Doll 2号 no.5
no.1(1話目)はこちら
https://note.com/mmm12o2/n/n106685e6726a
—— 透明な夢 ——
よく見る夢があった。
レナはキッチンに寝ころび、ママに手を握ってもらっている。
ママは「大丈夫よ。目が覚めれば新しい世界よ」と微笑み、レナもママに微笑みで答えた。
そこにあるママの宝石みたいな目には、わずか10㎝の距離からも目が開いているのか判別できないレナの顔があった。
レナが最後にもう一度だけとママの中の自分の顔を覗き込もうとすると、そこに手術着を着たパパが登場した。
パパはゴム手袋を“パチンッ”と鳴らし、
入念にナイフの切れ味を確認していた。
その真剣そうなパパの顔は、全く知らない初めましてのパパの顔だった。
けど、レムにはそれがパパだと分かった。
気が付くとさっきまで隣に居たはずのママがパパの隣に居た。
パパはまだ何もしていないのに額に汗し、ママはそれを拭っていた。
その助手をするママの顔も、さっきまでとは別人の初めましての顔だった。
けど、レムにはそれがママだと分かった。
レムが安心し眠りの中で眠りに落ちかけると……、
二人は目と目を合わせ、息も合わせ頷くと、パチパチと音を立てるオーブンに手を掛けた。
中から出てきたのは焼き立てほやほやの顔。
2人はそれを思いっきりレナに投げつけた。
くるくると勢いよく回転するレナの新しい顔。
新しい顔は火花を散らし、古い顔を蹴散らし、レナの上部かろうじてのった。
放物線を描き吹き飛ばされる既に中身のないぬけがらとなったレナの古い顔が、確か視界に端に転がったのを捉えたはずだが、新しい顔がしっかりとなじみその行く先を確認するとなぜ無くなっていた。
そしてそれがどんな顔だったか?
記憶も一緒に吹き飛んでいた。
新しい顔のパパ。
新しい顔のママ。
新しい顔のレナ。
初めましてだけど懐かしく
私たち家族は温かい食卓を囲む。
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