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〇円生活1日目にして仕事ゲット、友だちも100人出来る勢い。【0円生活1日目】

"Monday."
(退屈そうに。死んだ魚の目をして)

モモコは、日付を英数字で書くか漢数字で書くか決めかねていた。「十一月二十八日」に埋め込まれた二つの十字架が目を引く。もうすぐ十二月。

(ラジオ体操イタリア語版がスマートフォンから流れる)
〇円生活1日目。モモコが朝一番にしたことはラジオ体操だった。体操が終わったら、今日の予定を立てた。とても、とてもモモコは忙しい。
今日の予定は、〇円生活中の食を確保すること。

(モモコ、持ってきたノートパソコンの前に座る)
モモコはパソコンを開き、noteを書いた。〇円生活をもう一度することについて。noteを書くのは久々で、本文のゴシック体を懐かしむ。目で撫でる。愛でる。パソコンに向かっているといきなり引き戸がガラガラと開いて眉毛が立派なおばあちゃんが顔を出した。ちょくちょくこの家に野菜を売りに来るらしい。トラックに積まれたいろいろな種類の野菜を見せてくれた。どうりで眉毛が立派なわけだ、このおばあちゃんは育てるのが上手いんだ。モモコは合点した。〇円生活の話をしたら、
「そりゃあんた、ご飯食べさせてくれるようなとこで働かないかんなあ」
そうだった、今日は食事がゲットできる仕事先を見つけるんだった。モモコはおばあちゃんの言葉で、自分の多忙さを思い出した。

(モモコ、一旦家へ帰る)
(数分後、緑のジャケットを着て家の前に現れる)

昼頃、モモコはまちへ出た。Bridge To(以下、家)のすぐ目の前を白川という川が流れていて、橋が架かっている。道を挟んで向かいには広々とした公園があり、朝からずっと白髪のおじちゃんが落ち葉掃除をしていた。白川沿いに南北を行くと住宅が並んでいて、のんびりとした景色。少し川から離れて東の方に行くと哲学の道にぶつかり、コロナとところてん方式に入ってきた観光客たちがたくさん歩いていた。
モモコは、「アルバイト募集」の張り紙を探していた。もしくは「スタッフ募集」。あるいは「STAFF募集」。なにもなくても良かった。一軒、カフェのような小さなお店に働かせてもらえるか聞いたが、まるめがねのおじいさんに断られてしまった。観光客向けのお店は数多あれど、アルバイトを探していそうなお店は全然なかった。豆せんべい屋さんの試食のおせんべいをツマんで、今度はモモコは白川の西の方へ行った。

(モモコ、白川通りに出る)
モモコの前方に、「おにぎり」の幟が揺れているのが見えた。ふと目を上げると「カナダハイツ」というビルの前をモモコは歩いていた。心臓が音を立てる、これは行ける気がする。カナダは、いつだって吉兆である。モモコはカナダハイツの隣のおべんと屋さんに入り、アルバイトを申し出た。

(おべんと屋さんの二階にて)
モモコは迎え入れられたおべんと屋さんの二階で、社長さんに〇円生活の説明をした。社長さんは、「若いうちにやりたいことやっといたほうがいいからね」と、すぐに受け入れてくれた。明日の朝、また面接担当の方に会いに来ることになった。
階段を降りる前に「ありがとうございます、よろしくお願いします」というと、「うんうん、若いうちだからね、やりたいことするなら」と言って見送ってくれた。

(暗転)

(家の前の公園にて)

明後日からの仕事が決まって、その上美味しそうなおにぎりやお弁当が報酬にもらえることになって、モモコは帰り道、スキップをした。本当はしなかった。
家の前の公園で、朝の白髪のおじちゃんがまだ落ち葉の掃き掃除をしていた。掃除を手伝うとおじちゃんは「ああ助かった助かった」と何度も何度も嬉しそうに言ってくれた。モモコはそれを聞いて嬉しかった。

夜、まだご飯を手に入れてないモモコに家主のマリコさん+ジャスパーが鍋の残りを差し入れてくれた。銭湯2軒回って働かせてもらえるか聞いたけど断られてしまって、モモコはへとへとだった。鍋は温かくて素晴らしくおいしかった。
明日は、おべんと屋さんで面接だ。ふんばるぞ。


明後日から働かせてもらえることになった白川通のおべんと屋さん『まんぷくおにぎり米都』


こういうこともしてみる。奥にいるのが、おじちゃん。


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