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愛しい台詞に包まれた妙々たる会話劇『宝飾時計』

台詞たちが愛しい。

あらすじ
主人公のゆりか(高畑充希)は子役から女優として活躍しているが、驚くほど業界に染まれていない。30歳を迎え、同級生たちが次々と結婚し子供を産んでいく中、「私は何のためにこんなことをやっているのだろう」と自分の存在の意味を見つけられずにいた。そんな彼女の心を日々支えているのはマネージャーの大小路(成田凌)。ある日現場で、当時一緒にトリプルキャストとして主演を務めていた真理恵(小池栄子)と杏香(伊藤万理華)と再会する。自分の人生を肯定したい3人は、他者を否定することでなんとか自分を保っていた。その会話は21年前も今も変わらない。過去と現在を行き来しながらゆりかは自分の人生を振り返り、孤独に押しつぶされそうになる。日々増える無力感の中、ゆりかは自分の人生の肯定の仕方を考え始め・・・。

『宝飾時計』公式HPより引用



時計を想起させるような円盤舞台で、過去と現在を入り混ぜながら物語は進む。

この作品は、とにかくテンポの良いリズミカルな会話劇。

回転式のシンプルな舞台が、飛び交う台詞たちのテンポの良さをさらに際立たせる。こんなにもシンプルなのに、全く飽きが来ないのも、製作陣と役者さんの力なのだなと、感心させられる。

黒子さんではなく、役者さん自身が小道具を持ってきたりセットを移動させたりする斬新な演出にも驚かされた。

主人公のゆりかも、マネージャーの大小路も、同業だった真理恵も杏香もそのマネージャーも過保護な親も、そして失踪した勇大も。

登場人物それぞれの人間臭さを直に感じられる作品。

まさに”感情をぶつける”という表現が、しっくりくるシーンが数多くあり、胸がキュッと苦しくなったり考えさせられたり共感したり。

そんな瞬間でも、ついクスッと声を漏らしてしまうような、コミカルなシーンが多く取り入れられていたり。


「1番好きなショートケーキを、正直に「好き」と言えない感覚。」


根本さんが描く本には

「そう、その感覚!分かる!」

と、はっと息を呑む、刺さる言葉が多い。

確かにその感情はあるのに、わざわざ考えないし言語化もしない。思考や話題のトピックにも上がらないような、感情の数々。

図星を突かれるという感覚に近い。


SNSにて、当日券情報を発見し、開場1時間前から並べるとのことなので早めに行ってやる!と意気込み1時間半前に行ったら長蛇の列。とりあえず並んでみたけれど、アナウンスにてこの列のあたりの人は買えないかもとのこと。

ならば、明日とんでもなく早い時間に行ってやる!と再度意気込み、手作りのおにぎりをこさえて朝の9時に到着。私が最近はまっているのは、喉黒塩で握るおむすび。出汁が効いていて、普通の塩で握るおにぎりとは一味違ったおむすびを楽しめるのでおすすめ。好みの海苔は有明産。

食べかけ大変失礼します


おむすびはおむすびでも、中身や味付けを変えるだけで多種多様に楽しめるおむすび。シンプルな食べ物だからこそ、工夫が際立つ。そして、何度だって食べたくなる。

薄めの文庫本を2冊読み終わる頃には、無事に最前列端のパイプ席をゲット。舞台の構造や演出上、前の方にも役者さんたちが歩いて喋ってくれたので、皆さんの息遣いまで聞こえてきてこちらも大変興奮しました……。


高畑さんから根本さんへのリクエストで実現した『宝飾時計』



ファッションデザイナーの神田恵介さんが初めての演劇衣装を手がけ、劇中歌「青春の続き」を椎名林檎さんが書き下ろし。

全てがゼロからできた『宝飾時計』は、個人的にも私得な作品。


この作品を観劇してからそろそろ約1年が経つけれど、あの台詞たちが恋しい。好きな台詞に蛍光ペンを引いたら、ほぼ真っ黄色になってしまうほど、あの言葉たちが好きだ。


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