新しい生活
「東京タワー 見るまで死ねないよ」
4月、新しい生活が始まった。社会人となり、人から「先生」と言われるようになった。忙しく日が過ぎ去る。
余裕が無い。
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わたしのモットー、というか わたしらしさ が消えてしまいそうだった。素敵なものを 素敵 と、笑顔を 嬉しい 楽しい と感じることを忘れかけていた。慣れない生活、慣れない環境、新しい人や場所、もの。目を通すだけで日が沈み、また日が昇る。わたしは必死に追いかけて手を伸ばすけれど届かない。かすれた気がしても、音がしない。
泣きたい日々が続いている。
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堪えきれず毎日のように誰かに縋った。メッセージ、電話、会いにも行った。すべての人が、優しく声をかけてくれる。穏やかに聞いてくれる。助言をくれる。
頑張ろうとし過ぎたのかもしれない。
つい先日まで学生だったわたしが、お金をもらって社会に出て働いている。労働という対価を支払って、生活を手に入れる。社会のしくみ、人とのつながり、学び。自分で選んだ道を少なからず歩み進めている。楽しいことも多いけれど、辛いことも多い。
会いたい人に会えない。本当は顔を見て、存在を感じたいのに。文字や声で影を感じながら、わたしは画面の前で身振り手振りをする。訴えかける。
「頑張ってるね」
「偉いね」
「大丈夫だよ」
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どれだけ救われただろう。わたしはいつでも誰かに救われ続けていたことを思い出した。辛いこと苦しいことばかりに目を向けていたわたしは、みんなより何歩も後ろにいる。
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悔しい、負けたくない。
頑張りすぎてしまう自分が嫌になることも多い。プライドが高い、傲慢だ とも言われた。少しは、弱いわたしでもいいのかもしれない。「分からない」と言える素直さに何度も憧れて練習した。今がその成果を発揮するべき時ではないか。
わたしを取り巻くすべてのものを大切にしたい。だけど、わたし を大切にすることも忘れたくない。助け、助けられ、共に生きるということを心に留める。
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わたしらしさ を忘れない わたし でいようね。
あなた らしい あなた でいられますように。
大切にしたいものに、ていねいに触れる。
瞼を閉じても、開けても、忘れないでいよう。
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