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本屋大賞2023での私の投票まとめ

2023年の本屋大賞が4/12に発表された。
ご存じの通りで、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)が選ばれた。
本屋大賞の発表式にも4年ぶりに参加できた。

本屋大賞の詳細については、「本の雑誌増刊 本屋大賞2023」にまとめられているのでぜひチェックして欲しい。昔からずっと言っているが、この誌面全てが真の本屋大賞なのである。たった一人しか投票していない作品でも、そこに載った熱いコメントを読むことが本屋大賞なのだから。

さて、この記事では、今年の本屋大賞における私の「一次投票」「二次投票」の投票作品とコメントを公開しておきたい。
一次投票、二次投票にも3作品ずつ投票する決まりで、二次投票はノミネート作品全てにコメントを付けることになっているが、投票した作品以外へのコメントはやや簡略化したので、ここでは3作品のみにする。

【一次投票】

1位 『生者のポエトリー』岩井 圭也 集英社

コメント : 初めて読んだ時にも感動したが、読み返せば読み返すほど素晴らしさが増してくる作品。思わぬ形で披露される市井の人物の「詩」が、ほかの誰かに影響を与え、さらに新たな「詩」に広がっていく。やがて「詩」が多くの人々の心を揺り動かして大きなうねりとなっていく。それが凡作であろうとも、「詩」を発表せずにはおれない気持ちがにじみ出てくるし、武骨な「詩」でも、誰かの心に響いていくのだ。今まで経験したことのない読書体験であった。
(このコメントは誌面に掲載された)

2位 『空をこえて七星のかなた』加納 朋子 集英社

コメント : こんなにも読後感が爽やかで、幸せな気持ちになるミステリがあっただろうか。みんなを応援したくなるし、自分も頑張ろう、と思わせてくれる。加納朋子さんが得意とする連作短編集だが、これが、これこそが加納朋子さんの最高傑作だと信じている。

3位 『その本は』ヨシタケシンスケ、又吉直樹 ポプラ社

コメント : 王様が求める面白い「本」を探す旅に出た二人の男の物語。これを本屋大賞として投票していいのか迷ったが、特に又吉さんのパートは間違いなく小説だし、ヨシタケさんのイラストも「物語」である。なによりも、本書を通じて、「本」というものの素晴らしさ、「物語を綴る」イマジネーションの素晴らしさを教えてくれる。落語の「サゲ」のようなラストも最高で、読んでいる間はとにかく楽しかったので、今回票を投じた。

【二次投票(3位まで)】

1位 『汝、星のごとく』凪良 ゆう 講談社

コメント : この小説については、なにをどう書いていいか、いまだに分からない。
櫂と暁海、二人の男女がお互いに思いながらも、くっついたり離れたりを繰り返していく恋愛小説。いや、こんな陳腐な表現はしてはいけない気がする。でも一言で言うとこうなってしまう。
二人の周囲にいる人物たちそれぞれに感情移入もし、それぞれの人生を想ってしまう。特に北原先生! 尚人!
読みながら、自分の人生を振り返り、過去の恋愛経験を思い出してしまう。もちろん、こんなに波乱万丈ではなかったけれども。
『流浪の月』という高い高いハードルと軽々と超えてきた、凪良ゆうさんの新たな代表作になったと確信している。

2位 『君のクイズ』小川 哲 朝日新聞出版

コメント : 直木賞と山田風太郎賞をダブル受賞した超大作『地図と拳』を発表した同じ年に、コンパクトな分量でありながら、エンタメの楽しさを凝縮したような小説『君のクイズ』を発表する小川哲さんの作風の幅広さが素晴らしい。「なぜ一文字も読まれないクイズに正答できたのか?」という、たったひとつの謎を突き詰めていきながら、クイズプレイヤーの思考力を事細かに書いていく、実に堂々とした「競技クイズ小説」である。重い小説ではないし、きっと涙は流れない。が、面白い小説を読んだ満足感が絶対に残ることを保証するぞ。

3位 『#真相をお話しします』結城 真一郎 新潮社

コメント : 現代的な題材を扱いながら、どれも大きなサプライズに溢れた短編集で、結城真一郎さんの実力が多くの人に伝わった作品だと思う。どれも、作中に漂う「違和感」の正体が判明した瞬間に大きな驚きが待ち受ける。何が起きているのか=「ホワットダニット」系のミステリだ。今後の活躍が楽しみで仕方がない。

翻訳部門、発掘本にも投票したが、投票内容メールが来ていなくて(恐らく)、残念ながら転載できない。

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