小説のはなし1-二度死んだ少年の記録-

今回はある短編についてお話ししていきたいと思います。
それが筒井康隆さんの『二度死んだ少年の記録』
これは先日機会があって、読書会をして得た意見を元にしています。

私はこの物語を中学生くらいの頃に読んで、かなりグロテスクな描写に衝撃を受けました。ちなみに、『鍵』という短編集で読みました。
先生、生徒が逃げ回る様子が本当に滑稽でコミカルで、ホラーなのに笑ってしまいます。笑

物語の内容は、家族からも見放され、友達、先生からも煙たがられていた男子生徒が、学校の屋上から飛び降り、しかし、落ちた衝撃で身体はボロボロでも歩き回って、最終的に女子生徒の股の間で生き絶える…というなんとも想像しただけで背筋がゾッとするようなお話。

かなり短い短編で読みやすかった記憶があります。
この話の語り手は筒井康隆本人という設定です。筒井さんが自殺した少年の事件を聞き込みする、という流れの中で、物語が展開されます。


その中で気になる点がいくつか。
少年が屋上から飛び降りる時、それを目撃したグラウンドにいた生徒たちが、“全員”目が合った、と証言したことです。でも、人は目が二つしかありませんから、当然そんなことはないはずです。


小説には、死ぬ間際の人の目は視野が広くなる、と書いてありましたが、これはおそらく「罪悪感」なのかなと思いました。
生徒は全員、彼をいじめていました。見ないふりした生徒も、いると思いますが。だから、彼の自殺理由が「自分のせいだ」とみんながそれぞれ思っていたから、彼と目が合ったように感じたのではないかな、と考えています。
実際、この「罪悪感」はこの小説の大きな特色で、先生方もこの自殺の事件についてなかなか語ろうとしません。だから学校ぐるみでそのことを隠そうと思っていたのでしょう。

そして二つ目、彼のいじめの原因が「腋臭」だということ。
確かに臭いというのはいじめの原因になるとは思いますが、どうして筒井さんはこの臭いをいじめの原因として書こうと思ったんでしょうか?

ここら辺は微妙なんですが、彼はもうその時すでに死んでいた、ということなんでしょうか。死んだ人って腐敗臭がしますよね。それに彼は生きていても、まるで「死んでいるような」人生を送っていたのだと思います。だからこのタイトル「二度死んだ少年の記録」というのは、少年の生きている時はもうすでに死んでいて、飛び降りたとしても身体は生きていた。そして、最後に残り火が消えるように、2度目の死を迎えた、ということのように感じました。

そして気づかれた方もいると思いますが、これ最後死んだ時に、「女の子の股の間」で死んでいます。ここって赤ちゃんが生まれる時の場所ですよね。つまりこれは誕生の物語でもあるのかも?


まあ、こういうのはここまでにしておいて、本当にゾッとするような小説なので、ひんやりしたい方は、ぜひ読んでみてください。

今日はこの辺で。
読んでいただきありがとうございました。

また明日更新します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?