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TSMC創業者が警告する、半導体サプライチェーンの危機とアメリカの戦略〜中国の脅威と世界的な競争激化の中、台湾のTSMCが果たす役割とは? (再掲)

TSMCの創業者モリス・チャン氏の言葉は、かつてはTSMC社が成功しているからこそ、注目されてきた。しかし中国からの脅威が日増しに大きくなる今日、氏の言葉が、まるで神の啓示のように、台湾のマスコミに伝わる光景だった。

2023年3月16日、台北で行われた天下雑誌主催の講演会で、「The Chip War」の著者ChrisMiller氏とTSMC創業者のモリス・チャン氏による対談が行われた。
次期台湾総裁候補者の一人、民進党の賴清德氏やTSMCの現CEO C C.Wei氏も会場に足を運ぶ。たった一冊のアメリカの研究書物がここまで注目されるその理由は何だろうか。
そこには今後の半導体業界の情勢を占うヒントが盛り込まれている。


アメリカとその他の国の半導体サプライチェーンが二極化する可能性


対談では、アメリカの半導体産業政策について語られた。張氏によれば、半導体のサプライチェーンは「アメリカ」と「その他の国々」に二極化していく。「米国の半導体企業の方針は、中国製のチップの開発を遅らせることであり、それに対しては支持する」(同氏)「製造技術の点で中国は台湾に少なくとも5〜6年遅れをとっている」と考えを述べた。

一方で張氏は、米国の高官らが台湾を「半導体友好国」のリストに入れてないことに疑念を呈した。。

また米国での半導体の「自給自足」の可能性について、ChrisMiller氏は「自身は歴史家である」と断った上で、「自分の知る限り、自国生産は難しく、多額の資金を費やしてサプライチェーンを構築しても、その技術を手に入れることができるかどうかはわからない」との見解を述べた。

インテルの米国でのファウンドリー事業についての見解

インテルの米国でのファウンドリー事業について問われると、Miller氏は「企業がファブを立ち上げるのは容易ではなく、コストもかかり、技術が向上しないこともある」との見解を述べた。
 
一方、モリス氏はNVIDIAのCEOジェイソン・ファンの言葉を引用した。
ダンスフロアでTSMCには400人のパートナーがいるが、インテルは一人で踊っている

今後もTSMCの行方に刮目すべき

TSMCは、地政学的な役割への期待やファウンドリー市場の激しい競争という課題に直面しながらも、現在も半導体産業における優位性を維持し続けている。

同社の存在感は今後も増し、世界中の半導体産業において重要な役割を果たすことが予想される。台湾のマスコミだけでなく、国内外のメディアや専門家、政治家など、幅広い視点からTSMC社のビジネスモデルやイノベーションを見ていくことが、今日の台湾の地政学問題を考える上で重要だろう。

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