香港ドル(約460億円)で売却すると発表した。事業多角化のため、許氏の肝煎りで立ち上げた電気自動車(EV)開発の中国恒大新能源汽車集団の一部資産についてはスマートフォン大手の小米(シャオミ)と「初歩的な交渉をした」ことを明らかにした。
綱渡りともいえる恒大の経営について、中国政府も強い警戒感を抱く。
「経営安定の維持と債務リスクの解消が不可欠だ」。8月19日、人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会は恒大に通達した。過剰債務の問題が金融市場を揺るがしかねないとみるためだ。中国政府は航空業中心の複合企業、海航集団など借り入れに依存し、規模拡大にまい進した企業に対し厳しい姿勢を見せてきた。
政府からの「警告」を受け、恒大の経営てこ入れは待ったなしの状況だ。ただ業界内で財務不安を抱えるのは恒大だけではない。物件販売面積で4位の融創中国、住宅のほかオフィスも手掛ける緑地控股集団なども重い債務を背負っている。
中国国家統計局によると、7月の主要70都市の新築住宅価格は、前月比で価格が上昇した都市の数が51と、6月から4都市減った。投機対策で住宅取引に関わる規制が強化されているためだ。オフィス物件も都市部で空室率が高止まりしている。不動産市況は潮目の変化に差し掛かり、かじ取りを誤れば、経営に大きなダメージを受けかねない状況となっている。

210712日系

中国企業がアジアやアフリカの土地を囲い込んでいる。国外で過去10年に取得・貸借した面積を集計すると米国をはじめ他の主要国を圧倒する。食糧や資源の供給源である新興国・途上国が経済的に支配されることへの懸念や、安全保障上の警戒論も高まっている。
ミャンマー北部カチン州。市街地から離れるとバナナ農園が視界に広がる。高さ3メートルほどの木が密集し、濃い影を落とす。2015年ごろから開発が加速し、見通しの良かった景観が一変した。
非政府組織(NGO)などの調べでは農園の多くに中国資本がかかわる。国連統計で13年に150万ドルだったバナナの輸出額は20年に3.7億ドルと250倍に増えた。ほぼ全量が中国向けだ。現地住民によると「2月のクーデター後も農園はこれまで通り運営されている」。国軍にも貴重な税収源になるためだ。
中国資本で地域が変わる光景は各地に広がる。天然ゴム産地のベトナム南部ビンフォック省では75ヘクタールもの土地で大量の豚が飼われ始めた。中国畜産大手、新希望六和が19年に設けた養豚場だ。同社は「稼働から1年が過ぎ、体制が整ってきた」という。ベトナム中部や北部にも拠点を広げた。

欧調査機関ランドマトリックスによると11~20年に中国勢が押さえた世界の農業・林業・鉱業用地は648万ヘクタール。北海道の4分の3超の規模で、英国勢の156万ヘクタールや米国勢の86万ヘクタール、日本勢の42万ヘクタールを大きく上回る。
中国勢が国外に触手を伸ばす背景には経済発展で膨らむ内需がある。土地を囲えば、世界的に需給が逼迫する資源の安定調達にもつながる。
林業はコンゴ民主共和国の土地が過半を占める。木材価格が高騰するウッドショックが各国に広がるのを尻目に、現地では中国企業の万鵬が大量の木材を自国に輸出する。在日コンゴ大使館は日本経済新聞の取材に「契約についてはノーコメント」と答えた。

鉱山の囲い込みもある。米アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所などの調査では、19年に中国五鉱集団がタンザニアの鉱山に2.8億ドル、20年に中国有色鉱業集団がギニアの鉱山に7.3億ドルを投資した。電気自動車(EV)の蓄電池などに必要な鉱物の確保が狙いとみられる。
進出先の国は潜在的リスクを抱える。経済効果が大きいほど依存も深まるからだ。かねて中国は広域経済圏「一帯一路」構想を掲げる。開発に伴って現地国側が重い借金を負い、支配から抜け出せなくなる「債務のワナ」の問題もある。
スリランカでは5月、最大都市コロンボ郊外の高速道路を中国港湾工程(CHEC)が受注した。建設後そのまま所有し、利益を回収した上で18年後に引き渡す。CHECが同国南部の港を整備した際は中国が融資し、返済に窮したスリランカが99年間の運営権を譲渡した。債務のワナの典型だ。今回の道路も入札が不透明との批判がくすぶる。

対岸の火事とも言っていられない。日本は6月、安全保障で重要な土地の取引を規制する新法ができた。中国を念頭に外資の不透明な進出を防げるようにする。既に北海道の航空自衛隊千歳基地の周辺などで外資が土地を取得した事例がある。
一般の森林などにはまだ網がかかっていない。農林水産省によると国内で外資が取得した農地は46ヘクタール、森林は7560ヘクタール。他に「名義が日本人でも背後は中国資本という例がある」(公安関係者)。目的が分からないことによる不安を指摘する声もある。土地取引に詳しい姫路大学の平野秀樹特任教授は「無秩序な囲い込みを防ぐには一層の規制強化が不可欠」と話す。
(千葉大史、大連=渡辺伸、ヤンゴン=新田裕一)

210706日経
アメリカへの情報流失懸念

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73596400V00C21A7EA2000

210706日経
対中包囲網打破のため近隣への経済支援策

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73564300V00C21A7FF8000


210628日経
共産党100年 開放から統制へ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73321720Y1A620C2MM8000

181207 日経

▽…中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる産業政策で、2015年5月に発表した。次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定し、製造業の高度化を目指す。建国100年を迎える49年に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を目指す長期戦略の根幹となる。

▽…第1段階である25年までの目標は「世界の製造強国の仲間入り」としている。品目ごとに国産比率の目標を設定しており、例えば産業用ロボットでは「自主ブランドの市場占有率」を25年に70%とした。次世代通信規格「5G」のカギを握る移動通信システム設備では25年に中国市場で80%、世界市場で40%という高い目標を掲げた。中国政府は中国製造2025の策定後、関連産業に対する金融支援や、基盤技術の向上支援などの施策を相次ぎ打ち出している。
▽…中国と技術覇権を争う米国は中国製造2025の中身に警戒を強めている。18年に入ってから開かれた米中貿易協議の中で、米国は中国に対し、関連産業への補助金といった政府支援の中止など計画の抜本的見直しを要求した。中国は応じない姿勢を続けている。

190121日経
北京=多部田俊輔】中国政府は2019年の鉄道投資を過去最高の8500億元(約13兆7千億円)規模まで引き上げる方針を固めた。国内総生産(GDP)の1割を占めるとされる自動車のほか、家電の分野で販売補助金などの消費刺激策も導入する。投資拡大と消費刺激の両面で、米中貿易摩擦で先行きに不透明さが増す経済の成長を下支えする。

北京市内で進む鉄道建設の現場
中国の鉄道事業を担当する中国鉄路総公司の幹部が「19年の投資額は8500億元に達する可能性が高い」との見方を示した。18年は鉄道投資額を年初計画の7320億元から約1割上積みし、8028億元とした。19年は18年実績比約6%増を見込む。

中国は08年秋のリーマン・ショックで、景気回復へ鉄道投資を拡大した。10年は8426億元に達したが、11年の浙江省での高速鉄道衝突・脱線事故を受け、高速鉄道投資を圧縮。その後、14年からは8千億元台前半で推移してきた。
中国鉄路総公司がこのほどまとめた年間建設計画によると、新規建設は前年比45%増の6800キロメートルの見通し。高速鉄道は2割減の3200キロメートルに抑制するが、山間部を走りトンネルが多くなる重慶―雲南省昆明などの路線に着工するため、総投資額が大幅に増える。
湖南省と江西省を結ぶ路線や、四川省と重慶市を結ぶ路線なども予定している。習近平(シー・ジンピン)最高指導部が旗を振る新都市構想「雄安新区」と河南省商丘を結ぶ路線にも着工する。四川省とチベット自治区を結ぶ路線も着工の可能性がある。
中国政府は鉄道投資で景気刺激を狙うが、鉄道事業の経営状況は厳しい。18年1~9月の運輸収入は9%増の5700億元で、最終赤字だった。中国鉄路総公司の負債総額は5兆元を超えており、19年の投資拡大で財務改善が遅れる可能性もある。
消費刺激策の検討にも入った。中国経済のかじ取り役を担う国家発展改革委員会の寧吉喆副主任は中国国営中央テレビのインタビューで、自動車と家電分野で購入補助金の支給を含む消費刺激策を導入する考えを示した。
自動車では09~17年、小型車の自動車取得税の減税や農村での補助金支給を実施している。18年は補助金がなくなったため、28年ぶりの新車販売減につながった。寧副主任は農村部での販売促進を念頭に置いている。「補助金規模は300億元に達する」(証券アナリスト)との見方がある。
家電分野では09~13年に実施したエネルギー効率が悪い旧型からの切り替え補助や、農村での販売補助と同種の政策を検討しているもよう。投入額は200億元とみられている。
背景には、アパートなどの資産価格高騰が演出した「背伸び消費」が曲がり角を迎え、個人消費が振るわない現状がある。18年11月の小売売上高(社会消費品小売総額)の伸びは前年同月比8.1%と15年ぶりの低さだった。統計の信頼性が高いとされる中堅以上の小売業の伸びは2.1%と過去最低を記録している。

190122日経
北京=原田逸策】中国経済の減速が鮮明だ。2018年の実質成長率は6.6%と28年ぶりの低水準で18年10~12月期は6.4%に落ちた。7~9月期比での低下幅は0.1ポイントにすぎないが、消費などの主要指標は米中貿易戦争の影響が本格化した秋以降に急変している。中国の債務問題(総合2面きょうのことば)も尾を引き、19年も成長の下振れは必至だ。危機感を強める中国当局は減税と金融緩和で景気の腰折れ回避を急ぐ。(関連記事国際1面に)

中国政府は景気対策でインフラ投資も積み増す(河南省鄭州市の高速鉄道建設現場)
中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は21日、政府高官らを集めた党会合で「経済が直面する国際環境と国内条件は深刻で複雑な変化が生じている」と強調した。経済運営に細心の注意を払うよう指示した。

通年の成長率は天安門事件の余波で経済が低迷した90年以来の低水準。昨年10~12月の成長率はリーマン・ショック直後の09年1~3月以来9年9カ月ぶりの低さだ。ただ、実態の深刻さを見るには個別の指標を見る必要がある。
例えば小売売上高。統計の精度が高い中堅以上の伸びは春先の9%から11、12月は2%台に失速し、物価上昇を考えると実質ゼロ成長だ。輸入も10月の21%増から12月は8%減に一気にマイナスに転じた。卸売物価指数の上昇率も12月は0.9%まで縮んだ。内需の異変がうかがえる。
秋からは主要製品の生産量も落ちこんだ。ロボットや工作機械など米国の追加関税の対象製品のほか、スマートフォン(スマホ)や自動車の生産も前年水準を下回った。販売不振で製品在庫が積み上がり、減産を迫られたとみられる。
中国中部、河南省鄭州市。1月初め、米アップルのiPhoneを組み立てる世界最大の工場を訪れると閑散としていた。工場を運営する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は昨年10月ごろから工場従業員を5万人規模で減らしたという。雇用悪化は消費のさらなる押し下げ要因となる。
影響は日本企業にも及ぶ。日本電産は中国での車載や家電のモーター販売が減速、19年3月期の業績予想を下方修正した。産業用ロボットの安川電機も10日、今期2度目の業績下方修正。「11、12月に尋常でない変化が起きた」(日本電産の永守重信会長)とみる。
18年初から本格化した債務削減も響く。当局が締めつけた「影の銀行」からの調達額は17年の3.6兆元(約57兆円)から18年は返済が借り入れを上回った。約100兆円もの信用収縮は地方政府や民間企業を直撃。インフラ投資は17年の19%増から18年は4%増に失速、債券の債務不履行も過去最高を更新した。
足元の景気減速は中国経済が厳しかった15年の水準近くまで悪化しつつあるが、内容は異なる。15年は過剰設備を抱えた重厚長大の国有企業が不振だが、18年は輸出依存度の高い川下の民間企業や外資が苦しい。多くのエコノミストは19年の中国の成長率を6%強と見込む。現時点では中国当局は公共投資のバラマキには慎重だが、成長率が6%を一時的にでも割り込めばなりふり構わない対策を取る可能性がある。

190122日経
中国の2018年の実質成長率は前年比6.6%と28年ぶり低水準だった。地方政府のインフラ投資の伸びが失速したのが一つの原因だ。どうしてこんなことが起きたのか。建国の父、故毛沢東主席の古里である湖南省湘潭市を昨年末に訪れた。(1面参照)

財政難で民家の立ち退き工事が止まった(湖南省湘潭市)
省都、長沙市の空港から車で1時間。1500年の歴史を生かして観光業を育てようと市が昨年に窯湾地区で開いた「歴史文化街区」を訪れた。

道路工事もあちこちで止まっていた(湖南省湘潭市)
古い街並みを再現してあるが、入り口付近の寺院の建設が終わっておらず囲いがしてあった。中をのぞくとクレーンも動いていない。作業員は「工事は12月初めから止まっているよ」と話した。
遅れる立ち退き

街区で商業施設の誘致を担う甘さんは「工事は1期が終わったが、2期と3期は計画を練り直している。民家の立ち退きも遅れている」と語った。2期工事の現場を訪れると多くの民家が依然取り壊されずに残っていた。半分ほどはまだ人が住んでいるようだ。
立ち退き工事は止まっており、現場事務所も閉鎖されていた。住民の一人は「店も閉まって隣人もいないので生活が不便。早く補償金をもらって移りたい」とこぼした。
窯湾地区だけではない。街を回ると囲いがしてあるが、音がしない工事現場ばかり。道路工事の現場では、舗装車が放置され「貸します」とフロントガラスに電話番号が書いてあった。湘江沿いの遊歩道の整備では看板が打ち捨てられていた。タクシー運転手の谷さんは「工事はあちこちで止まっているよ」と話す。
市中心部の「湘潭城郷建設発展集団」を訪れて理由がわかった。1階入り口に「18年10月から立ち入り調査する」との張り紙。日本の会計検査院にあたる国家審計署の調査を受けたのだ。
同集団は市が設立した「融資平台」と呼ばれる会社。資金調達に厳しい制約がある市本体に代わり、債券発行などで資金を集めてインフラ建設に回す市の別動隊だ。歴史文化街区や道路など市のインフラ事業の多くは同集団が発注元になる。
審計署は昨年12月の調査結果で「同集団が市の道路を売り14億6千万元(約235億円)を不正に調達した」とし、市に13億元の「隠れ借金」があると認定した。地方政府が融資平台の借金返済を助けるために資産を譲ることを禁じた、17年の政府通知に違反した。
隠れ借金の使い道は「既存債務の返済」だった。違法な借金をしなければ昔の借金を返せないほど湘潭の財政は厳しい。
国盛証券によると、湘潭の融資平台が発行した債券の元利払いは19年に166億元。一方で税収、土地売却代金など収入から人件費など必要経費を引いた「借金返済能力」は18年に96億元。元利払いは返済能力の1.7倍で全国に約300ある市で最悪の水準という。
5年に1度開かれる17年の全国金融工作会議は隠れ借金は「退職後も死ぬまで責任を追及する」と決めた。地方債務の急増は金融危機を招きかねないと危惧したからだ。「終身問責」は地方政府を萎縮させ、インフラ投資が17年の19%増から18年の4%増に失速する原因となった。
それでも湘潭が「隠れ借金」をしたのは目の前の資金繰りすら思うに任せないからだが、代償は大きかった。1月15日の湘潭市の政府活動報告で談文勝市長は「10年間の債務返済計画を策定した。市の投資事業は92%減らす」と明かした。域内総生産(GDP)、固定資産投資など多くの数値目標も18年は達成できなかった。
資金繰り厳しく

中国は景気減速に対応するため、地方のインフラ投資も積み増す方針で、中央政府は事業認可を加速している。一方で財政省の許宏才部長助理は1月に「地方の隠れ借金は厳しく抑える」と語った。国が投資案件を認可しても地方がカネを手当てできないのではないか。湘潭の現状からはこんな疑問が浮かんでくる。
「毛主席の古里がこんなありさまでは国もメンツがない。国が助けるのでは」。谷さんは楽観論を口にしたが、街の工事で粛々と進むのは道路上の最新型監視カメラの取り付けくらいだった。

190128
日刊工業 ヤフーニュース
米中貿易摩擦をきっかけに中国経済の減速が鮮明になっている。国内総生産(GDP)の伸び率は28年ぶりの低水準で、新車販売台数も振るわない。日本企業の産業機械や電子部品などの受注動向にも影響が顕在化しており、各社は警戒感を強めている。

 「資本財を中心に受注が減少し、輸出にも影響する可能性がある」―。日銀の黒田東彦総裁は23日の会見で、中国経済の行方についてこう懸念を述べた。

 実際、各種統計を見ても、中国経済が減速する懸念は高まっている。21日に中国国家統計局が公表した2018年の実質GDP(物価の変動を除く)は前年比6・6%増であり、17年から0・2ポイント減少した。後退するのは2年ぶりとなり、天安門事件の影響で経済が悪化した90年以来、28年ぶりの低水準で着地した。

 成長減速の主因は米国との貿易摩擦だ。米国と中国は7―9月に最大25%の追加関税を相互に掛け合い、中国製品は総額2500億ドル(約27兆円)分が追加関税の対象となった。対象製品の対米輸出は落ち込みが顕著となり、貿易摩擦の影響が鮮明化。中国国内に消費や生産の冷え込みをもたらした。

 19年も成長減速が続くとの見方は強い。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、19年の実質GDPを6・3%増程度とさらなる減少を予想。

 ただ、「19年は中国建国70周年を迎える節目の年。お祝いムードを高めるためにも、景気刺激策を矢継ぎ早に打ち出している」と指摘。政府は金融緩和や大規模減税、インフラ投資といった刺激策を講じており、年後半には一部持ち直しの動きもみられそうだ。

 また、日銀の黒田総裁も、「中国政府は財政面でテコ入れをしている。(中国の)急激な減速が世界経済に大きな影響を与える可能性は今のところ少ない」と同様の見方だ。

 製造業の先行指標となる工作機械の落ち込みが顕在化しているものの、機械受注全体の総額は堅調だ。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、「川上に位置する工作機械は弱含んでいるが、中・下流の産業機械は広範な領域で伸びている」と指摘。足元では最終製品需要の減退にまでは至っておらず、「企業が設備投資全体を絞り込む段階にはまだない」と分析する。

 ただ、2月末が期限の米中貿易協議などの見通し次第で状況は流動的だ。仮に協議がまとまらず、世界経済の減速が鮮明化すれば、企業の投資抑制の姿勢は加速。世界経済の失 速が現実味を帯びる。

【工作機械】市場、もう一段下がる懸念

 「底に近いところではあるが、まだ底ではない」。日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長(東芝機械会長)は、23日の定例会見で中国の工作機械市場がもう一段下がるとの懸念を示した。

 同日公表の2018年12月単月の中国受注が約150億円なのに対し、日工会は19年の月平均は130億円ほどで推移すると想定する。18年暦年の中国受注は2850億円だったが、19年は約1500億円に落ち着く計算だ。過去5年間では16年を下回り、最も低い。

 中国市場の減速は米中貿易摩擦が引き金だ。設備過剰を抑える緊縮策の影響もある。ただ、人手不足を解消する新鋭設備の潜在需要は依然大きい。19年は「待ち」だとして、この点で有利な日本勢の成長余地まで消失したわけではない。
自動車、電子部品…日本の強い業種にも影
 【自動車】新車販売、28年ぶり前年割れ

 中国汽車工業協会が発表した18年の中国の新車販売台数は、前年比2・8%減の2808万600台と28年ぶりの前年割れとなった。

 17年に販売を押し上げた減税効果がなくなり、反動減が出た。また米中貿易摩擦により景気の先行き不安が高まり、新車市場に水を差したとみられる。19年は大崩れはしないものの停滞は続きそうで、前年並みか微増とみる向きが多い。

 中国の新車販売は18年12月まで6カ月連続のマイナス。18年は日系メーカーでもホンダ、マツダ、SUBARU(スバル)は前年割れだった。

 19年は自動車メーカーに対して電気自動車(EV)など新エネルギー車の生産・販売を義務付ける「NEV規制」が始まり、その市場への影響も注目される。

【建機】3月の全人代まで判断待ち

 建設機械業界は年間で需要が最も高まる2月の春節明け商戦を注視する。18年末に開かれた中国の経済運営方針を決める中央経済工作会議では、財政政策を通じて内需の下振れを防ぐ方針を打ち出したものの、不透明感が強まっているためだ。

 コマツの大橋徹二社長は、「中国市場は伸びるのか、減少するのかわからない。3月の全人代(全国人民代表大会)での方針を見極める」と説明する。コベルコ建機の楢木一秀社長も、「需要が若干下がるとみている。米国との関係悪化が懸念される」と指摘する。

 一方、中国は20年にも新たな排ガス規制を導入する計画で、19年に建機の駆け込み需要が起きる可能性がある。もともと他地域に比べて需要が読みにくく、各社は気をもむことになりそうだ。

【電子部品】昨年末からガタンと失速

 電子部品業界では、日本電産が米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速を受け、顧客の需要減や大規模な在庫調整を理由に、19年3月期連結業績予想(国際会計基準)を大幅に下方修正した。永守重信会長は「18年11月、12月と、ガタンガタンと落ち込んだ」と表現した上で、「(中国経済の減速の影響が)もう少し後に来ると思ったが、ずいぶん早く来た」と状況を説明する。

 電子デバイス商社のサンワテクノスの田中裕之社長も「(顧客が)工場自動化(FA)機器の設備投資を(どの市場で行うか)先延ばししているようで、その影響が昨年末から出ている」とする。ただ、足元の状況について永守会長は「家電関係で注文が復活しだしたところもある」と述べている。

190130日経
中国広東省の深圳市。30年前までのどかな漁村だった港湾都市に今、世界のテックカンパニーが群がる。

フランス人のルペン氏を起業にかき立てたのは深圳の熱量とスピードだ(昨年12月、深圳市)
通信会社で技術者だったローラン・ルペン氏(36)もその1人。転勤で2007年に赴いた際の印象はアジアの新興都市という程度だったが、やがてその熱量とスピードに魅せられる。
半年未満で開発

中国初の経済特区として改革開放の見本となった深圳にはハイテク産業が集まる。毎日1千社が生まれる新陳代謝。製品見本なら発注した当日に届く。「フランスで1年かかるスマホ開発がここなら半年未満。これが『深圳速度』だ」
起業するならここしかないと意を固めたルペン氏は13年に高齢者見守り用の端末販売会社を設立。16年にはスマホと連動して歯磨きを指南する「スマート歯ブラシ」の会社も作った。歯ブラシは70カ国・地域で50万本を売り、今年は倍の100万本の計画を掲げる。
起業の中心地といえば米シリコンバレーとの常識を変える深圳。米アップルが17年に研究開発拠点を設けるなど、人や企業を引き付ける磁場を作る。「シリコンバレーに賢い人はたくさんいるが、ダイナミズムはここが上」(ルペン氏)
シリコンバレーで起業家支援をしていた米国人のロン・ホーズ氏(40)が12年に渡ったのはフィリピンのマニラだ。「銀行口座を持たない人が多く、ニーズは膨大」。携帯アプリで海外から送金ができるサービスを始め、フィリピン経済の1割に上る出稼ぎ労働者からの送金需要を取り込む。
国連によると2015年にアジアには7508万人が移住し、北米への移住者(5448万人)を上回った。10年前からの伸びも40%増と欧州の18%増を引き離す。ルペン氏のような域外からの移住者に加え、域内での分厚い人の流れがアジアの増勢を支える。
人権・法治に課題

15~17世紀の大航海時代。欧州からアジアへの人波は収奪や植民地化の影を落とした。20世紀は豊かさを求めアジアから欧米を目指す人が増えた。そして21世紀。高成長を求心力に流れは再びアジアに向かう。
インフラや資金、ルールとアジアに足りないものはまだ多い。それでもデジタル技術をいかせば身の回りの「課題」の多くはチャンスに変えられると知った野心家がアジアをめざす。
インド全域でレンタカー会社を営む米国人のグレッグ・モラン氏(33)が初めて現地を訪れたのは11年。すし詰めの客を乗せ未舗装道を行き交うバスをみて「今なら一番乗りで市場を拓ける」と大学院を中退し、ベンガルに移り住んだ。インドの自動車保有率は2%にとどまる。スマホの位置情報や決済機能を使い、レンタカーやカーシェアの需要を生みだす狙いだ。
高度人材向けのビザ発給を抑えるトランプ米政権のような欧米の門戸閉鎖の動きは、人材を求めるアジアには追い風だ。国境をまたぐ人の流れは時に摩擦も生む。華為技術(ファーウェイ)創業家の一人が逮捕された「意趣返し」に中国でカナダ人が相次ぎ拘束された事件では人権、法治などアジアが抱える課題を改めて露呈した。人材に対する磁力を高めていくには「開かれたアジア」への努力の積み重ねが欠かせない。

190204日経
主要企業の業績が世界的に陰り始めている。2018年10~12月期は中国が前年同期比で最終減益で、日本やアジアもマイナスだったもよう。日本の最終減益は2年半(10四半期)ぶり。米欧も7~9月に比べ増益率が鈍った。「世界の消費地」となった中国の景気が減速し、悪影響が広がっている。米中貿易摩擦やスマートフォン(スマホ)市場の飽和(総合・経済面きょうのことば)も響いた。約2年間にわたって続いてきた企業業績の拡大基調が途切れるようなら、世界経済への逆風となる。

日米欧中とアジア(日本と中国除く)の主要企業の18年10~12月期業績(決算未発表分はアナリスト予想)を集計した。日本企業は1日までに決算を発表した542社を対象とした。
目立つのが中国企業の減速だ。売上高は前年同期比で約3割減、純利益は9%減となった。最終減益は16年10~12月期以来、2年(8四半期)ぶりとなる。減益率は16年4~6月期(17%減)以来の大きさだ。
中国政府が企業や地方政府を対象に債務圧縮を進め、景気が減速している。金融機関が打撃を受けており、中国工商銀行は18年10~12月期に純利益が約1割減ったとみられている。個人消費も全般に停滞し、自動車大手の長城汽車は純利益が半減したもようだ。
ネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)も減益見込み。ゲームについて当局の審査が停滞したことなどが響く。中国では電子商取引(EC)の事業者などに政府への登録と納税を義務付ける「中国電子商取引法」が施行された。「中国では規制がネット関連など新しいビジネスを手掛ける企業の重荷になっている」(三井住友アセットマネジメント香港の村井利行最高投資責任者)
アジアと日本はそれぞれ9%、18%の最終減益だった。中国と地理的・ビジネス的に近く、影響を強く受けている。
スマホ向け光学レンズの世界最大手、台湾の大立光電(ラーガン・プレシジョン)は純利益が25%減。中国でスマホの普及が一巡したのが痛手だ。インドのタタ自動車も傘下の英高級車ジャガー・ランドローバーの中国での販売が低迷し、純利益は約4割減った。
日本企業ではファナックが最終減益となった。数値制御装置など工場自動化関連で中国からの受注が急減し、「いつ回復に向かうのか全く見えない」(稲葉善治会長兼最高経営責任者)。京セラやTDKなど電子部品関連でも業績予想の下方修正が相次いでいる。
欧州(4%増)や世界景気をけん引する米国(15%増)は増益だったが、勢いは鈍化。米ハーレーダビッドソンは中国の関税引き上げなどが響き、純利益が9割減少。売上高の4割を中国で稼ぐ独フォルクスワーゲンも減益だったようだ。
17年は米減税で一部企業の税金費用が減った。18年はこの反動が出たことも利益を押し下げた。
一方、独自の強みを持つ企業は好調さを保っている。米アマゾン・ドット・コムやフェイスブック、村田製作所や信越化学工業、ソニーなどは大幅な増益だった。技術力を生かした高シェアの製品拡販などが貢献した。

190221日経
財務省が20日発表した貿易統計によると、1月の中国向け輸出は前年同月比17.4%減と大きく落ち込んだ。中国経済の減速の影響があり、中国向け輸出の低迷は日本だけでなく、韓国や台湾など部品供給網を構成するアジア各国・地域に広がっている。米中貿易戦争で米国市場向けの生産拠点を中国の外に移す動きが強まれば、アジアの対中輸出の減少は一段と加速する可能性もある。

日本の1月の中国向け輸出は9581億円と1兆円の大台を割り込んだ。前年同月比で減るのは2カ月連続だが、減少幅は前の月の7.0%減から一段と拡大した。

1月は自動車など一部を除く幅広い品目で対中輸出が減少した。半導体製造装置が約25%減ったほか、電気回路などの機器は約39%減った。堅調だった化学製品や金属も約1割減った。野村証券の高島雄貴氏は1月の中国への実質輸出が昨年10~12月平均に比べて14%減ったとはじく。

中華圏全体で企業活動がほぼ止まる春節(旧正月)の時期が今年は昨年よりも早く、それが減少幅を大きくした可能性もあるが、それを考慮しても対中輸出が大きく減ったとの見方が多い。
こうした構図は中国経済と深く結びついたアジア各国にも共通する。
韓国の中国向け輸出は18年11月から今年1月まで3カ月連続で減少した。1月は前年同月比19%減と下げ幅の拡大が続いている。対中輸出の5分の1を占める半導体の低迷が響いているとみられる。韓国産業通商資源省は「世界的なIT(情報技術)企業のデータセンター投資の先送りや在庫調整で需要が鈍化している」と分析している。
台湾も輸出全体の4割を占める中国向けが1月に7.5%減と3カ月連続でマイナスとなった。中国にあるスマートフォン(スマホ)やサーバーなどの組み立て工場向けに供給する部品などの不振が要因とみられる。
東南アジアをみても、シンガポールでは1月の対中輸出が25%も落ち込んだ。コンピューター向け部品や集積回路の低迷が目立っている。タイもIT製品向け部品などがふるわず、昨年12月に7.3%減と2カ月連続でマイナスとなった。3カ月ぶりにプラスになったベトナムは少数派だ。
世界の名目国内総生産(GDP)に占める中国のシェアは1990年に2%に満たなかったが、2017年には15%に達した。重みを増した中国経済の変調は世界経済に大きな影響を及ぼす。
日本を含むアジア各国では、米中貿易戦争の影も大きくなってきている。SMBC日興証券の牧野潤一氏は「中国から米国へのサーバーなどの輸出減少を受けて、日本企業の中国向け電子部品の需要も急減している」と指摘する。中国を起点に輸出が落ち込む悪循環が強まりかねないという。
台湾では1月に米国向け輸出が21.2%増と大幅に伸びた。米国が中国から輸入する通信機器などに追加関税を課したことを受け、和碩聯合科技(ペガトロン)などがコスト上昇を避けるため中国での機器生産の一部を台湾に移転したため、台湾から米国への輸出の増加につながった。
米国の対中関税の引き上げの影響を避けようと、米国市場向け製品や部品の生産拠点を中国の外に移す動きが広がれば、アジア各国から中国への部品や資材などの供給も減り、対中輸出は一段と落ち込む可能性がある。

190222ヤフー産経
 中国人の「爆買い」に異変が起きている。日本で商品を大量購入し、中国で転売してきた業者の動きがパタリと止まってしまったためだ。好業績を謳歌(おうか)してきた日本の化粧品メーカーや日用品メーカーに、少しずつ「中国リスク」が忍び寄りつつある。

 ■インバウンドは好調だが…

 「1月は(高価格帯の)プレステージ系の中国での店頭販売が、前年同月比で40%も伸びた。われわれは減速感を感じていない」

 資生堂が2月8日に開いた平成30年12月期の決算会見。魚谷雅彦社長は中国経済減速の影響をきっぱり否定した。中国人をはじめとするインバウンド(訪日外国人)の消費にも衰えはみられないという。

 同社の30年12月期は、本業のもうけを示す連結営業利益が前期比34・7%増の1083億円と、初めて1000億円を超えた。中国売上高が実に32%も増加。インバウンド(訪日外国人)向けを含む日本の売上高も9%伸びた。インバウンドに限れば、20%以上の伸長だったという。

 中国人の消費意欲が衰えていないことは、2月4日に始まった春節(旧正月)商戦からもうかがえた。東京・銀座へ足を運ぶと、百貨店の化粧品売り場や化粧品大手の直営店は、中国人観光客であふれていた。少なくとも表面上は、ここ数年と何ら変わっていないように見える。

 ■EC法成立で変化

 もっとも、一部では中国向けの苦戦が形となって表れ始めている。

 2月4日に決算を発表した花王の場合、苦戦は化粧品より子供用紙おむつ「メリーズ」で目立った。30年12月期の連結営業利益は前期比1・4%増の2077億円と、6年連続で過去最高を更新した。だがメリーズの販売が低迷したため、期初計画(2150億円)には届かず、紙おむつなどのヒューマンヘルスケア事業は減益となった。

 「厳しい1年だった」 過去最高を更新したにもかかわらず、会見での沢田道隆社長には後ろ向きなコメントが目立った。

 メリーズが苦戦し始めたのは、昨年夏に中国で、ネット通販事業者に登録や納税を義務づける電子商取引(EC)法が成立したからだ。転売業者は、日本で買った商品が中国で売りにくくなると危惧。日本での爆買いを控え、中国のストックを安く売り出した。そのあおりを食って、正規ルートで販売されている商品まで売れ行きが鈍った。

 花王ほどではないが、資生堂の化粧品も影響を受けている。1月は業者の購入が前年同月比で10~20%減り、減少傾向は当分続く見通しという。

 ただし、インバウンドの約8割を占める一般旅行者向けの売上高は、逆に約1割伸びたという。たとえ爆買いがなくなっても、中国の消費者が正規の商品に移行すれば、メーカーはビジネスをコントロールしやすくなる。

 ■乱立するおむつメーカー

 もっとも、別の日用品メーカー関係者は「中国人の消費姿勢は明らかに変化しつつある」と指摘する。優れているからといって、値段に関係なく手を出す時代は終わりを告げつつある、との意味だ。

 しかも、中国では現地メーカーの台頭が著しい。紙おむつでは数百ものメーカーが乱立し、花王によるとそれらの合計シェアは約45%に達するという。

 「以前は『おむつのエルメス』といわれてきたが、最近はそこまでいわれなくなった。メード・イン・ジャパンへの評価は揺らいでいないが、日本製でなければならないかというと、少しずつそうではなくなっている」。花王の沢田社長は危機感を隠さない。

 花王は今後、最新技術を中国発の商品にも取り入れるほか、ワンブランドに固執せず、ラインアップを増やすことも検討していくという。資生堂は「昨年10~12月にマーケティング投資を増やし、ほぼ中国へ振り向けた」と明かす。

 日用品や化粧品は「必需品」で、経済減速の影響が及びにくい。とはいえ、及ばないという保証もない。これまでのような「わが世の春」とはいかなくなりつつあるのは確かだろう。

190304日経
北京=原田逸策】中国で年に1度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日に開幕する。2019年の経済成長率の目標は現行の「6.5%前後」から2年ぶりに引き下げる見通し。経済の下押し圧力に対応するため減税など大規模な景気対策も打ち出す。米国との貿易戦争をにらみ、外資企業の投資を保護する新法も成立させる。

19年の成長率目標は全人代の初日に李克強(リー・クォーチャン)首相が読み上げる政府活動報告で公表する。「6~6.5%」と幅を持たせた目標とする公算が大きい。17年に「6.5~7%」から「6.5%前後」に下げて以来となる。
18年の国内総生産(GDP)の実質成長率は6.6%と目標の「6.5%前後」を上回った。ただ秋からの急減速で18年10~12月期の成長率は6.4%まで落ちた。19年前半も減速傾向が続く公算が大きいため、目標を下げる方向だ。
政府活動報告では景気減速への対応策も注目される。李氏は大規模な減税・手数料下げを軸とした景気対策を説明するとみられる。減税・手数料下げの規模は18年当初の1.1兆元(約18兆円)から拡大する方向。1.5兆元規模に達するとの見方がある。財政赤字のGDPに対する比率も18年(2.6%)から引き上げる方向だ。

習近平主席らは全人代を前に党内の引き締めを急ぐ=AP
公共投資も積み増す。地方政府がインフラ建設にあてる債券の発行枠を18年の1.35兆元から6割ほど増やす方向で調整している。例年なら3月から始まる地方政府の債券発行を今年は1月からに前倒ししている。地方政府が資金不足に陥り、インフラ建設に切れ目ができるのを防ぐ。
金融政策では昨年の全人代より緩和的な姿勢を打ち出す方向。とくに民間企業の資金調達難の解決に向けてどんな政策を示すかが注目される。
米国との貿易摩擦への対応も焦点だ。中国は今回の全人代で18年12月に草案を公表したばかりの外商投資法の成立をめざす。中国が行政手段を用いて外資企業に技術移転を強要することを禁じる規定を盛った。技術移転強制を懸念する米国の懸念に配慮したものだ。
米国は3月1日に中国製品2千億ドル(約22兆円)分にかける追加関税をいまの10%から25%に上げる予定だったが、先送りした。米中の協議が大詰めを迎えるなか、異例の早さで法案を成立させることで、米国に譲歩を印象づけるねらいだ。
全人代は15日までの11日間。最終日には李首相が記者会見を開くほか、期間中には中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁ら閣僚の記者会見も予定される。

190312日経
中国経済の先行き懸念が強まっている。米国との貿易戦争で景気は減速しており、李克強(リー・クォーチャン)首相は2019年の成長率目標を「6~6.5%」と前年より引き下げた。中国経済のどこに危うさがあるのか、当局の景気刺激策は奏功するのか。専門家に聞いた。
◇  ◇

■インフレ目標、実行に注目 神戸大学教授 梶谷懐氏

中国の李克強首相は政府活動報告で今年の成長率目標を6~6.5%に設定し、前年の6.5%前後から引き下げた。目標に幅を持たせた点は評価できる。これまでは目標を意識して成長率が同じような水準でそろってしまい、統計に対する信頼性を下げていた。中国の潜在的な成長率は下がってきており、6%台前半の目標自体、現在の中国の実力に見合っている。
活動報告からは景気刺激策の手段の変化が読み取れる。リーマン・ショック後に取られたなりふり構わぬ需要拡大策への反省がある。政府が号令をかけて投資を増やし、後追い的に金融でサポートするやり方だ。政府が直接的に銀行に融資を求める窓口指導でもあった。今回は中央銀行が国債の売り買いを通じて金利を操作し、金利を通じて景気を引き締めたり、緩和したりする方向が示された。
注目すべきは物価水準の目標を3%前後に設定した点。2月の消費者物価指数(CPI)は前年比1.5%の上昇にとどまっており、目標まではかなり遠い。大都市の住宅価格が下落傾向にあるなどデフレ懸念が強まっているが、中国はインフレターゲット的な政策の導入で対応していく可能性があるのではないか。
全国人民代表大会(全人代)開幕の少し前、中国財政省の人物から「国債を中央銀行が購入し、国債をマネタイズ(貨幣化)する形で景気刺激策をしていく必要がある」との発言が出た。日本の金融緩和を意識しているとみられる。中国はアベノミクスなど各国の金融政策や、米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が提唱した「物価水準の財政理論」(シムズ理論)などを研究している。
著名エコノミストの余永定氏は中国メディアに「財政と金融政策を一体化する必要があり、財政赤字を国内総生産(GDP)比3%の大枠にとどめなくてもよい」と盛んに書いていた。活動報告は3%の大枠を守るとしたが、赤字上限は0.2ポイント拡大して2.8%になり、債券発行を増やす方針も示された。米中対立がソフトランディングし、財政と金融が一体化した景気刺激策をとれば物価上昇が起こり、年内に景気を回復軌道に乗せるのは難しくないだろう。
重要なのは雇用だ。中国人民大学は就業研究所という研究機関を設置し、リポートを出している。産業ごとに就業状況の数字をグラフ化しているが、貿易に関する産業は劇的に就業者数が減っている。昨年の第3四半期には就業者数が前年比50%程度減少した。西部地域では80%ぐらい落ちた。こうした状況は失業率に反映されていないが、実際の雇用情勢は厳しい。
新しい産業が失業者を吸収していくといわれるが、宅配や配車サービスなどの新興産業の成長も頭打ちだ。投資ファンドが注目しているような新興企業は技術集約的なところが多く、技術を持った者しか必要としていない。労働集約的な製造業を国外に押し出し、製造業を高度化していくという政策を進めてきたが、それにはリスクのあることも明らかになってきた。

190315日経
北京=原田逸策】中国の生産と消費が振るわない。14日発表の2019年1~2月の経済統計によると、工業生産の伸びは昨年12月から減速し、リーマン・ショック直後以来、10年ぶりの低水準となった。失業率は2年ぶりの高さに上昇し、雇用不安から小売売上高も低迷がつづく。景気対策で投資は上向きだが、経済全体を支える力強さはない。経済がいつ底打ちするかはまだ見通せない。

「春節の影響が今年は2月に集中した」。統計局の毛盛勇報道官は14日の記者会見で、生産が減速した原因として春節の時期を真っ先に挙げた。
春節の時期は毎年異なり、今年は2月5日と去年より11日間早い。「春節後の15~20日間は生産活動が低調。去年は影響が3月に及んだ」(毛氏)。1~2月の工業生産は前年同期比5.3%増だが「春節要因を除くと6.1%増」という。
春節による統計の振れは毎年の恒例行事だが、伸び率がここまで低いのはリーマン・ショック直後の09年1~2月(3.8%)以来、10年ぶりのこと。製造業の購買担当者景気指数(PMI)をみても、2月は生産が好不調の節目である50を下回った。これも10年ぶりで、生産活動が極めて低調なのはまちがいない。
品目別の生産量も不振を裏づける。自動車(15%減)と携帯電話(12%減)の2本柱はともに前年割れ。生産活動全体を映す発電量も3%増と昨年3月以来の低い伸びだった。
企業の形態別の生産では民間(8%増)や国有(4%増)と比べ、外資(0.3%減)の不振が目を引く。米中貿易戦争の追加関税上げをにらみ、昨年末までに前倒しで生産、輸出を急いだ反動が出ている可能性がある。
生産の低迷は雇用を揺さぶる。2月の都市部の失業率は5.3%で2年ぶりの高水準。1~2月の新規就業者数は174万人で前年同期より1%少ない。輸出企業が集まる南部の広東省で工場の操業停止が広がったほか「インターネット企業ではリストラのほか、ロボットによる代替が進んでいる」(国務院発展研究センターの張立群研究員)。
民間調査では春節前の年に1度のボーナスは前年比2.4%減の平均7100元(約11万7千円)にとどまった。支給された人は全体の55%と前年より11ポイント下がった。
消費者の財布のひもは固くなる。1~2月の小売売上高(社会消費品小売総額)は前年同期比8.2%増。1月から個人所得税の減税が拡大されたが、伸び率は昨年12月から横ばいだった。自動車の販売不振も続く。18年は24%増えたインターネット通販の売上高も14%増にとどまった。消費不振がネット通販にも及び始めた可能性がある。
明るい材料は投資の復調だ。マンションや工場の建設など固定資産投資は1~2月に前年同期比6.1%増えた。伸び率は昨年夏を底に緩やかな拡大が続く。景気対策でインフラ投資が4.3%増と18年通年(3.8%増)から持ち直した。鋼材の生産が11%増と好調なのも公共投資と関係ありそうだ。不動産の開発投資も1~2月に12%増と18年(9.5%増)から加速し、投資全体を押し上げた。
ただ、不動産の販売面積は1~2月に前年同期より4%減った。みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員は「不動産の販売は今後も減りそうで、少し遅れて開発投資も減速しそうだ。結局、インフラ投資頼みという状況が続く」と分析している。

190320日経
中国企業に逆風が吹いている。米国との摩擦が激化し、国内消費も勢いを失って、新たな成長戦略の確立が急務になった。中国石油天然気集団(CNPC)は天然ガス需要の拡大に対応してシェールガスの国内生産を倍増させ、珠海格力電器は半導体の自主開発による商品力の向上を急ぐ。3月前半に北京で開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)などに出席した経営トップに聞いた。

――資源開発の方針は。
「石油化学工業は中国経済で重要な地位を占め、中国共産党中央の指導部は石油産業の成長を非常に重視している。エネルギーは経済の命脈であり、エネルギー資源の探査や開発は重要だ。石油資源の探査と開発を強化しなければならない」
「中国国内の資源はだんだんと低質になっており、これは変えられない客観的事実だ。そのため、探査技術やコスト管理のレベルを引き上げ、リスクの高い資源探査への投資を増やす。2019年から25年までは毎年50億元(約800億円)を配分する計画で、これは18年実績の5倍に相当する規模だ」
「特にシェールガスの探査や開発に力を入れる。シェールガスの国内生産量は20年に120億立方メートルを計画しており、25年には20年計画の2倍に相当する240億立方メートルの生産をめざす」
――シェールガスの主産地である四川省では住民が地震の原因として開発停止を求めています。
「地震との因果関係については論証作業を進めているが、シェールガスは開発を加速する。環境対策を強化するとともに、コスト管理も徹底する。科学的で合理的なスピードで開発を進める」
――習最高指導部は大気汚染対策の一環として天然ガスの利用を拡大していますが、どう対応しますか。
「我々は中国国内の天然ガスの7割を生産しており、18年は7.5%程度の増産を実現した。一方、国内の天然ガス消費は16.6%も増えており、海外依存率は高まることになる」
「米中貿易戦争は長期にならないはずだ。外国企業と協力した海外での資源開発を強化する。海外資源の買収はビジネスの原理に基づきチャンスがあればすぐ買収する」

190325日経
中国が経済の減速にあえいでいる。米国との貿易戦争が続くなか、安定成長の軌道に戻れるのか。国際通貨基金(IMF)で中国出身者として初の副専務理事を務めた、清華大学国家金融研究院の朱民院長に見通しを聞いた。

債務削減が一因

――中国経済の減速が心配です。
「中国は30~40年にわたって高成長を続けてきた。それを長期にわたって維持するのは不可能だ。経済規模がこれだけ大きくなったのだから成長の速度が落ちるのは自然だ。日本や韓国も同じ経験をしてきた」
「この2年、中国政府が過剰な生産力や債務の削減を進めたことも景気減速の原因だ。特に鉄鋼やアルミ、ガラスといった分野で大きな成果が出た。その過程で経済に下押し圧力がかかるのは避けられない」
――中国政府は2019年の国内総生産(GDP)成長率の目標を「6~6.5%」に設定しました。
「私は6.3~6.5%程度の成長は実現できるとみている。決して悪い数字ではない。これからの数年間も6.3%前後で安定するだろう」
――米国との貿易戦争が続けば、そうした見通しも狂いませんか。
「これまでのところ、貿易戦争の直接的な影響は大きくない。しかし、心理的な影響は無視できない。特に投資は世界的なサプライチェーン(供給網)にどんな変化が起こるかわからず、大きな不確実性に直面している。それが原因で、世界の直接投資額は18年に前年より2割近く減った」
「中国が米国への輸出で年3千億~5千億ドルといわれる巨額の稼ぎをあげているのは事実だ。しかし、中国の輸出品はかなりの部分が日本や韓国、インドネシアなどから輸入した製品でできている。米国の追加関税で中国の輸出が打撃を受ければ、影響は中国だけでなくアジアのサプライチェーン全体に及ぶ」
「いま貿易戦争の核心的な問題は、米国が2千億ドル相当の中国製品に課している10%の追加関税を25%に引き上げるかどうかだ。引き上げた場合、中国の輸出数量は大きく減るだろう。それだけではない。米国にも打撃となる。われわれの計算では2千億ドルのうち、50%以上は中国製品以外での代替ができない」
景気対策に効果

――減税やインフラ投資といった景気刺激策の効果はいつごろ表れますか。
「中国政府が打ち出した減税やインフラ投資の拡大は、経済成長を支えるのに十分な規模だ。すでに初歩的な効果は表れており、今年の第2四半期か第3四半期にはそれが一段とはっきりしてくるだろう」
――企業や地方政府が抱える巨額の債務は金融危機を引き起こしませんか。
「債務の問題は確かに存在する。しかし、企業や地方政府の債務比率はすでに上昇が止まっている。諸対策の効果で、状況の悪化には歯止めがかかった」
「もちろん、債務を減らすための努力は続けなければならない。日本も経験したように、成長を保ちながら債務を減らすのは非常に難しい仕事だ。われわれは日本の経験に学びながら『良い債務減らし』を実現したいと考えている」

190401日経
▽…中国は地方政府や国有・民間企業、家計が抱える多額の債務をどう抑制するかが課題になっており、中国経済の最大のリスクと指摘される。過去の景気刺激策で実施されたインフラ投資などが民間を巻き込み、一部が不良化している。一般に中央政府の負担は限られ、地方政府系の投資会社や国有企業が実行部隊を担ってきた。2008年のリーマン危機後には4兆元(当時のレートで57兆円)の景気刺激策が実施された。

▽…中国の社債の不履行額は18年に1200億元を上回り、円換算で2兆円に達した。19年1~3月も300億元を超えた。銀行は不良債権の最終処理を急いでいるが、新規発生とのいたちごっこが続いている。当局から中小企業の資金繰り支援を求められていることも銀行の重荷になっている。
▽…中国は3月の全国人民代表大会(全人代)で大規模な景気下支え策を表明した。公共投資の一部が動き出しており、足元の景気は下げ止まりの兆しもある。ただ、新たな景気対策で地方政府の負担は一段と増えそうだ。地方政府の隠れ債務は18年末で40兆元規模に膨らんだとみられる。

190416日経
トヨタ自動車、日立製作所など日本の主要企業が中国のスタートアップと相次ぎ連携する。トヨタは車載電子機器、日立はフィンテックの開発で現地の新興企業と協力を決めた。中国では起業熱の高まりを受けフィンテックなどの有力企業が次々に生まれ、エアバスなど欧米勢も連携を進める。中国発の技術を世界大手が競って取得する動きだが、行きすぎれば中国当局から技術流出を警戒する声が出る恐れもある。


トヨタは4月初旬、中国・深圳に本社を置く「IoT」機器開発の支援会社、硬蛋(インダン)と提携した。2013年設立のインダンは「世界の工場」と呼ばれる深圳のサプライチェーン(供給網)の中に、約1万5千社の取引先を持っている。
トヨタはインダンの取引先から、電子機器や部品を手がける中国スタートアップなどを開拓。インターネットにつながる車載用のIoT機器を共同開発できる力を持つ企業を探し、世界最大の新車市場である中国向け製品のコスト削減を目指す。トヨタ幹部は「中国は新しいテクノロジーの実証実験を進めるスピードが速く、競争力のあるスタートアップも増えている」と意義を説明する。
深圳には部品を安価に素早く作るメーカーと設計、開発などを手掛けるスタートアップが集積している。例えば自動運転向けセンサーがほしいと声をかければ、大手企業が社内で開発するよりもはるかに早く試作品ができ、生産に入れるほか、コストも低く抑えられる。米国はものづくりの基盤が弱いことも、各社が中国をめざす理由だ。


深圳では、京セラが18日、名門校・清華大学系の投資会社が運営するスタートアップ育成施設内に拠点を開く。スタートアップと共同で、自社製の電子部品の活用法を考える拠点とする。ダイキン工業も近く、空調用のIoT機器の共同開発拠点を置く方針だ。
一連の流れは、技術革新の軸が、米シリコンバレーを中心にした先進国からアジアに移りつつあることを意味する。
中国ではアリババ集団が運営する電子決済サービスの「支付宝(アリペイ)」などが普及し、フィンテックは世界最先端の水準になった。そこに目を付けたのが日立だ。
3月、上海でスタートアップや大学生を対象に、仮想通貨に使うブロックチェーン(分散型台帳)技術の開発コンテストを開いた。15年設立の上海のスタートアップ育成会社、XNode(エックスノード)などと共同で運営した。日立がこのコンテストを開くのは米国に次ぎ2カ国目だ。入賞したアイデアを新サービス開発に生かし、上位チームとの協力を探る。
中国では起業が働き方の一つに定着し、評価額が10億ドル(約1100億円)超の未上場企業「ユニコーン」は80社を超すとみられる。米国に次ぐスタートアップ大国となり、ライドシェアや人工知能(AI)でも有力企業が生まれている。
スタートアップとの連携では欧米勢が先行する。エアバスは2月、深圳で開発拠点を新設。有機ELパネルを手がける深圳市柔宇科技(ロヨル)など現地新興企業と共同で旅客機客室の映像機器などを開発する。
米インテルはトヨタも組んだインダンと16年に提携し、自社製半導体で動くロボットを開発するスタートアップを育成。独BMWはXNodeと協力し、18年に車載音響機器を共同開発する力を持つスタートアップをコンテストで選んだ。
東芝の元中国室長、雷海涛・桜美林大教授は「世界の技術革新の重心が中国などアジアに移る動きは今後も続く。日本企業はこの動きを前提に、グローバル事業戦略を再設計しないといけない」と指摘する。

190418日経
中国の2019年1~3月の実質経済成長率は6.4%だった。18年10~12月から横ばいで、4四半期ぶりに減速に歯止めがかかった。一連の景気対策を受けて、厳しさが目立った中国経済に大きな変化があるのか。その回復力を見極める必要がある。
中国政府が打ち出した公共投資増は一定の効果を表している。マンションや工場の建設といった固定資産投資は増勢にある。ただ、中国景気をけん引してきた消費の伸びはなお勢いを欠く。
注目すべきは消費の主力である自動車販売だ。今回の統計発表と別に業界団体がまとめた数字を見てみよう。1~3月の新車販売は前年同期に比べ1割以上減った。3月単月でも9カ月連続の前年割れ。3月は減少幅こそ5%強に縮小したものの、依然、個人消費に近い車種の落ち込みが大きい。
景気テコ入れ策で公的部門の商用車購入は持ち直したが、家庭で新車を買う意欲までは回復していない。自動車関連の裾野は広く、その動向は鉄鋼需要など景気全体に影響する。
今回、中国政府が発表した成長率は事前の市場調査より0.2ポイント程度、上振れした。本来、好ましいことだが、政府の数字からは見えにくい実態もある。
中国政府は19年通年の成長目標を「6~6.5%」とした。社会主義国、中国はかつての計画経済的な政策手法を色濃く残す。数値目標は必ず達成されてきた。このため関連する発表数字が政府の政策的な意図を反映する例もある。「底入れ」をうかがう中国経済の実態把握は極めて難しい。
一方、明るい兆しもある。4月以降は大型減税や社会保障負担の軽減効果が出始める。資金難に苦しむ民間企業への支援も始まった。これが実需に結びつけば年後半には大きな効果が期待できる。
問題は米中貿易戦争の行方だ。中国の株価急上昇は、米中交渉の早期決着を織り込んできた。その行方は株式市場にとどまらず、中国経済全体を大きく左右する。

190418日経
北京=原田逸策】中国景気の減速にひとまず歯止めがかかった。17日発表の2019年1~3月期の実質成長率は、前年同期比6.4%と昨年10~12月から横ばいだった。政府の景気対策の効果もあり、3月にかけて製造業の景況感や生産などの指標が改善した。ただ、企業や個人が再び借金依存を強めるなど、内需にもろさを抱える。年後半に向けて景気回復の持続力には懸念もある。



関連記事国際面に)

1~3月はセメントや鉄鋼の生産が堅調だった(山東省のマンション建設現場)
「6.2~6.3%の市場予測より明らかに良かった」。国家統計局の毛盛勇報道官は17日の記者会見で胸を張った。国内総生産(GDP)の成長率の減速が止まるのは、18年1~3月期以来4四半期ぶりだ。
個別の景気指標も改善している。3月は製造業の購買担当者景気指数(PMI)が50.5と、拡大・縮小の節目となる50を4カ月ぶりに上回った。工業生産は8.5%増と4年8カ月ぶりの高い伸びを示した。
けん引役は、政府による昨秋からの景気対策だ。昨年10月以降の所得減税では8400万人が課税対象から外れた。インフラ投資は1~3月に4.4%増えた。
4月には基幹税目である増値税(付加価値税)の減税が始まり、5月からは公的年金保険料の企業負担も軽くなる。主に製造業の負担が軽減され、設備投資の拡大につながる可能性がある。
もっとも、政策頼みは「古い中国」が息を吹き返す副作用と隣り合わせだ。3月の生産が好調だったのは、公共工事やマンション建設と密接にからむセメント(22%増)、粗鋼(10%増)、ガラス(8%増)など。重厚長大型の復活は、過剰設備の廃棄で経済を効率化する従来の政策を無駄にしかねない。
逆に産業の屋台骨である携帯電話(7%減)、自動車(3%減)、半導体(2%減)はいずれも前年割れだ。米国が追加関税をかけた工作機械やロボットも減少が続く。
借金依存の成長が復活する兆しもある。企業や家計による新規の資金調達額は1~3月に8兆1800億元(135兆円)と四半期で過去最高を記録した。金融危機の芽を摘もうと17年に本格化した債務削減は、政府の景気配慮によって棚上げされた。
昨年3月は春節(旧正月)休暇の影響で生産や輸出が低調だった。3月の急回復は1年前の「発射台」の低さも影響しており、4月以降の数値を見極める必要がある。生産活動も4月上旬は3月ほどの勢いがないとの指摘がある。
今回の景気対策は08年の「4兆元対策」(当時の為替レートで56兆円)から数えて4回目。米中貿易戦争が長引き、中国の輸出回復の道筋はみえない。政策依存の回復には限界もちらつき、市場でも「年後半の成長率は回復するだろうが、力強さはない」(中泰証券の李迅雷首席エコノミスト)との見方がある。

190419日経
上場企業の在庫が滞留している。中国景気の減速を背景に顧客からの注文が減り、在庫調整が長引いているためだ。なかでも中国向け売上高の多い半導体などハイテク分野の製造業で在庫の積み上がりが目立つ。資金効率の悪化につながるため、投資家の関心が高まっている。

国内の主要6工場で最大2カ月にわたり生産を止める見込みの半導体大手の

ルネサスエレクトロニクス。中国で工作機械など向けの半導体需要が減少し、在庫がたまったことが背景だ。
企業が抱える在庫がはけるスピードを示す同社の在庫回転率は2018年10~12月で、年率換算5.8回と、前年同期から1回分低下した。
生産・出荷ペースの鈍化で、これまで1年間に6.8回入れ替わっていた半導体の在庫が5.8回しか入れ替わらなかった計算だ。同社は「産業機器の制御に使うマイコンと呼ばれる半導体など、非自動車向けの需要が落ちた」としている。
上場企業全体では、18年10~12月は7.8回と17年10~12月(8.7回)より0.9回低下した。なかでも中国向けの売上高を開示している製造業は、6.3回と直近のピークだった16年10~12月(8.1回)から低下が顕著だ。
目立つのは、スマートフォン(スマホ)市場の飽和で強気見通しが一変した半導体などハイテク関連だ。半導体シリコンウエハーの切断装置で世界的に高いシェアを誇るディスコ。スマホ需要の鈍化による半導体メーカーの設備投資延期のあおりを受け、在庫回転率が前年同期に比べて1.6回低下した。
スマホ不振は素材メーカーの業績にも影を落とす。フジクラはスマホ向けの配線板などが不振で、2月に19年3月期の業績見通しを下方修正した。売り上げの低迷に伴い、在庫が積み上がっている。
米中貿易戦争の影響も出る。在庫回転率が前年同期に比べて0.5回低下したコニカミノルタは米中貿易戦争で中国から米国向けの海上輸送に駆け込み需要が発生することを懸念し、事前に在庫を増やしたという。
こうした企業の在庫回転率は、上場企業全体と比べて低い傾向がある。在庫の適正水準は企業ごとに違い、回転率も様々だ。
ただ、売上高に比べて在庫が増えすぎると、資金繰りを圧迫する。在庫圧縮のため販売価格を引き下げると損益にも悪影響を与える。近く発表となる3月期企業決算について大和総研の小林俊介エコノミストは「製造業の1~3月期業績は厳しくなりそうだ」と指摘する。
在庫の先行きを左右する最大の要因が中国景気の動向だ。中国は全国人民代表大会で約33兆円規模の減税など刺激策を打ち出し、景況感には短期的に改善の兆しが出ている。ただ三井住友DSアセットマネジメントの平川康彦シニアファンドマネジャーは「現状の刺激策では企業の在庫状況が改善する可能性は低く、今後も在庫水準を注視する必要がある」と指摘している。

190507日経
世界経済の成長減速(スローダウン)が、徐々に進んでいる。ユーロ圏と並んでとりわけ注意が必要になっているのは、経済状況が一段と厳しさを増している中国である。

【記事内の各グラフは、こちらをクリックして「元記事へ」からどうぞ】■図1:中国の製造業PMI 政府・民間 注:民間のPMIは15年7月以降は中国メディア財新が発表しており、それより前の発表主体は英大手銀(出所)中国国家統計局・中国物流購入連合会(CFLP)、財新・IHSマークイット

 米国との貿易戦争が景気を圧迫している上に、金融緩和が効きにくくなっており、景気の下支えは財政政策(インフラ整備や各種減税など)頼みの様相を呈している。そしてそのことは、銀行の不良債権問題に苦しんだ90年代の日本の状況をほうふつとさせる。

 人口対策が中途半端なまま、大型経済対策で多額の公共事業を上積みし、所得減税を大規模に実施して景気を刺激した日本は、その後どうなったか。

 中国の政策当局者は「日本の教訓」をしっかり学んでいたはずなのだが、気がついてみると結局は同じような道をたどっているように、筆者には見える。

●「先行きの下振れリスクは強まっている」

 昨年12月28日に日銀から公表された金融政策決定会合における主な意見(12月19、20日開催分)からは、IMFによる世界経済見通し下方修正や米国を主な震源地とする株価急落に代表される、「海外発」の秋以降の大きな状況変化をうけて、日銀内のムードが景気下振れ警戒へと急速に傾いたことがうかがわれた。特に注目されたのは、以下の記述である。

 「米中間の通商問題をはじめ世界経済の不確実性が高まる中、先行きの下振れリスクは強まっている」

 「海外経済は、地域間の相違がより明確になり、減速の兆しがみられ始めてきた。減速・景気後退が明確になるとすれば、各国の財政・金融政策の動向が重要になる」

 「世界経済の先行きについては、不透明感が高まりつつあり、かつそうした状況が長期化するとの見方が広がる中、リスクは総じて下方に厚くなってきている」

 「経済に対するリスクは下方に強まっている。中国の直近の貿易データをみると、輸出入とも前月比でマイナスとなっており、中国経済の減退を示している可能性がある」

 「中国では、民間企業のデフォルトが増加しており、当局は資金調達難の解消に向けて銀行に対し貸し出しの増加を要請している。こうしたもとでの民間企業の資金調達動向を注視している」

 さらに、1月31日に公表された主な意見(1月22、23日開催分)にも、以下のような中国経済について警戒的なトーンの記述があった。
 「世界経済の下振れリスクは高まっている。特に中国は、通商問題の影響もあって経済成長が減速し始めており、景気対策の動向なども含めて注視が必要である」

 「株価は実体経済の変化を増幅して伝えるものだが、最近の株価下落は、世界的な実質成長率の低下をある程度予想している。この背景には、今や世界第2位の輸入市場となった中国経済の停滞がある。わずかずつ低下するGDPではなく、輸出入の動きをみれば、この点は明らかである」

 日本と地理的に近く、貿易を通じて経済的にも密接な関係がある中国の経済動向に、日銀政策委員の一部が強い関心を抱いているようである。その中国の経済指標のうち速報性があり重要なものが2つ、年末年始に発表された。

 12月31日に発表された政府版の12月製造業PMI(購買担当者景況指数)は49.4(前月比▲0.6ポイント)になり、4カ月連続で低下して2016年7月以来の50割れとなった(16年2月以来の水準)。さらに、1月2日に発表された民間版の12月製造業PMIは49.7(同▲0.5ポイント)になり、政府版に続いて節目の50を下回った。

 その後発表された1月の政府版の製造業PMIは49.5にごく小幅上昇して持ちこたえたものの、中小企業が調査対象に多く含まれているとされる民間版は48.3に続落し(前月比▲1.4ポイント)、16年2月以来の低水準に沈んだ<図1>。

 中国では、民間金融のトランスミッションメカニズム(金融政策変更の伝達・波及経路)が機能不全を起こしているようである。

 1月15日に人民銀行から発表された昨年12月のマネーサプライM2は前年同月比+8.1%。過去最低横並びだった前月からは上向いたものの、わずか0.1%ポイントの動き<図2>。

 民間金融機関による信用創造は不活発なままのようであり、マネーサプライの伸びは停滞している。人民銀行が預金準備率を何度も引き下げているほか、中小企業向けに貸し出しを増やすよう窓口指導も行われているものの、そうした措置の効果がさっぱり出てこない。

●中国の金融システムが抱える問題

 昨年12月19日には「標的型中期貸出制度(TMLF)」導入が人民銀行から発表された。中小民間企業向けの貸し出しを促す狙いだが、大きな成果が上がるとは考え難い。中国の景気減速が明確になっており、中小向け融資の貸し倒れリスクが以前よりも大きいからである。

 さらに、中国の金融システムには構造的な問題点があるという。日本経済新聞の現地駐在記者が書いた記事は、そのあたりを以下のように説明していた。

 「民間の資金調達難は構造的な問題で、流動性の供給で解消できるものではない。中国の銀行は貸出先の審査能力に乏しく、基本的に国有企業にお金を貸す。民間企業は一部大手を除き、銀行から数%の低金利でお金を借りた国有企業から十数%の高金利で融通してもらう。これら『影の銀行』を当局が締めつけ、民間企業の資金繰りが厳しくなった。倒産が増えてさらに誰もお金を貸さなくなった」(18年10月13日)
 「中国の銀行が民間に融資しないのは、リスクの乏しい国有企業に融資しても厚い利ざやを確保できるからだ。貸し出しや預金の金利自由化は名ばかりで、地区ごとに業界団体が各行の金利を調整する慣行が残る。金融自由化停滞のツケが回ってきたのが問題の本質として浮かび上がる」(18年11月21日)

 年前半に高めの成長が続いた「貯金」があるので、18年の経済成長目標である「6.5%前後」は達成され、前年比+6.6%になった。だが、18年10-12月期は前年同期比+6.4%にとどまった。今年3月の全人代(全国人民代表大会)で公表される19年の成長目標はおそらく「6.0~6.5%」に引き下げられるだろう。

 そうした中、鉄鉱石・石炭・穀物などの外航不定期船の運賃の動向を示しているバルチック海運指数(Baltic Dry Index;略称BDI)の下落が、このところきつくなっている<図3>。

 BDIは1月28日、852に大幅低下した(前日比▲53ポイント)。29日は800を割り込んで797(同▲55ポイント)。31日には668(同▲53ポイント)になったが、これは16年8月11日以来の水準である。1月月間の下落率は約47%で、14年1月以来の大きさ。2に入ってからも下落基調で、11日には600も下回って595になった。

 以前は「爆食」とやゆされるほど旺盛だった中国による資源の購入需要が、景気減速が続く中で沈滞していることが最大の理由である。これに加えて、ブラジルの資源大手が所有する鉱山のダムが決壊した影響で、同国から中国への鉄鉱石の輸出が減っており、これがケープサイズの需給に影響しているという。

●2019年の実質GDPは+6%台前半か

 中国の指導部は減税とインフラ整備を合計すると2.5兆元を超える規模に達する景気刺激策を実行に移しつつある(1月29日付日本経済新聞朝刊)。だが、トランスミッションメカニズムが作動しにくいため金融緩和の効きが悪い上に、過剰債務問題との兼ね合いで大胆な景気刺激策の展開がためらわれる面もある。

 上記の記事に出てくる中国のある官庁エコノミストのコメント「とにかく成長率が6%を割らないこと」は事実上の必達目標であろうし、19年の中国の実質GDPは前年比+6%台前半は確保する可能性が高い。

 しかしそれは人為的な景気の下支えであり、かつ中長期的な視点からはどうしても必要な構造改革を先送りしたうえでのものであることに、十分留意する必要がある。

 また、米国のトランプ大統領は、米中貿易戦争のさらなる激化への警戒感も材料の1つになった株価急落で窮地に陥っている。そこで、貿易問題でとりあえず中国と妥協して報復関税の税率引き上げを回避する可能性がある。実際そうなれば、中国経済が、とりあえず一息つくことだけはできる。

 だが、米国と中国という2つのスーパーパワーの対立には、歴史の宿命とでも言えそうなものがあるように思う。両国によるハイテク分野での覇権争いや軍事面の縄張り争いは、今後も続いていく可能性がきわめて高い。

 そんな中、冒頭で述べたように「日本の教訓」を生かせていない中国は、政府債務の累増と低成長の組み合わせ、後手に回った人口対策、生産性が低いインフラの維持管理コストに、先行き苦労することになるだろう。

190508日経
2000億ドルに上る対象品目の関税引き上げには自動車部品や機械部品、衣類の一部などが含まれている。経団連の中西宏明会長は7日の記者会見で「発言通り実行されると影響が大きい」とした。経済に及ぼす影響を巡り「早期に解決するとは思っていない」と話した。影響は日本企業にも広がりそうだ。
工作機械大手の東芝機械幹部は「この状況が続けば納入先の(中国での)設備投資が止まってしまう」と懸念している。コマツの小川啓之社長は「中国経済の減速感が強まるかどうかがポイントだ」と話す。
以前の制裁を含め、影響が大きいのは自動車部品などだ。中国から米国への自動車部品の輸出額は18年に109億ドル(約1兆2200億円)と、10年前の3倍に増えた。中国での生産体制が確立されている。
アンテナ部品のヨコオは3月までに、中国からベトナムに大半の生産機能を移した。中国生産分の7割が米国などへの輸出部品で、追加関税により18年8月~19年3月で負担は3億5000万円増えた。「生産を移し1億円程度、追加コストを圧縮できた」(同社)
ジーテクトは、車体部品の金型の米国向け輸出を4月までに中国から日本に切り替えた。曙ブレーキ工業は中国から米国にブレーキパッド(摩擦材)など年間3億円を輸出していたが、3月までに米国内で部品をすべて調達するようにした。
従来の計500億ドルを対象にした25%の追加関税の発動では、米政府は関税上乗せの対象から外す「適用除外」を受け付けてきた。
自動車ランプ大手のスタンレー電気は、金型1つが適用除外になった。中国からの輸入品の一部を米国内の現地調達に切り替え、難しい部品は自動車メーカーに値上げを交渉し始めた。
ユニクロを運営するファーストリテイリングは「今回は、関税引き上げに加え品目数を増やすという。影響の広がりを注視している」(広報担当者)と話す。

190617日経
ニューヨーク=伴百江】世界の不動産市場で中国マネーによる購入の勢いが弱まっている。2019年1~3月の米国への投資額は前年同期比7割減に落ち込み、欧州やオーストラリアなどでの減速も目立つ。中国当局の資本規制に加え、米国では米中貿易戦争も響く。世界各地でホテルや高級マンションを買い上げてきた中国マネーの退潮は、世界の不動産ブームの変調を物語る。

米調査会社リアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)が一定額以上の不動産取引を調べたデータによると、18年中に中国の投資家や企業が世界の主要地域の不動産を購入した金額は約230億ドル(約2兆5000億円)と前年比46%減少した。中国本国向けのほか、中東やアフリカなどを除いて集計した。
12年以前の100億ドル未満から16年には425億ドルにまで急増し、17年もほぼ横ばいだった。
19年以降も減退は続く。米国では1~3月(4四半期移動平均)の投資額が6億4000万ドルと前年同期比で72%減少した。ピークだった16年7~9月の1割強の水準にまで落ち込んだ。
中国投資家の米不動産投資は15年後半から目立ち始めた。中国人民元の切り下げや中国株バブルの崩壊を受け、企業や富裕層が資金を海外に振り向けた時期と重なる。安邦保険集団や海航集団(HNAグループ)などの企業グループは高級ホテルや高層ビルの積極的な買収に乗り出した。
流れが一転したのは17年後半以降だ。RCAのシニア・バイスプレジデント、ジム・コステロ氏は「中国当局が人民元の下落に歯止めをかけ、企業債務の削減を進めるために投資制限を強化した」と解説する。18年春から激化した米中貿易戦争も、米国投資をためらう心理的な重荷になった。
売却も急増している。海航は18年に米国で5件、総額15億ドルの物件を手放した。多額の債務を抱え、中国政府からは海外投資を抑えるよう圧力がかかる。英紙フィナンシャル・タイムズによると、昨年に中国政府の管理下に入った安邦保険は保有する複数の米高級ホテルの売却交渉に入った。
中国マネーは他地域でも勢いを失っている。住宅価格の下落に直面するオーストラリア。シドニーの業者は「中国の購入者が激減した」と明かす。当局が過熱防止へ講じた外国人向けの購入規制も響いた。
豪外国投資審査委員会によると18年6月までの1年間に認可した中国からの不動産投資は前年同期比17%減の約126億豪ドルとなった。
カナダでは中国系移民も多いバンクーバーやトロントなどでホテルや高級住宅への投資熱が高まってきたが、中国勢の購入が急減している。

190620日経
台北=黎子荷、鄭婷方】米アップルが主要取引先に対し、iPhone(アイフォーン、総合2面きょうのことば)などの中国での集中生産を回避するよう要請したことが、19日分かった。アップル向けの中国生産のうち15~30%を海外に分散するよう検討を促した。米中貿易戦争の激化と中国の人件費高騰を受けリスクを分散する狙いだ。アップルの調達額は10兆円を超え、同社製品の9割超は中国で生産されているもよう。今後、世界のサプライチェーン(供給網)に大きな影響を与えることになる。


アップルは中国のほか台湾、日本など各地に取引先がある。同社が開示した2018年のサプライヤーリストによると、取引する部品工場などは約30カ国・地域の約800カ所に散らばる。日本では村田製作所やソニー、東芝メモリなど38社と取引している。
アップルは世界中の企業から調達した部品を中国に集約して完成品に組み立て、世界に出荷する効率的な体制を築いてきた。台湾の電子機器の受託製造サービス(EMS)主要3社のアップルとの取引額は合計14兆円規模に達し、アップルの世界全体の調達額は15兆円前後とみられる。アップルが生産体制を見直すと、間接取引先も含め雇用にまで影響が広がる可能性がある。
アップルを主要顧客とする複数の大手サプライヤー幹部が、アップルの生産再編に関する要請内容を明らかにした。要請に先立ち、アップルは18年末、社内に30~40人規模の特別チームを編成した。取引先と中国以外での生産の実現性など詳細な協議を進めており、中国での集中生産を回避する狙いだ。
アップルには、米国が中国製品に課すことを検討する制裁関税「第4弾」の発動への危機感がある。第4弾が発動されると最も大きく影響を受けるのが、中国で大量に生産されるiPhoneなどのスマートフォンやノートパソコンなどの製品だ。制裁が決まればアップルは米国で大幅な製品の値上げか、追加関税分を自社で吸収することを迫られる。
第4弾の発動がなくても中国の人件費は高騰してきている。アップルは中長期にわたり生産の分散化を進める方針は変えないもようだ。
特別チームは、サプライヤーの中国の代替生産の候補地となる国・地域での調査のほか、投資優遇など地元政府との交渉役もサプライヤーとともに担っている。現在、メキシコ、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどが有力な候補地に挙がっている。
アップル製品はiPhoneの廉価版など、ごく一部のインド生産を除き大半が中国で組み立てられている。最大のサプライヤーはEMS世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業。中国の広東省深圳市や河南省鄭州市を中心に巨大工場を構え、中国で約80万人を雇用している。
台湾の和碩聯合科技(ペガトロン)もiPhone、広達電脳(クアンタ)はノートPCのマックブック、仁宝電脳工業(コンパル)はタブレットのiPadの生産を中国で集中的に行ってきた。関係者によると、各社ともアップルに中国以外への生産拠点の分散を検討するよう求められたという。
鴻海で半導体事業などを統括する劉揚偉氏は11日の事業説明会で「顧客のアップルと24時間体制で貿易摩擦の変化を注視している。顧客の要請を満たすため(中国以外の生産を)増やすことができる」と述べ、アップルと中国生産の一極集中回避に向け、協議をしていることを示唆していた。
中国は「世界の工場」として、90年代から製品を大量に作るノウハウや供給・物流網を確立した。アップルの完成品を作る鴻海などの工場周辺には多くの部品メーカーも集積し、すぐに他国に生産を移すのは容易ではない。
アップルのライバル、中国の華為技術(ファーウェイ)も米国からの事実上の制裁で、このほど年4000万台のスマホの減産方針を打ち出した。
米中両国を代表するアップルとファーウェイの相次ぐ戦略転換で、両社と取引する世界中のサプライヤーは大きな事業戦略の見直しを迫られる。

190728日経
中国がカンボジアに軍事拠点を置くのではないか。そんな疑惑が相次いでいる。事実なら地域の国際秩序を不安定にしかねない。関係国は両国に対し納得いく説明を求めるとともに、粘り強く自制を促す必要がある。
中国がカンボジア南西部の港町シアヌークビルに「前哨基地」を置くことで両国が密約を交わしたと米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。中国が海軍基地の一部を最低でも30年間、独占的に利用し、兵器の保管や軍関係船舶の停泊も認めるという。
カンボジア、中国とも報道を否定しているが、シアヌークビル周辺では中国企業が主導する巨大な開発プロジェクトが進んでおり、軍事利用を懸念するペンス副大統領が昨年11月、フン・セン首相に懸念を示す書簡を送っている。
首相は他国の軍隊の駐留を禁じるカンボジアの憲法を守ると強調したが、その後、大型軍用機も離着陸できる長距離滑走路の建設が衛星写真で分かり、各国は不信感を強めている。
タイ湾に面し、天然の良港であるシアヌークビルは、もともと戦略上の要衝だ。ここに中国が軍事拠点を置けばインドシナ半島の南西部で影響力は拡大する。タイ、ベトナム、マレーシアなどが身構えるのは必至だ。南シナ海の領有権をめぐる中国の発言力も増し、地域の緊張を招きかねない。
日本もマラッカ海峡を含めたシーレーンに近いシアヌークビルを重視し、民間港の開発を政府開発援助(ODA)で支援して軍港化をけん制してきた。疑惑が浮上した軍港はこの民間港から20キロほど離れた位置にあり事実なら日本が裏をかかれた形になる。カンボジアと長年の友好関係にある日本は率直に懸念を伝えるべきだ。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の役割にも期待したい。南シナ海の問題と同じく、ひとたび軍事施設が完成すれば覆すのは難しい。関係国が足並みをそろえて監視網を築かなければ、ゆくゆく大きなコストを払うことになる。

190814日経
エネルギーを巡る世界の構図が大きく変わっている。太陽光や風力などの再生可能エネルギー(総合2面きょうのことば)が普及期に入り、温暖化対策に向けて化石燃料は転機を迎えた。再生エネとシェールガスの伸びは中東に依存した供給の構造も転換する。一方で日本の戦略は原子力政策をはじめとして停滞が目立つ。再生エネに進む世界を前に、日本も立ち止まってはいられない。
中国・上海にあるオフィスビルの一角。風力発電機で世界5位の中国企業エンビジョンは、日本全体の規模にあたる計1億キロワットの再生エネ施設を、数十人のオペレーターで監視している。
同社のシステムは電気自動車(EV)の充電設備やエレベーター、室温センサーなど約5千万の機器とネットでつながっている。集まる情報をもとに電力の需要を予測し、オペレーターが監視する太陽光や風力が順調に発電していれば、EVに充電するなどの制御をする。再生エネ施設の故障の前兆などもつかむ。


習氏、重点分野に

中国企業が再生エネで存在感を高めている。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、中国では2018年までの10年間で風力の発電容量が22倍、太陽光は700倍弱に急拡大した。世界全体で風力が5倍、太陽光が33倍になったけん引役だ。水力を合わせた世界の再生エネで中国の割合は18年に30%と、2位の米国(10%)に大差をつけている。
背景には習近平(シー・ジンピン)最高指導部がハイテク産業育成策「中国製造2025」で再生エネを重点分野に位置づけていることがある。中国は伸びる電力需要を火力発電でまかなうと、大気汚染が深刻になりかねない。このため発電に占める風力と太陽光を合わせた比率を18年の1割弱から、30年には3割弱に上げることを目指す。
中国は広域経済圏構想「一帯一路」でもクリーンエネルギー技術の輸出を打ち出し、新興国で大型案件を受注する。海外市場も見据えた急速な再生エネへの移行は、米国との貿易の対立の源流ともなった。
中国・上海の郊外。直線で約250キロメートルの間にシリコンの部材やガラス、ケーブルなどを作る企業が集まる「太陽光パネルベルト」がある。ここにあるロンジソーラーは世界6位だが、日本の需要の7割をまかなえる巨大工場を持つ。中国製のパネルは日本製より3~5割安く、17年の世界シェアは71%。かつて首位だった日本は2%だ。
「米国の太陽光パネル産業が消えかけている」。トランプ米政権は18年1月、中国製を念頭にセーフガード(緊急輸入制限)を発動した。米国では16年まで4年間の輸入急増でパネル価格が6割下がり、米最大手のファーストソーラーは連結最終赤字に陥っていた。
だが、世界の太陽光発電は中国なしでは成り立たない。18年7月にセーフガードを発動したインドには東南アジアにある中国企業の工場からパネルが流れ込む。「海外に販路を広げてきたことが奏功した」。世界最大手、ジンコソーラーの銭晶副会長はこう話す。
特許出願で首位

中国国内の太陽光はコストが下がり「補助金なしでも普及できるレベルに近づいている」(中国国家気候変動戦略研究・国際協力センターの李俊峰教授)。中国は15年時点で石油の60%を輸入し、再生エネは安全保障のためにも欠かせない。
製品で市場を席巻した中国勢は技術もおさえにかかる。再生エネに関連する特許出願件数では09年に日本を抜き、首位になった。16年時点で保有する特許は約17万件と米国の1.6倍、日本の2倍に達する。機器の納入をきっかけに、工場やオフィスへの電力を最適に制御するエネルギーマネジメントでも先行する。
対する米国。トランプ大統領は地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱を表明した。一方で米グーグルなどIT(情報技術)大手は再生エネの採用を進め、発電コストは急速に下がっている。
日本は水力を除く再生エネの比率が約8%。固定価格での買い取りで太陽光が普及したが、パネル生産での世界シェアは大きく下げた。風力発電なども広がらず、企業は苦戦が続く。
IRENAは1月の報告書で、世界で再生エネへのシフトが進めば、大きな投資をしてきた中国が資源国にかわって影響力を強めるとした。日本勢は技術開発でも遅れれば、世界から取り残されかねない。

190814日経
広州=川上尚志】中国の新車市場が1年以上にわたり、前年実績を割り込む異常事態が続いている。中国汽車工業協会が12日に発表した7月の新車販売台数は前年同月比4.3%減となり、13カ月連続でマイナスとなった。2019年は通年で前年割れは確実で、過去最悪の2ケタ減の可能性もある。下半期の巻き返しがカギだが、株価は足元で落ち込み、政策もちぐはぐさが目立つ。復活の道筋は立っていない。
吉利、2割強減る

「昨年より売り上げが大きく落ちている。景気が悪いからだ……」
中国南部の中核都市、広東省広州市。同市郊外にある中国大手メーカーの浙江吉利控股集団の販売店の店員は、そう言ってあきらめ顔に話した。
吉利は、スウェーデンのボルボ・カーを買収し、その後マレーシアのプロトン、独ダイムラーに出資した中国大手だ。多くの中国メーカーとは異なり、外資大手との合弁事業には頼らず、自力で昨年は中国市場で3位にまで浮上した。その会社が今、非常に苦しんでいる。新車販売は7月まで3カ月連続で前年同月比20%以上も落ち込んだ。「市場の落ち込みは予想以上で、19年後半も不透明な状況が続く」(吉利汽車関係者)と厳しい見方を持つ。
吉利と並ぶ中国ブランド大手の比亜迪(BYD)も厳しい。同社の7月販売は前年同月比17%減。中国政府が6月から電気自動車(EV)などへの補助金を大幅に減額したことを受け、同社主力のEV販売が急減した。
中国で首位争いを続ける米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)も苦戦が続き、現在は上位勢が軒並み苦しむ状況だ。

背景を探ると、要因は大きく3つある。
まずは株価だ。中国の株式市場では個人投資家が約8割を占める(出来高ベース)。相場次第で個人の消費意欲を大きく左右するのは過去にも実証済みで、一般的に、代表的な株価指標の上海総合指数が3000を下回ると、すぐに新車の買い控えにつながる。
この基準で同指数を過去に遡ると、やはり昨年6月後半に3000を割り込み、足元まで2800前後で推移する。この期間はまさに、新車販売の前年実績割れの期間とほぼピタリと重なる。
不動産投機が影

不動産への投機拡大も影を落とす。中国政府はこれまでも景気が悪くなると住宅ローンを組みやすくする政策を取ってきた。「その結果、現在は不動産関連の借金や支出圧力が強く、自動車の販売市場にマネーが流れ込まなくなり、大きな影響を受けている」(乗用車の業界団体)。
実際、不動産マネーは、開発余地の大きい内陸部中心に流れ込んでいる。国家統計局によると、1~6月の地区別の不動産開発投資額は、北京や上海、深圳など沿岸の主要都市を含む東部地区が前年同期比9.9%増で全国平均の10.9%を下回った一方、西部地区(15.5%増)や東北地区(12.7%増)などの内陸部での投資は活発だ。
「こうした不動産投機の影響は大きく、内陸部に強い中国メーカーが苦戦しているのは、まさにそのためだ」(みずほ銀行法人推進部の湯進主任研究員)と解説する。

政策も、厳しい市場に追い打ちをかけているといえる。中国政府は7月1日、国内の約半分の地域に新排ガス規制「国6」を導入した。米中貿易戦争の最中、ただでさえ厳しい市場に、その導入には賛否もあったが、当初予定より1年前倒しで導入され、販売現場はやはり混乱した。政府は買い替え需要を狙ったともみられたが、消費者は違った。「国6」対応車がすぐに販売店には出そろわないとみて買い控えに走った。上海市在住の32歳の男性会社員の呉さんは「車は買いたいが、欲しい車種は(以前の)国5基準のものしかなく、国6基準で新しい車種が発売されるまで待ちたい」と話した。
EVに対する補助金政策もマイナスに働いている。これまでEV市場拡大に貢献してきた政策だったが、政府は6月から最大で半分近く補助金を一気に減らすことを決めた。当然のように市場は落ち込み、業界では「なぜこのタイミングだったのか」との声が上がる。

中国では各種の政策が継ぎはぎ状態で、都市部で進めてきたナンバープレートの発給制限も、広東省の主要都市で一部緩和されたが、新政策は浸透しておらず、販売喚起に至っていない。
一方、業界では過去に実績がある小型車に対する減税策の導入を期待する意見もある。08年のリーマン・ショック後、さらには15年の株価大暴落後に「小型車減税策」が繰り出され、効果を上げた。しかし需要の先食いが激しく、しかも同政策は直近で17年末まで続いたことで「今の状況で、小型車減税は再び繰り出しにくい状況だ。乱発しすぎで効果は期待できない」(日系自動車メーカー幹部)と話す。
こうした状況などから、大手調査会社のフィッチ・ソリューションズは5日、19年の新車販売の見通しを従来予想の4%減から9%減に引き下げた。中国の1~7月の新車の累計販売は11.4%減。繰り出す策が限られているなか、このままいけば世界最大の市場である中国は過去最悪の通年で2ケタ減もいよいよ現実味を帯びてくる。

190825
米中貿易戦争、持久戦へ=互いに全輸入品制裁
8/25(日) 7:18

 【ワシントン、北京時事】トランプ米大統領は23日、対中制裁関税を引き上げると発表した。

 中国が米国からの輸入品ほぼすべてに報復関税を拡大すると表明したことに対抗したもので、両国は互いに全輸入品に制裁を科す格好だ。制裁と報復の連鎖は過熱の一途をたどっており、米中貿易戦争は「持久戦」の様相を強めている。

 「米国は中国を必要としていない。いない方がはるかにましだ」。トランプ大統領は23日、ツイッターでまくし立てた。

 米国は中国からの輸入品2500億ドル(約26兆円)分に昨年発動した制裁関税を、10月1日に25%から30%へ引き上げ。さらに、現在は対象外となっている3000億ドル分にまで制裁を広げる「第4弾」の税率も、当初予定の10%から15%とする。

 2020年の再選を狙うトランプ大統領は対中貿易協議の行き詰まりに焦りを強め、強硬策を連発している。中国を、輸出に有利な通貨安に誘導する「為替操作国」に認定。同国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)への制裁も強化した。

 23日には、米国企業に中国事業から撤退するようツイッターで訴えた。大統領の判断で外国での商業活動を規制できる「国際緊急経済権限法」を根拠に、なりふり構わぬ手段に出る姿勢を示した。

 これに対して中国商務省は24日、米国の制裁関税引き上げに「断固反対」を表明した上で、「誤った措置を即座に停止する」ことを要求。全面対決の構えを崩していない。

 中国は10月に建国70周年の重要な節目を控えており、国内からの「弱腰批判」は避けたいところ。貿易摩擦の長期化で、米株価が乱高下するなど景気先行き不安が強まれば、トランプ氏が軟化するともくろむ。

 当面は、9月上旬の米中閣僚級貿易協議が予定通り行われるかが焦点だが、合意に向けた道のりは険しそうだ。 

190829日経
北京=原田逸策】中国の中央と地方を合わせた税収額が2019年は前年水準を下回る見通しだ。通年で前年割れとなれば、文化大革命で社会が混乱した1968年以来、51年ぶり。大規模減税が主因だが、景気減速で法人税や不動産関連税も膨らまない。地方財政が逼迫すればインフラ投資が低迷し、景気の懸念材料になる。今後も少子高齢化による国内市場の縮小で、構造的に税収が伸びにくくなりそうだ。


中国財政省によると、1~7月の税収は10兆8046億元(約160兆円)と前年同期比0.3%増えた。だが、単月は7月まで3カ月連続で前年同月を下回った。税収の4割を占める増値税(付加価値税)の減税が4月に始まったからだ。財政当局関係者は「下期の税収はさらに下振れする」とみる。通年で18年実績(15兆6402億元)を下回る公算が大きい。
李克強(リー・クォーチャン)首相が3月に表明した、2兆元規模の減税・手数料軽減が税収減の直接要因だ。国家税務総局によると、1~6月の減税規模は1兆387億元に達した。税目別の内訳は増値税が4369億元、個人所得税が3077億元、中小企業減税が1164億元など。1~6月の所得税は前年同期と比べ31%も減った。

不動産販売の伸び悩みも中国の税収減の一因だ(1月、陝西省で展示された複合ビルの模型)=ロイター

中国はその前の16年から毎年5千億~1兆元規模の減税を実施していたが、税収は増えた。並行して徴税を強化し、税制改革で脱税が困難な増値税の比率を高めたことが主因だ。企業経営者らは「政府の減税は口先だけ」と陰で批判し、一部は税負担の安い海外に生産拠点を移した。だが、李首相が3月に打ち出した減税は規模が大きい。
税収減には景気減速も響く。減税の影響を織り込んだ19年予算は、税収が16兆元強で18年実績より3%増えると見積もられた。それが前年割れに転じそうなのは、税収の2割強を占める法人税(企業所得税)などが不振だからだ。予算で法人税は10%増を見込んだが上期の伸びは5%だけだ。1~6月の製造業・鉱業の利益は前年同期比2%減った。研究開発減税を拡充したことも響いた。
契約税など不動産関連の税収も予算では12%増と見積もったのに、上期は4%増にとどまった。バブル崩壊を懸念した売買規制で、マンションの販売が伸び悩んだ。
税収減は地方政府の財政を直撃する。地方政府は中央の許可なしに資金調達ができず、これまでは黙認されてきた「隠れ借金」もいまは厳しく制限されているからだ。予算で見積もった金額を実際の税収が下回れば、歳出を減らすしかない。
地方政府の「第二の財布」といえる国有地売却も、不動産の売買規制で低迷している。土地売却収入を積み立て、インフラ建設などにあてる地方政府の基金をみると、1~6月の収入は2兆8742億元にとどまった一方、支出は3兆2714億元だった。上期は約4千億元の赤字で、過去最悪の水準となった。
中国では減税と並ぶ景気対策の柱であるインフラ建設も地方政府が主役を務める。一部の地方は税収減で職員の給与支払いにも窮しているのが現状だ。中央が旗を振ってもインフラ投資が進まない一因となっている。
税収不振は構造的な問題になりつつある。中国の税収は08年の金融危機前は年率20~30%で増えたが、景気減速で伸び率が鈍り、15~16年には4%台まで落ちていた。今後も少子高齢化による国内市場の縮小などを背景に、以前のような高い伸びは期待できない。
税収減を補うため、中国政府は税外収入の拡大に力を入れる。1~6月には21%増の1兆5422億元と大幅に伸びた。国有企業の利益剰余金の国庫納付を増やしたりした。このため税収と税外収入を合計した予算収入は1~6月に3%増え、税収の伸びを上回った。

190829日経
広州=比奈田悠佑】中国の家電市場が急減速している。家計債務の増加や不動産投機の抑制策が響き、エアコンや冷蔵庫など毎月の家電販売総額はほぼ1年間、前年割れが続く。エアコンは過去最多の在庫が積み上がり、量販大手の国美零售は最終赤字だった。買い替えの補助金などで国に支えられてきた家電産業は転換期を迎え、部品を供給する日本企業などにも影響が出そうだ。

中国の家電市場に急ブレーキがかかっている(広州市の量販店)

調査会社の北京中怡康時代市場研究によると、2018年7月から19年6月までの家電販売総額は3月を除き、前年同月比割れした。マイナス幅は平均8%に達し、市場の縮小傾向が鮮明だ。
「弟の学費など今後の支出を考えると、安易に買い替えに踏み切れない」。広東省広州市に住む苗さんは型落ち8年の洗濯機を新調するかどうか数週間、悩んでいる。脱水機能が壊れたため、湿度が高い広州ではなかなか洗濯物が乾かない。


洗濯機は生活必需品だが、苗さんのように家電の購入をちゅうちょするケースが増えている。財布のひもの固さの根底にあるのは、家計債務の急激な増加だ。
中国の家計債務残高は18年末時点で47兆元(約690兆円)を超え、5年前の2.4倍に膨れ上がった。国内総生産(GDP)に対する比率も53%(13年は33%)に急上昇した。ここ数年、住宅や車などローンによる購入が消費のけん引役だったが、ローン返済が重荷となり、家電販売に真っ先にその影響が出ているという。
さらに、家電市場を襲うのが不動産政策の転換だ。政府は金融の不安定化を避けるため各地で投機的取引への規制を強める。家電・IT業界のアナリスト、梁振鵬氏は「不動産投資は家電販売の大きな動力だ。規制の影響が出てきた」と指摘する。不動産売買が抑制され、18年の住宅販売面積の増加率は2.2%と直近3年平均の11.5%から大きく減速した。新築や引っ越しでまとまった需要が見込める洗濯機や冷蔵庫、テレビの販売が連動して落ち込んだ。


中国では洗濯機の100戸あたり保有数は都市部では90台超で高止まりし、農村部も80台を超える。冷蔵庫も都市部、農村部ともに90台以上。エアコンだけは例外で都市部では120台以上だが、機密性の低い住宅が多い農村部は50台程度。旧式の家に住む人がマンションに移り、新規需要が見込めるはずだった。
商機を逃がすまいと、世界最大手の珠海格力電器や2位の美的集団は工場の稼働率を高めた。ところが、不動産投資の減速は農村にも波及し、各社のアテは外れた。北京中怡康時代によると、家庭用エアコンの完成品在庫は4月時点で4860万台超と過去最多の水準まで積み上がった。
過去に在庫が急増した際、電力を制御するパワー半導体を供給する三菱電機など日本企業の業績に影響が及び、今回も下振れが懸念される。量販大手の国美零售の19年1~6月期決算は3億8千万元(約56億円)の最終赤字で、蘇寧易購も純利益が6割減った。今後は家電メーカーの業績に影響が出る可能性がある。
中国国務院が27日打ち出した消費活性化に向けた声明では、自動車などに加え、家電の省エネ製品への買い替え促進策を検討することを盛り込んだ。米中貿易戦争が長期化するなか消費低迷への警戒を強めている。家電アナリストの劉歩塵氏は「今後、市況が厳しくなるほど(企業の統廃合など)再編の可能性は高まっていく」と指摘する。

190830日経
上海=張勇祥】中国政府が海外への資金流出を抑制する新規制を導入した。資金流出が加速した場合、海外送金や外貨売却が多い銀行の評価を引き下げる新ルールを適用する。不動産会社には借り換え目的以外の外債発行を禁じた。米中貿易戦争が長期化するなか、人民元相場(総合2面きょうのことば)で11年ぶりとなる1ドル=7元を突破し、当局は当面この水準を容認しているが、元安に歯止めがかからない状況は回避したい考えだ。

中国政府は元安を容認して輸出企業への影響を緩和する方針だが、2015年の人民元切り下げを機に起きた「人民元ショック」のような急激な元売り圧力に襲われることを警戒する。
このため導入したのが元売りが膨らまないよう銀行の海外送金などを制限する新しい規則だ。金融システムの安定が損なわれかねないと判断した場合、国家外貨管理局は「非平常時」と認定する。各行の元の海外送金、外貨売却の状況を全国平均と比べ、差が大きいほど評価を下げる。低評価の銀行は業務に制限をかけられる可能性がある。
現在も当局は海外送金を制限するため、個人顧客に詳しい資料を提出させるよう銀行を厳格指導している。留学費用なら入学許可書、仕送りでは相手先の在職証明などを求める。「不動産や保険商品の購入目的での海外送金は認めていない」(準大手銀行の支店)
元の海外送金と顧客への外貨売却は、元安や資金流出が止まらなかった16~17年にも外貨管理局が規制した。このときは外国人が円換算で数十万円規模の送金をするのも難しくなった。手段を選ばない規制に海外から批判を浴びたが、今回は直接的な資本規制は回避して批判をかわす狙いだ。
だが外貨管理局は平常時と非平常時の判断基準を示しておらず、当局のさじ加減で海外送金に支障が出る恐れがある。
不動産会社にはより厳しい規制を課した。国家発展改革委員会は外債発行による調達資金の使途を「1年以内に満期を迎える海外債務に限る」と通知し、借り換え以外の調達は認めない方針だ。
中国の不動産会社は元が高値で推移した13~15年にドル建て債務を膨らませた。19年7月時点の残高は1700億ドル(18兆円)との調査もある。元安が進めば債務返済の負担はさらに重くなる。
ドルを調達すれば一時的に元高要因になる可能性はある。だが信用の低下した不動産会社は10%前後の高利で借りている例もある。これ以上の債務拡大は金融市場の不安定要因になりかねない。
中国政府は米国との摩擦の長期化を懸念する。トランプ米大統領は8月1日、制裁関税の対象を中国からの輸入品ほぼすべてに広げる「第4弾」の発動を表明した。5日には元の対ドル相場が08年以来となる1ドル=7元台を付けた。29日には一時1ドル=7.17元まで下落し、月間の下落率は約4%と「管理変動相場制」を導入した05年以降で最大になる見通しだ。

190830日経
資本規制が残る中国では人民元取引も中国本土市場とオフショア(海外)市場に分かれる。本土では主要な市場参加者である国有銀行の影響力が強く、当局の窓口指導や介入も頻繁にあるとされる。取引が自由な海外市場では外国人投資家の相場見通しが反映されやすく、投機筋の売買で相場が大きく変動することもある。

▽…本土市場で重要な指標が、中国人民銀行(中央銀行)が毎朝公表する「基準値」と呼ばれる為替レートだ。大手行十数行に相場実勢の提出を求め、加重平均して算出しているというのが人民銀の公式見解だ。だが人民銀は取引実勢が元安でも翌日の基準値に反映しづらくする元安抑制策を導入するなど、運用には恣意的な面が残る。基準値には当局の意向が反映されているとの見方が一般的だ。
▽…元の対ドル相場は5日、11年ぶりの安値となる1ドル=7元台に下落した。不調に終わった7月末の米中貿易協議や、トランプ米大統領が対中制裁関税「第4弾」の発動を表明した直後だったため、習近平(シー・ジンピン)指導部が輸出産業の下支えを目的に元安を容認したとの分析が多い。基準値も数日遅れて7元台を付けた。

190830日経
北京=原田逸策】中国商務省の高峰報道官は29日の記者会見で、米国との貿易協議について「いま議論すべきは、5500億ドル(約57兆円)分の中国製品にさらに上乗せする追加関税を取り消し、貿易戦争がエスカレートするのを防ぐことだ」と述べた。そのうえで米国が新たな制裁関税を取り消すことが、9月上旬に米国で予定する貿易協議を開催する条件になるとの考えを示した。
米中は7月末に上海で閣僚協議を開いたが、めぼしい進展がなく、トランプ米大統領は3千億ドル分の中国製品に制裁関税「第4弾」をかける方針を表明した。中国が今月23日に対抗措置を公表すると、トランプ氏は発動ずみの2500億ドル分の中国製品にかける追加関税を25%から30%に上げる方針を示した。
中国が取り消しを求めたのはこの2つの制裁関税で、9月1日から順次発動する予定だ。6月末の大阪での首脳会談で、トランプ氏は「当面は追加関税はかけない」と表明し、中国は新たな制裁関税を「首脳間の共通認識に著しく違反する」と批判してきた。

190902日経
中国政府は中国自動車業界での生産能力の過剰問題に関する監督を強める方針だ。8月31日に天津市で開かれた自動車産業の国際フォーラムで、政府の担当官が表明した。中国は地場メーカーの乱立もあり、新車販売を大幅に上回る生産能力を抱えている。政府はガソリン車の生産能力の削減などに取り組むが、なお過剰は解消されていない。
企業の許認可権を握る国家発展改革委員会の盧衛生・産業発展局局長が31日「(過剰な)生産能力の稼働率を適正にさせる。対策が遅れている自動車メーカーは淘汰される必要がある」と述べた。政府は今年1月に「自動車産業投資管理規定」を施行し、ガソリン車メーカーの新規設立などを禁じた。盧氏は「管理規定の適切な実施が必要だ。管理・監督を強めていく」と語った。
中国の新車販売台数は2018年が約2800万台だった。一方、生産能力は近年、中小企業も含めて新規参入が相次いだため、6千万台に伸びているとされる。
中国自動車業界全体の工場稼働率は19年1~6月期が約77%で、前年同期から3.8ポイント下がった。自動車工場が利益を上げるには一般的に8割程度の稼働率が必要とされる。中国政府は過剰設備が産業の高度化を妨げるとして、鉄鋼などの分野で設備廃棄を進めている。

190903日経
佑】「逃亡犯条例」改正案をきっかけとする抗議活動が続く香港の混迷が深まっている。若者らが地下鉄駅の施設を破壊するなど暴力行為が止まらず、一部の中高・大学生は2日から授業のボイコットを始めた。中国本土側は10月1日の建国70周年という重要な節目を控え、けん制の度合いを強めている。
「勉強よりも自由が大事だと思ってここに来た。警察や政府がやっていることはおかしい」。2日午後、香港島・中環(セントラル)の集会に参加した女子生徒(17)はこう話した。香港大学など主要大学のほか100を超える中学・高校でボイコットが呼びかけられ、学校前で手をつないで「人間の鎖」をつくったりビラを配ったりした。
香港政府ナンバー2の張建宗・政務官は2日の記者会見で「学校に社会問題を持ち込むべきではない」と述べ、こうした動きを批判した。ここ数日、デモ隊と警察の攻防は激しさを増している。香港政府によると8月31日から9月1日にかけてデモ隊が投下した火炎瓶は100以上に上り、32の鉄道駅が破壊された。警察はこの週末で合計159人を逮捕した。
中国本土側は香港のデモを激しく非難している。中国外務省の耿爽副報道局長は2日の記者会見で「(現状は)デモや集会の自由の範囲を完全に超えている。法治と社会秩序に対する重大な挑戦だ」と述べた。
中国共産党系メディアの環球時報は2日、社説で「香港政府と警察は暴乱の抑止に向けた法的措置と手段をまだ残している」と指摘。集会や通信の制限などを立法会(議会)の同意なしに適用できる「緊急状況規則条例」の発動を念頭に置いており、強硬姿勢も必要との見方を示した。
授業ボイコットを呼びかけた大学の学生会は香港政府への要求の回答期限を13日に設定した。条例の完全撤回や暴力行為を調査する独立委員会の設置など「五大要求」を主張。要求が満たされない場合は抗議をエスカレートさせるという。対立が先鋭化して暴力の応酬が続く懸念が高まっている。

190903
北京時事】中国商務省は2日、米国による対中制裁関税「第4弾」発動を受け、世界貿易機関(WTO)に提訴したことを明らかにした。

 中国は昨年4月、米国の制裁関税案の発表を受けてWTOに提訴。その後も実際の発動時に提訴を繰り返している。

 商務省は報道官談話で「米国の追加関税は米中首脳会談での合意に著しく反している」として、「強烈な不満と断固たる反対」を表明。自国の合法的な権益と国際貿易の秩序を守ると強調した。 

190905日経
香港政府トップの林鄭月娥・行政長官は4日、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回すると表明した。香港では改正案をきっかけに6月から大規模デモが続いており、一部の要求を受け入れて事態収拾を狙う。ただ、若者らの要求は政治改革にも広がっており、抗議活動が収束に向かうかは不透明だ。(関連記事総合1面に)
林鄭氏は4日、テレビを通じて演説し「暴力は解決策にならない。争いを対話に置き換えて解決策を探そう」と述べた。改正案撤回のほか、政府と市民の対話の枠組みや、社会問題を討議する専門家の委員会をつくると表明した。
改正案を巡っては、中国共産党に批判的な活動家らの中国本土への引き渡しにつながりかねないとの懸念から市民が反発。6月以降、100万人を超える大規模デモが3回あった。林鄭氏は6月に条例改正を期限を定めず延期すると表明。7月には「条例案は死んだ」と発言したものの、立法会(議会)からの正式な取り下げは拒んでいた。
改正案の完全撤回はデモ参加者が求める「五大要求」の一つ。ただ、香港政府は事実上の改正断念を表明しており実質的効果は限定的とみられる。
林鄭氏は警察の暴力行為を調べる独立委員会の設置や、有権者が1人1票を投じる普通選挙の導入など他の要求は拒否した。

190905日経
ローマ=細川倫太郎】世界貿易機関(WTO)は4日、米政府が1日に発動した中国への制裁関税「第4弾」を不当だとして、中国がWTOに提訴したと発表した。中国が米国の制裁関税で提訴するのは3回目。まずは2カ国間で協議し、60日以内に解決できなければ、中国は一審に相当する紛争処理小委員会(パネル)の設置をWTOに求めることができる。
米国は家電や衣料品など1100億ドル(約12兆円)相当の中国製品に15%の追加関税を課した。中国が通商交渉で譲歩しなければ、さらなる制裁関税に踏み切る方針だ。これに対し、中国はWTOのルール違反にあたるとして米国を提訴すると2日に発表していた。WTOは4日、中国が正式に提訴したことを加盟国に通達した。
米国は中国の知的財産侵害や技術移転の強要、巨額の政府補助金を投じる産業政策などを問題視している。
これに対して中国は関税での差別を禁じるWTOの最恵国待遇の原則などに反すると主張する。
両国の主張には隔たりが大きく、2国間協議で解決する可能性は極めて低く、パネルが設置される公算が大きい。パネルの判断を不服としてどちらかが上訴すれば、WTOの最終審にあたる上級委員会での審理が始まる。ただ、WTOで審理中の紛争案件は増加している一方で、上級委員会は人員が不足している。このため最終判断が出るまでには、数年かかるとみられる。

190911日経
北京=石橋茉莉】日中経済協会と経団連、日本商工会議所による合同訪中団は10日、中国商務省と自由貿易の推進について議論した。鍾山商務相は冒頭のあいさつで制裁関税の応酬を繰り広げる米国を念頭に「一国主義に対して我々は多角的な貿易体制だ」と述べた。訪中団の宗岡正二団長(日本製鉄相談役)は「米中両国が交渉による問題解決を図るよう期待する」と求めた。
米中摩擦を巡り、鍾山氏は「仕掛けてくる人がいれば立ち向かうしかない」とも話した。宗岡氏は「世界経済の4割を占める米中の対立は、世界経済の成長を阻害する可能性が高まっている」と指摘。日本側の基本姿勢として「多角的で自由な貿易・投資の原則を貫く」と語った。

190912日経
北京=原田逸策】中国の地方政府がインフラ整備の財源にする債券の発行を加速する。2019年分は9月末までに全額を発行し、10~12月には20年分の一部を前倒しで発行する。調達した資金の使い道を広げ、地方政府の資金不足を防ぐ。景気下支えを強める狙いだが、経済の投資依存がさらに深まる恐れがある。

発行するのはインフラ整備目的の特別債(専項債)。15年に発行が始まり、19年の発行枠は前年より8千億元多い2兆1500億元(約32兆円)に上る。鉄道や道路のほか、低所得者が住む地域の再開発事業に充てる。1~7月に計1兆6862億元を発行し、枠全体に対する進捗率は78%と前年同期より36ポイント高い。
国務院(政府)は今月上旬の常務会議で、19年分の発行を9月末までに終え、10月末までに調達した資金を事業に行き渡らせるよう指示した。10月以降は発行枠がなくなるため、20年分から「前借り」する。
全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は18年12月の常務委員会で、翌年の地方債の発行枠から一部を前倒しで発行する権限を政府に与えた。19~22年はその年の発行枠の最大6割を上限に、前倒し発行ができる。インフラ債に通常の地方債を加えた19年の発行枠は計3兆800億元で、1兆8500億元を前倒しで発行できる計算だ。
これまで地方債は3月に開く全人代で政府に発行権限が与えられ、4~5月に発行が始まることが多かった。19年は発行開始が1月に前倒しされただけでなく、20年分を前借りする異例の事態となる。
インフラ投資の伸びは1~7月の累計で前年同期比3.8%と低迷している。財政省の許宏才次官は9月の記者会見で「有効な投資を増やし、内需を拡大する」と語った。

資金不足で建設が止まったモノレール(山東省)
中国のインフラ建設は従来、事業費の2~4割を地方政府が税収などで自力で手当てする必要があった。住宅ローンの「頭金」に近い概念だが、共産党と国務院は6月、インフラ債で調達した資金を「頭金」に充てることを認め、100%借金によるインフラ建設に道を開いた。
対象事業も拡大し、地方政府がインフラ建設を継続できるようにする。当初は対象を高速道路と高速鉄道、発電所、ガス設備の4つに限定していたが、新たに空港や港、駐車場、ごみ処理施設など6つを加えた。
背景には、3月の全人代で決めた2兆元規模の減税で想定以上に税収が落ちこみ、資金不足に陥る地方政府が続出していることがある。ただ、習近平(シー・ジンピン)指導部は不動産バブルへの警戒を解いてはいない。インフラ債の前倒し発行による資金を不動産事業に充てることは禁じており、ショッピングセンターなど商業施設も対象事業に認めていない。
地方債の発行が増えれば、本来なら民間企業が調達するはずのお金を政府部門が吸い取る「クラウディングアウト」が起こる恐れがある。このため、国務院金融安定発展委員会は8月末の会議で「財政政策と金融政策をより結合させる。金融部門はインフラ債の発行を支持する」と決めた。
中国人民銀行(中央銀行)は6日、預金準備率を下げて9~11月に計9千億元を市中に放出すると公表した。流動性を高め、地方債の発行を後押しする狙いとみられる。

190917日経
中国経済の悪化が止まらない。16日発表の2019年8月分の経済指標によると、工業生産の伸びは前年同月比4.4%と7月より減速し、リーマン・ショック直後以来の低水準に沈んだ。小売売上高や投資の伸びも縮小した。米国との貿易戦争で製造業が不振だ。中国政府は金融緩和とインフラ投資に動くが、強い下押し圧力をどこまで緩められるかは不透明だ。

「経済の構造矛盾は突出し、下押し圧力が高まっている」。国家統計局の付凌暉報道官は16日の記者会見で経済の悪化を率直に認めた。
とくに工業生産の落ちこみが目立つ。7月から改善するとの予想が多かったが、実際は0.4ポイント下回った。伸び率は09年1~2月(3.8%増)以来の低さだ。生産量をみると自動車(前年同月比1%減)、スマートフォン(11%減)、ロボット(19%減)、工作機械(21%減)などが不振。発電量の伸びが2%増にとどまったのが生産全体の弱さを裏づける。
一つの原因は輸出の低迷だ。工業生産のうち輸出向け販売額は8月に前年同月比4%減り、16年10月以来2年10カ月ぶりの減少。トランプ米政権は5月に家具など2千億ドル(約21兆円)分の中国製品の追加関税を10%から25%に上げ、8月初めには制裁関税「第4弾」の発動方針を表明した。追加関税が輸出の足を引っぱる。
生産以外も振るわなかった。百貨店やスーパー、電子商取引(EC)などの売上高を合計した社会消費品小売総額は8月に前年同月比7.5%増えた。伸び率は7月から小幅鈍化した。統計の信頼性が高い中堅以上の小売店の伸びはわずか2%だった。自動車が同8%減ったほか、宝飾品も前年割れだった。
マンションや工場の建設など固定資産投資は1~8月に前年同期比5.5%増えた。伸び率は1~7月より0.2ポイント鈍った。政府はインフラ建設にあてる地方債の発行を急ぎ、インフラ投資は同4.2%増と1~7月から0.4ポイント加速した。
一方で製造業の投資は1~8月に2.6%増と伸びが同0.7ポイント縮小した。輸出低迷で設備投資をためらう企業が増えた。みずほ総合研究所の三浦祐介主任研究員は「生産だけでなく設備投資も減速しており、製造業の悪化に歯止めがかかっていない」と指摘する。
中国人民銀行(中央銀行)は16日、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」を今年1月以来8カ月ぶりに下げた。景気下支えを強める狙いだが、効果は見通せない。18年4月に始まった今回の金融緩和局面で、人民銀はすでに計5回、4ポイントも準備率を下げたが、中長期の設備資金の貸し出しはむしろ減っている。

190919日経
世界のプラント業界で中国企業が存在感を高めている。米建設調査会社エンジニアリング・ニューズ・レコード(ENR)がまとめた2018年の海外売上高が大きかったプラント企業世界250社では、中国勢の売上高が全体の4分の1を占めた。10年前から右肩上がりで増え続け、この間3倍近く増えた。特にアフリカやアジア市場で伸びた。一方、日本企業は2割減少しており、日本のインフラ輸出は厳しい状況に置かれている。

ENRのデータはそれぞれの国・地域以外の海外市場での売上高を集計したもの。例えば、中国企業が一大市場である自国を除いた海外でどの程度受注に成功しているかを測ることができる。
ENRによると、世界のトップ250社全体の18年の海外売上高は4869億ドル(約52兆円)だった。うち中国勢は76社で売上高は1189億ドルと、全体の24.4%のシェアを握る。08年段階では中国勢は50社で金額が3分の1程度、シェアも11%しかなかった。

中国は広域経済構想「一帯一路」の下で発展途上国の経済支援を進めている。シェアをみると特にアフリカで6割と高く、アジアでも4割を占める。分野別では、交通や発電設備、工場でそれぞれ中国企業が売上高のトップを占めている。
実際、アジアの鉄道インフラ輸出を巡っては中国企業が受注に競り勝つケースが目立つ。例えばマレーシア東岸の鉄道を巡っては19年4月に中国とマレーシア政府が工事再開で合意。中国側が5000億円以上の費用圧縮を受け入れ、建設は国有の中国交通建設が担う。同社は18年に227億ドルを海外で売り上げ、ENRの統計でも中国企業で最上位となる3位だった。
伸びる中国勢に対し日本勢は苦しんでいる。売上高上位50社には、日揮や千代田化工建設の専業プラント会社に加えてゼネコン(総合建設)の大林組と鹿島の4社しかない。上位250社でみても11社の売上高は196億ドルで、全体に占める割合は4%。10年前は6.3%だった。

日本勢は苦戦(日揮や千代田化工のロシア・北極圏LNGプラント)=JSCヤマルLNG提供
一方、欧州勢は踏ん張っている。08年に9位だった欧州エンジニアリング大手のテクニップFMCは、液化天然ガス(LNG)プラント建設で受注を獲得。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが事業主体で、18年に生産を始めたオーストラリア沖にある大型洋上LNGプラントの建設も手掛け、18年も11位と上位を維持する。
特に首位のスペイン建設大手、ACSは11年に独ホッホティーフの出資比率を50%強に引き上げ、経営権を取得するなどM&A(合併・買収)で規模を拡大。価格競争力を生かして世界規模で交通やビル建設などで受注を獲得してきた。
規模で伸び悩む日本のプラント会社が強みとするのは石油や石油化学製品、LNGプラント。日揮や千代田化工は10年前から同分野でトップ10前後に入っている。ただ17年にはこの分野で初めて中国勢がトップ10入りしており、安泰とは言えない状況だ。
18年、日本のあるプラント会社の技術者は、中国企業が建設した「石化コンプレックス」を見て驚いた。石化コンプレックスは石油精製や石油化学製品向け製造設備で、建設に通常4年かかるが、2年で完成させたからだ。「もはや技術力は差別化の要因にならない」とこの技術者は話す。日揮や千代田化工を含め世界で4~5社程度しか建設能力がないとされるLNG分野にも中国のプラント会社が参入する可能性がある。
中国企業は国内に大きな需要があり、コスト削減や建設ノウハウを蓄積しやすい。加えてプラント輸出国に巨額の融資をし受注を伸ばすケースもある。中国の融資で重い債務を抱えたケニアの鉄道案件を巡り「借金漬け」との批判も起きた。あるプラント関係者は「中国は豊富な資金力を背景に採算度外視で応札する場合もある」と話す。
千代田化工などは米国でのLNGプラントの完成が遅れ、大きな損失を出した。強みを生かしながらいかに事業を多角化し、収益性を高められるか。規模で太刀打ちできない分、異業種との連携など一層の工夫が必要になる。

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