『青の炎』ブックレビュー
高校生である秀一は、突然やってきた母親の元夫、曽根の傍若無人な振る舞いが許せず、母や妹の身を守るためにも殺人を計画するのだが...
というお話。
(Kindle Unlimitedでも配信中)
どうしようもないクズや話の通じない相手というのはいるものなので、それに対して怒ったり憎んだりするだけなら悪ではない。というのは私の持論なのだけど、
その怒りが増大して「あいつはクズだから罰するべきだ」という思考に偏ってしまうと、自滅することになるんだよなあ...
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『死んだ方がいい人間は、確実に、この世に存在する。そんな人間を抹殺したとしても、非難されるいわれはない。むしろ、世間の人にとって有害なゴミを一掃したということで、賞賛されてしかるべきではないか。』
(本編より)
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初めてこの本を読んだのは高校生のとき。
“賞賛される”うんぬんはともかくとして、
『死んだ方がいい人間は、確実にこの世に存在する』という部分にはまったく同意だったし、
それで秀一が罰を受けなければならないのは納得いかない、かわいそう、とも感じていた。
の、だけれども。
今は、
(なんつー傲慢さだ...)という感想しかない。
秀一に同意した、過去の自分含めて。
そんなわけで物語前半では曽根に対する秀一の憎悪がもうものすごいんだけど、「こんな人間なんか死んだ方が世の中のためだ」なんて描写に嫌気がさして読むのつまらなかったんだよね...
だけど、じゃあ曽根を許せない秀一が悪いのかっていうと、そういうことでもないわけで。
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...............というか、
この感想を書くにあたって読み返してみると
(あれ...やっぱりこれは、ブチギレ確定案件なのでは.....傲慢だとか、そういう話ではないのでは...)という気持ちになってきた....曽根、正真正銘のクソやん....
でも最後の最後に足を踏み外してしまったのは、秀一の方なんだな....そして後戻りができなくなるという...
考えれば考えるほど悲しい主人公だ...
そもそもめちゃくちゃ怒ってるのだって、母親や妹が怯えたり傷つけられたりするのが許せなかったからだし、
そういえば紀子(クラスメイト)とおせっせするときだってちゃんと「好きだ」ってはっきり言ってたし優しかったし(そこかよ)(いやそこは大事だよ)
.......あれ?秀一めっちゃいい子じゃね?
家族や好きな人をちゃんと大事にできる人だったのに、なんでこんなことになってんの....
だめだなんかむっちゃ悲しくなってきた。
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「それで、その、怒るなっていうのが、お祖父さんの遺言なわけだ」
「遺言っていうか、何度も、そう言われてたから。瞋(いか)りだけは、どんなことがあっても、心に抱いちゃいけないって」
「そんなこと........できるわけないだろ?どうやって、全然、怒りを感じないで、世の中渡って行くんだよ?」
「全然感じないのは、無理かもしれないけど。でも、抑えることはできると思う」
「それも、無理な話だって。だいたい、そんなんじゃ、悪いヤツらに、いいようにされるだけだぜ?」
「それでもいいよ」
大門は、笑顔を見せた。
「自分の瞋りで自滅するよりは、ずっとましな人生だって思ってるから」
秀一は、大門の言葉に胸を衝かれた。今度は、体育館からデテイク大門を見送ることしかできなかった。
(本編より)
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やるせないなあ……怒りという激情のままに行動した秀一が、どのように堕ちていくのかを、いろんな人に見届けてほしい。
あと、早いとこ映画版もみなきゃだな…。
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