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0円生活者がバレンタインデーの夜、出会い系アプリを始めた話、そしてその後日談。

「0円生活始めたら、彼氏にフラれた」

そんなことがあったら、と何度か考えていた。お金を使わないで生活するということは、洗濯のタイミングが他人にばれるくらい少ないバリエーションの服で生活するということ、基本的にノーメイク(これは0円生活の前からだけど)、友だちに遊ぼうと誘われてもカフェやUSJに行けるはずもなく、だいたい公園。お金を使っていた時に付き合い始めたとして、いきなり彼女がそうなったら、果たして相手は付き合い続けてくれるのだろうか??

しかし付き合っている人はいない。そうだ、いないなら作ればいい。西村組で培われたDIY精神を引っ張り出してきて、バレンタインデーの凍えるような寒い夜、人肌求めて出会い系アプリに登録した。以下は、その2ヶ月間に及ぶ記録である。

使ったアプリは2つ。アメリカ発祥の”Bumble”と日本でよく使われている”with”。実験として、”Bumble”のプロフィールには0円生活をしていることや自分が出会い系をしている理由を書き、”with”には普通の女の子風のプロフィールを書いてみた。

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実験期間中、メッセージのやり取りをした人は全部で45人、電話・ビデオ電話をしたのは2人、実際に会ったのは6人、その後のアンケートに答えてくれたのは5人。(アンケートの内容はコチラ)アンケートの回答の中で印象的だったものを一部紹介しておこうと思う。

1. 私または0円デートプロジェクトに興味を持ってくれた理由はなんですか?

・面白いことをしている友だちを作りたかったから

・僕はももさんと、プロジェクトどちらにも興味を持ちました。自分もいつか資本主義から離れられる生活がしてみたかったから。

2. お金を使わないデートと、お金を使うデートは、違いがありましたか?

・不自然に感じられる時があったけど、いい経験にはなった。

・不便に感じるときは何度かあった。(中略)付き合っていたらデートにお金を使う必要もあると思う。お金を使ってデートすることで相手のことをもっと知るきっかけになると思う。

3. お金を使わないデートの後、どのような感想を持ちましたか?その後もデートを続けられると思いましたか?

・楽しかった。できると思う。

・お金を使うデートと使わないデートには大きな違いはないと思う。

・もし2人の関係が高価なプレゼントやお金のかかるデートによって成り立っているなら、付き合い続けるのは難しいだろうと思う。

4. 人間関係(恋人、友人、家族など)において、お金は必要だと思いますか?なぜそう考えますか?

・今日の社会ではお金は必要。それが世の中のしくみだから。

・必要ない社会が理想だけど、現実問題必要。愛情はお金無しでも存在し得るけど、前例がないし、無人島とかにいかないと難しそう。デートや肉体関係等の愛情表現はお金無しでも出来るけど、子供を持ったりとか、病気した時とかシンプルに日常生活をお金無しで今の世の中を生き抜くのは厳しい。

・なにか予想外のことが人生に起きた時、お金は必要。お金は未来への保険のようなものだと思う。

5. 最後にご意見ご感想、言い残したこと言っておきたいこと、あればよろしくお願いします。

・桜を見たり、山に登ったり、すごく楽しいデートだった、出会えてよかったと思う。

・この実験の問題点は、お互い相手が好きじゃなかったことだと思う。


今の時代、出会い系アプリで友だちを作ったり恋愛をしたり結婚相手に出会ったりするのは日常茶飯事かもしれない。でも友情恋愛の云々を抜いても、知らない人に出会って0円生活のことを話してお金についてや価値観について聴けたのは、大きな意味があった。

ただ、お金と人間関係(とくに恋愛)がどんなふうに影響しあっているのかは一言では表しにくい。デートした人の中の一人で、お金について人生について語り合い、「初対面の人とこんなに深い話をするなんて、普通にアプリで会った人とはなかなかないかも」と言った人がいたけど、それが0円デートだからそうなったのか、もともとお互いの興味が似通っていたからなのかは分からない。夕食を奢ってくれた人もいた。その人は「君の話が面白いから、君と食事がしたいんだ」と言ってくれた。経験にお金を払うことに抵抗のない人もいる。(このときは相手の年齢が上だったこともあって、マイルドなパパ活感が否めなかった)それとか、銭湯の番頭さんにこのことを話すと「昔は男がデート代をもって当然、それで彼女の愛が手に入るなら」と、寅さん顔負けの昭和ロマンを説いてくれた。

また、実際に合わなかった人たちもたくさんいる。「君がお金を出さなきゃいいなら、デート代全部僕が持つからやらせてくれるってこと?」と、デートと肉体的な関係を交換する提案を出す人や、楽しく会話していたのに性的なことをするつもりがないと言うといきなり音信不通になる人。もちろんそんな人もいるだろうなと思っていたが、いざそういう話を持ちかけられると、なぜ自分は家賃のための肉体労働は惜しまずできるのにセックスは拒否するのだろう、実は感情こそがどんな良い交換条件でも渡せないものなんじゃないか、と考えたりもした。

他にももっともっと、話したいことはあるのだけど、(出会い系アプリの在り方について、恋愛について、家族や友人といったその他の人との関係におけるお金について)とりあえずこの辺で。

個人的には、3時間くらいテクテクテクテク北野坂を歩き回った挙句、疲れ果ててお互い黙りこくってしまい、信号を待ちながら「これはお金があるとかないとかそういうことじゃない気がする」といったデート相手の一人の言葉がぐさっときた。

そう、人でもコトでもモノでも、好きじゃないと始まらないみたいだ。

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