オリックス・吉田正尚、NPB5人目の「盗塁ゼロの首位打者」、2年連続の「最少三振の首位打者」

オリックス・バファローズの吉田正尚が2年連続でバットマンとして栄誉を手にした。

パ・リーグの2021年シーズンの首位打者は2年連続で吉田正尚が獲得した。
打率.339は2位の森友哉の.309から3分も引き離した断トツの首位打者であった。

さらに、パ・リーグで2年連続首位打者は、2002年・2003年の小笠原道大(日本ハム)以来の快挙である。

しかも、吉田正尚は今シーズンの盗塁数がゼロだったため、NPB史上5人目、パ・リーグでは2人目となる「盗塁数ゼロでの首位打者」となった。

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過去の達成者は、2001年の福浦和也(ロッテ)、2012年の阿部慎之助(巨人)、2017年の宮崎敏郎(DeNA)、2020年の佐野恵太(DeNA)である。

福浦和也は、2018年に通算2000安打を達成、2019年オフに現役引退したが、通算2235試合に出場して盗塁数はわずか10(盗塁失敗は17)と、2000安打達成者の中でも最も少ない。
阿部慎之助も通算2282試合で2132安打を放っているが、通算盗塁数はわずか13(盗塁失敗は16)しかない。

宮崎敏郎に至ってはプロ1年目の2013年以来、今季まで835試合に出場しているが、盗塁を企図したことがないため、2017年の首位打者獲得は、史上初、「通算盗塁数ゼロの首位打者」ということになる。

佐野恵太は2017年にプロ生活をスタートさせているが、2018年に初盗塁を記録して以来、2020年に盗塁を企図したが失敗に終わっており、通算1盗塁・盗塁失敗1である。

吉田正尚は昨年2020年にフル出場して打率.350で首位打者を獲得したシーズンでは、8盗塁(盗塁失敗5)をマークしており、プロ1年目の2016年以来、通算643試合の出場で17盗塁を決めているため、決して盗塁をしない選手というわけではなかった。
吉田は132安打のうち、内野安打も17本、放っており、「盗塁ゼロの首位打者」の中では最も内野安打率が高く、今季のパ・リーグで5位、また、併殺打9本はリーグ18番目と、極端に足が遅いというわけでもない。
だが、今季は盗塁企図が1度もなかった。



吉田正尚、2年連続リーグ最少三振で首位打者、イチローを凌ぐ低い三振率

また、吉田は三振が少ない打者として知られるが、初の首位打者を獲得した昨季は492打席で29三振で三振率は5.89%。


吉田は今季も455打席で三振はわずか26個で三振率5.71%。三振数、三振率ともに両リーグで規定打席に達した打者の中で、2年連続で最小である。

今季、パ・リーグで吉田の次に少ないのは、鈴木大地(ロッテ)の51個(628打席)で三振率8.1%、セ・リーグで今季、三振が最も少ない青木宣親(ヤクルト)が500打席で43個、三振率8.6%(10月31日現在)であるため、いかに少ないかが分かる。

イチローは1994年から7年連続で首位打者を獲得しているが、23歳でむかえた1997年のシーズンに打率.345で4年連続首位打者を獲った際、三振は607打席で36個、三振率は5.93%であった。
翌1998年は打率.358で、558打席で三振は35個、三振率は6.27%。
すなわち、吉田正尚は全盛期のイチローを凌ぐほど、三振をしないということがわかる。

シーズン打率3割超え、30三振未満、かつ20本塁打以上というのは、イチローも達成したことがなく、1977年の若松勉(ヤクルト)が打率.358、20本塁打、14三振を記録して以来、吉田が44年ぶりとなる。

4年連続の出塁率4割超え、初の最高出塁率

吉田正尚は選球眼もよく、プロ2年目の2017年から4年連続で出塁率4割超をマークしており、今季は出塁率.429で自身初の「最高出塁率」のタイトルも手にした。

吉田は昨季、26三振、72四球であったため、同一シーズンで「四球70個以上」と「三振30個以下」という条件を満たした首位打者は、1960年・1963年の長嶋茂雄(巨人)と1974年の張本勲(日本ハム)に次いで3人目であった。
今季はケガによる途中離脱があり、3年連続の全試合出場でストップし、連続試合出場も512でストップ、今季は110試合に留まったため、四球は58個だが、四球率はリーグ7位。申告敬遠の数も、トップの柳田悠岐(ソフトバンク)の8個に次ぎ、6個あった。

長打率、OPSもリーグトップ

吉田は本塁打はリーグ6位の21本ながら、同僚の本塁打王、杉本裕太郎の.552(32本塁打)を抑えて、リーグトップの長打率.563をマークしている。
当然、OPS(=出塁率+長打率).992も、リーグ2位・杉本の.931を引き離してトップである。

首位打者というのは従来、俊足巧打の選手というイメージがあったが、必ずしも俊足である必要はないことがわかる。

しかも、近年は打球方向を重視した守備シフトを敷くチームも増えていることから、安打を稼ぐためには、広角に打てること、さらに打率を稼ぐためには、選球眼がよいことが、これまで以上に大事な要素になろう。

オリックスは今季、1996年以来となるリーグ優勝を果たしたが、1995年・1996年のリーグ優勝、そして1996年の日本一を牽引したのは、イチローだった。

吉田正尚は同じ青山学院大学の先輩である杉本裕太郎と共に今季のオリックスの快進撃を支えてきたが、9月3日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で内野安打を放った際に左太もも裏の筋損傷で翌々日に登録抹消、そこから3週間ほどで復帰したもの、今度は10月2日のソフトバンク戦(京セラドーム)で右手首付近に死球を受け、右尺骨骨折と診断されて戦線を離脱、シーズン終了まで戻れなかった。

イチローのように、三振が少なく高打率、だが、四球は多く盗塁数は少ない。イチローとは似て非なるタイプの首位打者・吉田正尚がケガから復活して、25年ぶりの日本一を目指す。

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