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自己流、今の自分が求める香りの選び方

 先日、春先から行っている自宅の断捨離ついでに、自分が今現在香水ボトルを何本持っているのか、思い切って数えてみた。「思い切って」と書いたのは、冗談抜きで自分のボトル所持数をはっきりと知るのが怖かったからだ。ここ数年、香りと出会ってときめいたら購入するという買い方をしてきて、家の中にはボトルが点在している。長年香り好きをやってきたが、過去最高数になっていることは明白であった。それが何にしても、一生で到底使い切れるはずもない量の何かを所持していることは、自分にとっては、そこはかとなく負担を感じることだということに、この度気付いた。

 で、香水の断捨離予定は今のところ無いが、自分が何本持っているのか、想像でぞわっとしているよりは、思い切って正確な数を把握しておいた方が良いと決意し、数えてみたところ、128本あった。これは、サンプルやミニボトル、フラコンボトルは抜かした数だ。

 この数を知れば、香水に特に興味の無い人は驚くだろうが、香水コレクターの方々からすれば、拍子抜けする数だろう。自分自身、100本を超えたところで「あぁ…やっぱり…」とため息が出たが、150本に満たないことを知り、今度は安堵のため息が出た。

 しかし、128本という量は、特に物の管理に長けているわけでも記憶力が優れているわけでもない人間には、やはり多い。最近どうも、毎日どの香りと1日を共にするか決めるのに時間がかかるなと思っていたが、それは選択肢が多いからだということにようやく気がついた。

 それで、ボトル数を数えたついでに、今の自分が求めている香りを選抜して、洗面所の一角に置くことにした。
 「今の自分が求める香り」とは、シグネチャーフレグランスとか、自分を表現する香りとかではなく、今の自分が必要としている香りだ。128本の香水は、どれも買った時には「これは好きな香り!」とか「面白い香りだな」とか「癒される〜」とか、何らかのときめきを感じて手に入れたものだが、香りというものはセンシティブなもので、いついかなる時も購入時と同じときめきを与えてくれることは、まず無い。あんなに気に入って買ったはずなのに、「あれ、今日の香り方は、どうもいまいち…?」なんていうことはざらにある。香りそれぞれに旬の季節とかシチュエーションとかがあるし、季節やシチュエーションに合っていても、今の自分の気分には合っていないということもある。
 今の自分が求める香りを10本位選抜し、すぐに手に取れる場所に置いておけば、その中から1日を共にする香りを選べる。そう思って、ある休日に、選抜会を催した。

 自己流の選抜の仕方を、ここに記しておく。自分が持っている香水を、ランダムに書き並べる。それから、順番に上から2つずつ嗅ぎ比べて、ピンときた方は残して、そうでなかった方は鉛筆で線を引いて消去する。これをひたすら繰り返し、ベスト8を選出する。

 嗅ぎ比べの際、最初のうちは紙に香りを噴きつけていたが、そんなことをしていると部屋がものすごいことになるし、面倒なので、途中からはスプレー口から直接香りを嗅いだ。

 2つずつ嗅ぎ比べてピンとくる方を選ぶ時に気をつけたことは、「今、自分の鼻が喜ぶ方を直感で選ぶ」ということだ。余計な先入観や思考を極力入れないように心がけた。例えば、「自分のそもそもの好みはこっちだから」とか、「この香りは今の季節には合わないから選ばない方がいいだろう」とか、「これはお世話になっている方からお勧めしてもらった香りだから残したい」とか、「SNSでよく名前を見かける人気の香りだから」とかいった雑念をなるべく入れないようにした。

 そして、「自分の鼻が喜ぶ」とはどういうことかというと、自分の場合の体感だが、香りが鼻を突き抜けて脳に響いてくる感覚だ。香りが脳に語りかけてくるというか、何というか。そして、そのような香りが脳に響き渡ると、自分の内面は、リラックスしつつ興奮しているような状態になる。なので、「鼻が喜ぶ」というのは、要は心が喜んでいる状態なのだろう。

 そういったトーナメントを行ったが、これは決して選んだ香りの方が選ばれなかった香りより優れているとか、選ばれなかった香りのことはもはや好きではないとか、そういう話ではない。あくまでも、「今の自分の心に響くかどうか」の話だ。そして、自分の状態というのは、刻々と変化しているものなので、また別の折にやれば、全く違ったベスト8が選出されるだろう。

 時間がかかるので、そうしょっちゅうできることではないが、この度選んだベスト8に違和感が出てきたり、使い切ったりした時には、またトーナメントを開催しようと思っている。

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