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不変

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり

沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理を表す

おごれる人も久しからず
ただ春の夜の夢のごとし

早速、引用したくせ、平家物語の知らないはずの情景がばちこん思い浮かんじゃう冒頭を大裏切りするけれど、わたしには不変的なものがある。不変的ってより、変えようがないものかな。きっと、あれが春じゃなくて、夏の夜の夢だったから。なんて言ったらロマンチックじゃない?まあ、そんなことはないんだけど。否定の接続言葉ばっかりね、性格が出てる。

今日は、4年前くらい前に見た、夢たちの話です。先に言うけど、長い。もう、すんごい長い(わたし調べ)

さあ、書くぞ〜!

当時、大学の近くに下宿していた。おんぼろなアパート、一階、角部屋。ワンルームじゃなくて、1Kの家賃の割に広い部屋だった。要らないって言ったら、母さんに怒られて仕方がなく買ったベッドはまだ仕事をしてた頃、夢を見ました。

今となっちゃ引くけど、前半はほぼイングリッシュ。多分舞台は語学学校だったんだと思う。大きな窓から陽がよく入る幅の広い階段を、学校長らしき女性と話しながら降りていた。内容はこれからの話に関係ないから割愛するとして。踊り場から、またさらに段を降りる。会話は続いている。けれど、最後の一段を降りかけた時、何かが変わったと直感した。夢じゃよくある展開ですね。その何かは建物と自分が着ていた衣服だった。気づけば、晴れ着でした。年明けに成人式を控えていたからか、兎に角、綺麗な、晴れ着を着ていました。あらま、と声には出さずに顔を上げると、張り紙。左向きの矢印だけがプリントされたそれに従って、そちらに体を向けると、ホールの入り口のようなものが二つあって、両開きのドアから中がよく見えた。家族がいました。両親と、祖母と、弟が、ホールにはいて、声をかけようと思って、遮られた。隣には、祖父がいました。遮ったのは彼です。

物静かで、いつも笑点をへっへって笑いながら見ていた祖父は、その頃、末期の癌で自宅療養をしていた。元々の平均ほどの身長に、程よく肉付いていた体は、治療を始めてあっという間に痩せ細った。ああ、弱った身内は本当に、心にくる。せめて笑っていたいのに涙出てくるんすよね、嫌になっちゃう。

夢の中の祖父は、元気な頃の姿でした。しゃんと伸びた、真っ直ぐな背中と、ちょっぴり低いしゃがれた声がなんとも言えず、格好いい。じいちゃんって笑うわたしに言うんですよ、その声で。

じいちゃんの葬式、出てよ。って。

すーぐ、起きました。もう本当、速攻で起床しました。そんで、一人の部屋でわんわん泣いて、その日の昼前、学校に行く道すがら、祖父に電話をしました。また、会いに行くから待っててねって電波越しに伝えて、その後、初めて手紙を書きました。以前に撮った数枚と祖父母の写真を一枚、それから、おばあちゃんには内緒だよ、の言葉を添えて、送りました。柄じゃないなんて言ってられなかった。

それから、前撮りの日を早め、九月の終わり頃に、晴れ着姿を見せに、祖父母の家を訪ねました。撮る前に母が運転する車に飛び乗って、一時間足らずで辿り着いて、祖父がいる部屋に向かった。少し、話して、一緒に写真を撮ったんです。彼は横たわったままだったけど、照れた顔で写ってくれた。また泣きそうになったけれど、そんな顔したくないし、お化粧崩れちゃうからって必死に堪えたのを覚えてる。

その後、祖父が起きなくなったことを、一ヶ月経った学祭の打ち上げで母から電話で知りました。泣けなかったって、そりゃあ。飲み会の途中抜け出して電話に出たんだし、なるだけ空気読んで生きてきたし。週明けに学校に書類提出して、お通夜、葬式に参列した。学校やバイト先の友達には、休む理由を言えなかった。何でかは分からないけれど、言えなかったんだよなぁ。

やっと、このことを人に話したのは、また夢を見たからでした。

前撮りをしたあの日、実はこっそり撮っていた動画には祖父の声しか残っていませんでした。けれど、お通夜の日と同じ状況、母と再生したその動画には、笑う祖父がいた。きっと、こっそりじゃなくて、ちゃんと撮っていたら良かったという後悔が、その夢を見させたんだと思います。起きた時、今度は泣かなかった。そして、吹っ切れたみたいに仲のいい友達に祖父のことを話せました。これだから、夢って不思議よね。

そうそう、不思議といえば、わたしが夢を見ていたのと同じ頃、夜、祖母が飼っている犬が吠えているのを叱る祖父の声を聞いたらしい。幻聴だ、嘘だと思ったけれど、その声を境に犬がピタリと吠えるのをやめたから、本当におじいちゃんだったかもね。

これまでもこの先も、声に出しては言えないけど、好きだよじいちゃん。これは不変。公開告白だ!恥ずかしいね!

長々とした雑なお話、聞いてくださってありがとう。今日はどんな夢を見るかな、ね、ハム太郎。ヘケェッ!

それじゃあ、おやすみ

フォトバイ わたし

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