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『兎、波を走る』を観るために「私、池袋を歩く」

一言で言うと

「難しかった」

この作品を自分なりにどう受け止めよう。どう感じよう。

そう思わせる作品だった。

あらすじ
舞台は“つぶれかかった遊園地”。迷子になった娘を捜す母親の妄想が、遊園地でリハーサル中の“不思議の国のアリス”のショーと交錯していく。“世界的な劇作家”の末裔たちも絡んで、物語は展開していく。母は“兎”と出会い、娘の行方を求めて“兎”を追いかけるが……。

NODA・MAP「兎、波を走る」作・演出 野田秀樹 WOWWOWホームページより引用


チケットが取れず、お得意の当日券チャレンジ。

今回は朝マックに寄り、それでも9時頃に着いたが前には10人ほどいたので「マックに行っている場合ではなかった……?」と思ったが、やはり朝マックは美味しい。マフィンにかぶりついたときのクワッとした食感と、お肉のジュワっとした感じとチーズのペロンという感じとしょっぱい味。マフィンの粉が唇にまとわりつくところまでが、朝マックだ。

体に悪いとか太るとかの定評はあるが、食べずに我慢するより定期的に摂取したほうが、私に取っては健康に良いのだ。良いのだ。

並んでいる間にお手洗いに行きたくなったらどうしようと心底不安であったが、実際に11時頃にどうしてもお手洗いに行きたくなり、隣のマダムに相談。

「全然行ってきてください〜!わたし何回も行ってるんで!」

と優しいお返事。

何回も立っているようには感じなかったので優しさかもしれない……。野田さんの舞台を観にくる人に悪い人はいないのだと思いながらありがたく立ち上がり、ストレッチをしつつ足早にお手洗いへ。

知らない人のちょっとした優しさに触れただけで、気分はものすごく良くなるのだから、優しさの効力はすごい。私も常日頃からぼーっとせず、愛想良くしたいと噛み締める。


兎の逃げ回る姿と追いかける松たか子さんにうっとり


兎は波を渡って「うつつの国」からアリスを連れ、自分の故郷である「もうそうするしかない国」に帰っていく。不条理の波を超えて。

緩急のついた、高橋一生さん演じる兎が、松たか子さん演じるアリスの母から逃げ回るシーンには釘付けになってしまった。

兎という現実味のない役ながら、躍動感に溢れていて、主役としての存在感をありありと放っていた。


アリスが迷い込んでしまった(=連れ去られてしまった)「もうそうするしかない国」

ステージナタリー NODA・MAP 第26回公演「兎、波を走る」より引用



『不思議の国のアリス』の世界観をベースとした衣装や舞台装置、そしてストーリー展開。

その中で、作中に多く使われていた映像や、中身がAIのVtuberがメインとなるシーンは、異質でもあったが、問題を見て見ぬ振りする”異常さ”が浮き彫りになっているようで、居心地の悪さのようなものを感じてしまう。野田さんの演出のテクニカルな部分だなと脱帽。

さらに「拉致問題」「仮想現実(メタバース)・AIが人間の尊厳を脅かす可能性」「デモ運動」など、現代でも問題として捉えられていながら、解決していないこと、意見しづらい事柄をテーマにしていることからも、野田さんの強い覚悟を感じる。

現実と虚構という曖昧な境界線を描きながら、物語を通して”不条理”を訴える本作品。

さすが野田さんの脚本。言葉遊びや台詞の繰り返しが多用されながらも、ストーリー展開もしっかりしており、全体的にスピード感のある作品だった。


なんとなく平和に生活してしまっている私たちが、決して忘れてはいけない問題を遠慮なく痛烈に描くラスト。

ステージナタリー NODA・MAP 第26回公演「兎、波を走る」より引用

野田さんの「『兎、波を走る』は、他者の人生を預かっている作品なので、今回はことさらに、ちゃんと届けなくてはという思いが強くありました。」という発言。作品に責任を持って向き合い、言わんとすることを届けようとする姿勢にも思わず瞠目してしまう。


松たか子さんの

「ドキッとした!」

が今も頭から離れないのである。

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